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ちくま新書

日本思想史新論

——プラグマティズムからナショナリズムへ

『TPP亡国論』で話題の 気鋭の論客が 日本の思想史を書き換える!

日本には秘められた実学の系譜があった。『TPP亡国論』で話題の著者が、伊藤仁斎、荻生徂徠、会沢正志斎、福沢諭吉の思想に、日本の危機を克服する戦略を探る。

山本七平賞奨励賞

定価

902

(10%税込)
ISBN

978-4-480-06654-1

Cコード

0210

整理番号

946

2012/02/06

判型

新書判

ページ数

240

解説

内容紹介

幕末の危機に際して、優れた国家戦略を構想した会沢正志斎。尊王攘夷を唱えつつ、抜本的な内政改革を訴えた彼の『新論』はけっして無謀な排外主義ではなかった。むしろそのプラグマティックで健全なナショナリズムに学ぶべきところは大きい。正志斎の思想の秘められたルーツを伊藤仁斎、荻生徂徠の古学に探り、やがてその実学の精神が福沢諭吉の戦略思想に引き継がれていることを解明。隠された思想の系譜を掘り起こし、現代日本人が求めてやまない国家戦略の封印を解き放つ。

目次

第1章 消された系譜―古学・実学・水戸学(開国イデオロギーの呪縛
開国までの歴史 ほか)
第2章 伊藤仁斎の生の哲学(尊王攘夷論の導火線
解釈学 ほか)
第3章 荻生徂徠の保守思想(徹底したプラグマティスト
方法論 ほか)
第4章 会沢正志斎の自由主義(古学が生んだ戦略家
古学と水戸学 ほか)
第5章 福沢諭吉の尊王攘夷(実学を重んじたナショナリスト
福沢諭吉の国体論 ほか)

著作者プロフィール

中野剛志

( なかの・たけし )

1971年生まれ。京都大学大学院工学研究科准教授。専門は経済ナショナリズム。東京大学教養学部卒業。エディンバラ大学より博士号取得(社会科学)。経済産業省産業構造課課長補佐を経て現職。イギリス民族学会Nations and Nationalism Prize受賞。著書に『TPP亡国論』(集英社新書)、『国力とは何か』(講談社現代新書)、『国力諭』(以文社)、『自由貿易の罠』(青土社)などがある。

この本への感想

「日本とは何なのだろう」
この数年抱いていた問題意識に深く響く一冊だった。

私は日本思想は全く門外漢なので、朱子学や実学、尊皇攘夷などの思想の系譜に触れることができて、非常に参考になった。

岩倉使節団の『米欧回覧実記』に、東洋(日本)と西洋の違いについて
①東洋人は具体的な体験に優れており、西洋人は技術的な理論に秀でている。
②東洋人は農耕に基礎を置き、朱子学の思想から権利意識を抑制しようとするが(これが君子権の重要性につながると思われる)、西洋はローマ時代から交易を重視し、権利意識や利益を中心に考える。
などの考察がされており、維新後、日本は西洋の価値観を取り入れ、富国強兵、戦争への道に進んでいく。

西洋の価値観が行き詰まりを見せている今、中野氏が提示する問題設定、本書に綴られた維新前の日本の価値観を見直すことは大変意義のあることだと思う。
自立・飛躍が共同体に基盤をおいてこそであれば、中野氏が試みるナショナリズムの健全化は重要である。
また、モデル上の論理では説明がつかない事象が蔓延する中、理論的に説明しても幼稚にしかならないが、知恵・技術・熟練に裏打ちされた実学が存在感を増していくのかもしれない。

中野氏の他の著作も、自分の持っていた疑問を解明してくれたことはもちろん、分かりやすく興味深い内容であった。中野氏の挑戦は素晴らしいと思う。
日本の病に、中野ワクチンの効果が炸裂することを祈っている。

KSJG

さん
update: 2012/03/09

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