松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.09.01)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.8.30)

『夏から夏へ』と「追悼・赤塚不二夫特集」


<今週の松田チョイス>
◎佐藤多佳子『夏から夏へ』(集英社)



谷原 まず今日は、松田さんもイチオシという、一冊の話題の本から紹介します。北京オリンピックで悲願のメダルを獲得したあの選手たちの珠玉のノンフィクションです!
N 北京オリンピック陸上男子、4×100リレー決勝。オリンピックにおいて、トラック競技で男子のメダルは未だかつてない。ついに悲願のメダル獲得。この日本代表リレー・チームを追いかけている作家がいた。小説『一瞬の風になれ』で本屋大賞を受賞した佐藤多佳子さん。自身初のノンフィクション『夏から夏へ』。個人ではメダルに届かなかった4人のランナーが力をあわせてリレーで世界に挑む。去年夏の大阪世界陸上から、今年夏の北京へ。研究と努力を重ね、4人が心を一つにしていく舞台裏が克明に描かれる。>
松田 これは、北京オリンピックの感動シーンが鮮やかに残っている間に、是非読んでほしい作品です。本当に歴史的な偉業を成し遂げた塚原、末續、高平、朝原という4人のアスリートの姿が活き活きと立ち上がってくるんです。あの日の感動が何倍にもふくらんで感じられる、そういう作品なんですね。
谷原 結果は知っているじゃないですか、ぼくたち、銅メダルという。その裏側にはすごいストーリーが隠されていると思うんですよね。
松田 4人は当然ですけども、周辺のコーチとか控えの選手とかに、ていねいな取材をしているんですね。だから、4人の個性が一人一人わかりますし、それに4人の信頼関係がなければできないレースですし、それから、バトンミスがこわい競技ですから、バトンパスの練習をものすごくやるんですね。実は、日本の選手は一人一人はそれほど速くないのに、なんであれだけ速く走れるかというと、その辺に秘密がある。
谷原 技術が。
松田 技術があるんですね。だから、佐藤さんが4人と一緒に北京オリンピックに向かって走ったという感じの、すごく爽快感のある素晴らしい作品なんですよね。
谷原 そう、いまのうちに読まないとね。
優香 『一瞬の風になれ』の時も、佐藤さん、本当に空気感が伝わってくるんです。風が吹いている感じが。だから、今回楽しみですね。
松田 そうですね、4人のメンバーも、佐藤さんの『一瞬の風になれ』を読んでいるんで、だから、佐藤さんならということで、ほかの人には語らないことを語ってくれたりするんですね。本当に、今読むべき本だと思いますね。


<追悼・赤塚不二夫特集>
◎赤塚不二夫『天才バカボン』(竹書房文庫)ほか
◎赤塚不二夫『おそ松くん』(竹書房文庫)ほか

ギャグ漫画の巨匠・赤塚不二夫さんが今月2日、亡くなりました。『天才バカボン』、『おそ松くん』、『ひみつのアッコちゃん』などのギャグ漫画の大傑作を生み出した漫画家・赤塚不二夫とは一体どんな人物だったのでしょうか。手塚治虫に影響を受けた新人時代、藤子不二雄、石ノ森章太郎などと切磋琢磨したトキワ荘時代、そして大ヒット作を連発させ、漫画界に止まらず、その多才振りを発揮した晩年まで、赤塚さんの作品や交友関係を通して、その漫画家人生を振り返ります。トキワ荘時代を知っている鈴木伸一さんが、赤塚さんの人と作品について語ってくれました。
谷原 ぼくなんか、TVアニメで見ている世代なんですが、その前に原作で読んでいる世代なんですね、松田さんなんかは。
松田 そうですね。毎週、週刊誌二誌に強烈な連載が載っているという時代で、毎週毎週驚かされるんですよね。さっきも(VTRで)少女漫画のようなのがあったけど、全編セリフが漢字だけの回があったり、一つもセリフのない回があったり、ものすごく前衛的なんですよ。それまでの漫画をぶちこわしていく、アナーキーなんですけども、陽気で楽しいんですよ。それがたまらなく面白くて。たぶん、タモリさんなんかは赤塚さんがいなければ誕生していなかったですし、お笑いにしても、映画にしても、アートにしても、いろんなものにものすごく大きい影響を与えている人なんですね。
谷原 いろんな素晴らしい作品を生み、そして、いろんな人も発掘した……。
松田 本当に偉大な人だと思いますね。
谷原 これでいいのだ!

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.08.23)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.8.23)

『おそろし』と「特集・山本文緒『アカペラ』」


<総合ランキング> (有隣堂書店全店調べ・8/10~8/16)
① Jamais Jamais『A型自分の説明書』(文芸社)
② Jamais Jamais『B型自分の説明書』(文芸社)
③ J.K.ローリング『ハリーポッターと死の秘宝』(静山社)
④ Jamais Jamais『AB型自分の説明書』(文芸社)
⑤ 上地雄輔『上地雄輔物語』(ワニブックス)
⑥ 有川浩『別冊図書館戦争Ⅱ』(アスキー・メディアワークス)
⑦ 姜尚中『悩む力』(集英社)
⑧ つるの剛士『つるっつるの脳みそ』(ランダムハウス講談社)
⑨ 編集工房桃庵『おつまみ横丁』(池田書店)
⑩ 宮部みゆき『おそろし』(角川書店)


<特集・山本文緒『アカペラ』>
◎山本文緒『アカペラ』(新潮社)



『プラナリア』で直木賞を受賞、再婚し、すべてを手に入れたかに思えた時、重度の抑鬱状態に陥った山本文緒さん。望んだ再婚生活なのに、心と身体がついてゆけず、家族、友人、仕事のはざまで苦しみ抜いた日々。そこから再生を果たし、6年ぶりに新作が発売されました。病弱な弟と暮す50歳独身の姉。20年ぶりに実家に帰省したダメ男。じっちゃんと二人で生きる健気な中学生。人生がキラキラしないように、明日に期待し過ぎないように、静かにそーっと生きている彼らの人生を描き、温かな気持ちと深い共感を呼び起こす感動の物語。新作『アカペラ』の思い出の地である三浦半島でインタビュー。病気になる前後で、小説に対する思い、書き方などがどう変わったのかなどについて伺いました。


谷原 松田さん。6年ぶりの新作ということで、『アカペラ』どんな印象でした。
松田 そうですね。山本さんというのは、もともと小説の名手なんですけども、今度の作品を読んでいて、登場人物の人間描写とか物語とか、ひときわ彫りが深くなったような気がするんですね。やっぱり、ああいう経験が生きてきていると思います。癖のある、だけど愛すべき人物たちの演じるドラマから目が離せないですし、読み終わった後に、ホッコリと温かいものが残るという素敵な作品集なんです。これからもいい作品を読ませていただきたいなと思いますね。


<今週の松田チョイス>
◎宮部みゆき『おそろし』(角川書店)



松田 時代小説、ホラー、ファンタジー、宮部みゆきワールド全開の最新作『おそろし』です。
N 宮部みゆきさん待望の最新時代小説『おそろし』。ある事件を境に、他人に心を閉ざした17歳のおちかは、神田三島町に叔父夫婦に預けられた。そこへ訪ねてくる人びとが語る不思議な怪談の数々によって、おちかの心のわだかまりが少しずつ溶けていく。生きながら心を閉ざす者、心を残し命を落とした者。そして、心の闇に巣くう人外のもの。それは、長い長い「百物語」の始まりだった。>
松田 まず、主人公の「おちか」のたたずまいが素敵なんですね。彼女は、自分の身近に起こった悲惨な事件をきっかけにして心を閉ざしてしまって、それを、叔父さんが、何か心を開くきっかけになるんじゃないかっていうんで、人びとの怪談話を聞くように、怪談セラピーみたいなことを始めるんですね。人びとの血生臭い話を聞いていくうちに、犯罪だったら犯罪に関わる被害者も加害者も、みんな心に闇を抱えているんだということに気がつくんです。それで、「おちか」は自分の「弱さ」を「強さ」にかえて、心の隙間に忍び込んでくる邪悪なものに対して、毅然と戦いを挑んでいくんですね。その姿は素敵ですし、美しいし、「おちか」がかっこよく見えてくるんですよね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですけども、その「百物語」をしてくる人たちのなかに、「おたかさん」という人がいるんですね。その「おたかさん」は家族である家に住んだら百両あげるよ、という言葉にのせられて行くんですよ。で、「おたかさん」が身の上話をしていって、「でも、その家に住んで、何にもなかったのよ、百両貰って。とってもよかったの。あら、おちかさん、あなたもそこの家に似合うわよ、一緒に行かない」って誘うんですね。ところが、おたかが語っていたことは全部嘘で、本当は、おたかじゃなくて、一緒に住んでいる清太郎というのが来るはずだったんです。何か用事があって来れない隙に、おたかが抜け出して、勝手に語りに来ていたんですよ。で、清太郎はおたかを連れ去り、実は、どんなことがあったかというと、そこに住んで、1年経って、全員亡くなってしまっていて、最後生き残っていたのはおたか一人で、彼女はもう天涯孤独の身で、生ける屍になってしまった、というんです。そこを読んだときに、ぼくはゾクッとして……。おちかさんのたたずまいが素敵だって、松田さんがおっしゃったんですが、これは静かな心の冒険活劇だなと思いましたね。本当に面白いです。是非読んでいただきたいです。宮部みゆきさんファンに関わらず、ぜひ、ぜひ読んで下さい。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.08.17)

『風花』と「特集・2008年上半期BOOKムーブメント総まとめ」

<特集・2008年上半期BOOKムーブメント総まとめ>


*文学界に続々シンデレラ誕生!
★川上未映子『乳と卵』(文藝春秋)



・第138回芥川賞作家。(インタビューVTRあり)


★小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)



・ブランチ絶賛本。(インタビューVTRあり)


★和田竜『のぼうの城』(小学館)



・ブランチ絶賛本。(インタビューVTRあり)


*ビジネス本の二大ヒットメーカー!
★勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)
  『お金は銀行に預けるな』(光文社)ほか
・(インタビューVTRあり)
★水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
・上半期ベストセラー第1位 。(インタビューVTRあり)


*超簡単!3ステップレシピ本ブーム
★西健一郎『日本のおかず』(幻冬舎)
★編集工房桃庵『おつまみ横丁』(池田書店)


*驚異のリバイバル「蟹工船」大ヒット!
★小林多喜二『蟹工船』(新潮文庫)


*タレントの赤裸々自伝本がバカ売れ!
★田村裕(麒麟)『ホームレス中学生』(ワニブックス)

・222万部突破。コミック&ドラマ&映画化もされました。
★大島美幸『ブスの瞳が恋されて』(マガジンハウス)
・8万部突破
★上地雄輔『上地雄輔物語』(ワニブックス)
・初のフォト&エッセイ集。発売3日で28万部突破!(インタビューVTRあり)


谷原 松田さん、タレント本は本当に盛り上がりましたが、上半期、文芸書のメガヒットというのがなかったじゃないですか。
松田 そうですね。ただ、そのかわり、次々と魅力的な作品を書く新人作家が登場したんで、これからメガヒットになる作品を書いてくれるんじゃないかと期待したいですね。


<今週の松田チョイス>
松田 ぼくが上半期に読んで一番面白かった本を取り上げてみました。
◎川上弘美『風花』(集英社)



N ある日突然、匿名の電話で夫の不倫を知らされた主人公のゆり。「自分はいったいどうしたらいいのか」。途方に暮れ、そしてのゆりは夫婦の意味、自分の人生を問い直し始める。女性心理をきめ細かい筆致で描いた恋愛小説の傑作。「登場する夫婦を通して、川上さんが伝えたかったこと」、そんな質問への答えは?
川上 たぶんね、小説書いてて、伝えたいことって、私はないかもしれない。私が書いた通りのそのものを、「ああ、そうですか」って受け取って、その通りのものっていうことじゃなくて、一行があったら、その一行で自分のことを考えたり、今までのことを思い出したり、それで全然違うことを考えたり。とにかく、読んでいただいて、読んだ方が何かを感じてくだされば嬉しい。>
谷原 本当に、いまでも覚えていますよ、この本。二人、優香ちゃんとぼくで読んで、意見がそれぞれ違ってたじゃないですか。
優香 読む人によって、全然違っていて。特別大きいことがあるわけじゃないんだけれど、日常がすごくリアルなんですよね。女性目線が上手だなあというのを覚えています。
松田 そうですね。読む人によって、というのは、何となく、ぼくなんかもそうなんですけども、トリコにされるというか、いつの間にか主人公の気持ちになっているみたいな。やはり、川上さん独自の日本語の力だと思いますね。すごく、しなやかで、柔らかい、本当にきれいな日本語なんですよね。その言葉に乗せられて、いつの間にか女性の気持ちになって体験をしていく。だから、ものすごく苦しいこともあるし、楽しいこともあるっていう。で、それをズーッと体験していると、あっ、人間って不思議な動物、生き物だなあって、人間のことをすごく考えさせられる、単なる恋愛小説というレベルを超えた小説だなあっていう気がしますね。
谷原 あらためて、女性は本当にこわいです。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.08.03)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.8.2)

『ひゃくはち』と「特集・話題の芥川賞&直木賞作家」


<特集・話題の芥川賞&直木賞作家>


<芥川賞> 楊逸『時が滲む朝』(文藝春秋)



『時が滲む朝』で中国人として初めて芥川賞を受賞した楊逸(ヤン・イー)さん。日本語を全く話せなかった楊さんが大学生の時、何を思いたって日本に来たのか。そして、なぜ日本語で小説を書くようになったのかに迫ります。お話を伺うのは中華街。楊さんは大学生の時、日本に来たいと思ったキッカケが、実は、中華街でお店を経営する叔父からの一通の手紙に挟まれていた一枚の写真。そこに、叔父の家族が裕福そうに、そしてアカ抜けた姿で写っていたのに衝撃を受けたのだそうです。楊さんの半生をインタビューで明らかにするとともに、楊さんの感じる日本人と中国人、日本語と中国語の違いについて語っていただきました。


<直木賞> 井上荒野『切羽へ』(新潮社)



夫以外の男に惹かれることはないと思っていた。彼が島にやってくるまでは……。静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれてゆくセイ。やがて二人は、これ以上は進めない場所へと向かってゆく。「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所。宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密な筆で描ききった哀感あふれる恋愛小説。今回、荒野さんのよく通うという喫茶店でインタビュー。愛人に入り浸り、家に帰ってこなかったという、作家であるお父さんのこと、1作目から13年間のスランプ、そして、受賞作を書くことになったきっかけなどを伺いました。


谷原 対照的なお二人でしたが、作品の方はどうなんですか。
松田 そうですね、作品も対極的ですね。楊さんは、骨太のドラマチックな物語の底に哀しみが滲み出ているような作品です。井上さんの方は、本当に「何も起こらない」小説なんです。でも、その下に激しい感情のうねりのようなものが描かれています。どちらも、人間の強さとか弱さ、喜びとか哀しみを本当に見事にとらえている作家さんだと思いますね。これからも期待したいですね。


<今週の松田チョイス>
◎早見和真『ひゃくはち』(集英社)



松田 野球小説としても、青春小説としても新しい1ページを刻んだ傑作、早見和真さんの『ひゃくはち』という作品です。
N 甲子園行きてぇ、でも遊びてぇ。レギュラー入りを目指してあの手この手、でも女の子にも興味津々。「ひゃくはち」=108とはボールの縫い目と煩悩の数を表しています。主人公は強豪校の補欠部員。煩悩を全開にして夢にすがり、破れ、大事なものに気付いていく高校球児の姿が描かれます。8月9日には映画も公開。>
松田 主人公たちは、甲子園という夢に向かってまっしぐらに突き進んでいく球児たちなんですね。特に主人公は、「補欠」なので、懸命に努力を重ねていくんですけども、監督との関係とか、チームメイトとのつきあいとか、試合での駆け引きとか、野球をめぐるドラマは手に汗を握るし、とっても面白いんですよ。ただ、それだけでは終わらない、「純粋無垢」な高校球児だけでは終わらないところが、この小説のミソなんですけども。そこから、家族や友情をめぐる新しいドラマがからんでくるんです。若い新人作家のデビュー作なんですが、すごく読ませる力がある傑作だなと思いましたね。
優香 わたしも読みました。野球青春小説って、もっと熱いのかなって思ったんですけども、そういう「甲子園に行きたい」という思いを表に出さずに、心の中でふつふつと「行きたい」っていうのは今っぽいのかな、新しいなって思いました。それから父親との関係がとても素敵で、「もっと頑張りなさい」「こうしなさい」という感じじゃなく、ちょっとひいた感じで応援しているお父さん……。
松田 いいお父さんですよね。
優香 お父さんからもらう手紙が素敵で。
松田 それが支えになるんですよね。
谷原 映画も面白いです。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.07.27)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.7.26)

『もやしもん』と「特集・『上地雄輔物語』」


<BOOKニュース>
◎小林武史+AP BANG!『環境と欲望』(ポプラ社)



今年3月、小林武史の呼びかけによって集まったクリエイターやアーティストたちによって催されたイベント「AP BANG! 東京環境会議 TOKYO CREATORS MEETING」。ここから、昨今の環境問題のキーワードが見えてくる1冊の本が生まれました。SHIHO、茂木健一郎ほかのインタビュー、井上陽水と小泉今日子の対談などを収録しています。


<特集・初フォト&エッセイ『上地雄輔物語』>
◎上地雄輔『上地雄輔物語』(ワニブックス)



「ホントに俺が書きましたっ!」と強調するかのように、執筆のみならず、企画、構成、デザイン案まで手がけたという自信作。なんと、15日に締め切られた予約だけで6万部突破! 発売前からベストセラー間違いなしといわれる本書は、やんちゃだった少年時代、松坂選手(現レッドソックス)らとともに野球に明け暮れた青春時代、そしてブレイクした現在までを綴ったエッセイ。それに、故郷・横須賀をはじめ、思い出の地を巡るオール撮り下ろし写真を収録しました。このフォト&エッセイ集の発売直前、多忙きわめる上地さんへの独占インタビューにブランチだけが成功しました。少年時代のこと、青春をかけた野球のこと、偉大なる後輩・松坂のこと、本には書かなかった恋愛観などを伺いました。さらには、本に込めた熱い思いについても、惜しむことなく語った素顔満載のインタビューをお送りしました。


<今週の松田チョイス>
◎石川雅之『もやしもん』1~6(講談社)



松田 かなり風変わりだけど面白いコミック、石川雅之さんの『もやしもん』です。
 今年、二つの漫画賞(第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第32回講談社漫画賞・一般部門)を受賞したことで話題が高まっているコミック、石川雅之『もやしもん』。「かもすぞー」。キャラクター化された菌たちが空中を飛び交い、しゃべる、世にも奇妙な菌漫画。タイトルの「もやし」とは酒造りなどに使う種麹のこと。主人公は「某農業大学」に入学した沢木惣右衛門直保。もやし屋の跡取りである彼は、菌が見え、さらに会話までできるという特殊能力をもっていた。直保は風変わりな教授やくせのある仲間たちと出会い、さまざまな騒動に巻き込まれていく。>
松田 これは、農業大学を舞台にした、ある種の学園ドラマ、青春ドラマなんです。いろんな奇妙な行事があったり、変な酒屋の謎を追求したり、そうかと思うと、突然、ブルゴーニュに飛んで、ワインのことを研究したりとか、不思議な話なんです。実は、読んでいくと、本当の主役は何かということがわかって来るんですね。菌やウィルスなんですね。発酵菌とか乳酸菌とかばい菌とか、そういう菌たちが発酵とか腐敗のメカニズムを説明してくれるんですね。すごく可愛いキャラクターなんですよ。最初は、「なんだか説明の多い漫画だな」と思うのですが、それが、だんだん楽しみになってきて、実は、この世の中っていうものは、フラフラしている人間たちが支えているんじゃなくて、しっかり働いている菌たちが支えているんだっていうことがよくわかるっていう面白い漫画です。
谷原 はい。世界は菌に満ちている。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.07.19)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.7.19)

『聖域』と「特集・茂木健一郎『脳を活かす勉強法』」


<BOOKニュース>
15日、第139回芥川賞・直木賞が決定しました。芥川賞は楊逸(ヤン・イー)さんの『時が滲む朝』、直木賞は井上荒野さんの『切羽へ』でした。
◎楊逸『時が滲む朝』(文藝春秋)



◎井上荒野『切羽へ』(新潮社)



谷原 松田さん、楊さんが中国人として初の芥川賞受賞で話題になっていますけども、直木賞の井上さんはどんな方なんですか。
松田 微妙な女性心理の揺らぎを繊細に描いていることで定評がある作家なんですね。これからも、成熟した女性の恋愛小説をいろいろ読ませてもらえるんじゃないかと思って、楽しみな作家ですね。


<特集・茂木健一郎『脳を活かす勉強法』>
◎茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)



脳と心の繋がりをわかりやすく解説して、現在65万部を突破した『脳を活かす勉強法』。その内容をより多くの学生に理解してもらおうと、都内の中学校で実践授業が開催されました。そこでは著者の脳科学者・茂木健一郎さんが壇上に立ち、脳の血流の流れる様子のグラフィックをリアルタイムでモニターで見られる装置を生徒に装着し、その状態で問題を出して、負荷を掛けたときの脳の状態を解説していました。今回は、その装置をレポーターのちえみちゃんにも体験させて頂きます。簡単な計算問題を解く際、時間の制限がない場合とある場合でどのように脳の状態が変化するのかをチェック。ゲーム感覚で進んでいく授業……。茂木さんの狙いはそこにありました。実は茂木さんもはじめから勉強ができたわけではないと言うことです。あることがきっかけになって、勉強を楽しいと思うようになり、それで脳内物質のドーパミンが分泌され、意欲を引き出していったんだとか。夏休みを機会に色々なことを体験し、楽しいと思うことを発見してほしいと語っていただきました。


<今週の松田チョイス>
◎大倉崇裕『聖域』(東京創元社)



松田 フレッシュな山岳ミステリーの傑作、大倉崇裕(たかひろ)さんの『聖域』です。
 安西おまえはなぜ死んだ? マッキンリーを極めたほどの男が、なぜ難易度の低い塩尻岳で滑落したのか。事故か、自殺か、それとも――。好敵手であり親友だった安西の死の謎を解き明かすため、山に背を向けていた草庭は、再び山と向き合うことを決意する。気鋭のミステリー作家が満を持して挑戦する山岳ミステリーの大傑作。>
松田 この作品は、グイグイと読まされる力とか、大自然や人物たちがクッキリと立ち上がってくるとか、本当に骨太な、読み応えのある力作なんですね。特に自然描写が素晴らしくて、特に山の描写が。たぶん、山に行ったことがある人も、ない人も、雪山の厳しいけれども美しい情景には惹きつけられると思うんですよね。そういう自然の中で育まれていく山の仲間たちのものすごく篤い友情と、それがそのままいかないように俗世間のいろんなことがからんでいって、事件が起きるんですけども。で、謎解きも意外性がありますし、最後には感動的なラストシーンが待っているという。今の暑さを吹き飛ばすよな、爽快なミステリーという感じがしましたね。
谷原 松田さんがおっしゃったように、ぼくも1日半でグイグイと引き込まれて読んでしまったんです。山の小説ということで、ぼく自身、山に登ったことはないんですけども、なんか、ぼくも山に登ったことがあるんじゃないだろうか、と知ったような気持ちになすなるような、「山もの」の読み物としての楽しみもありますし、あと、ミステリーとしても、事件の発端は山で起きるんですけども、どんどん展開していくのは街の中なんですね。現在進行形で謎が進んでいって、最後がまた山に行くんですね。だから、「山もの」としての楽しみもあるし、ミステリーとしての楽しみも二つあるんですね。みなさん、山に登りながら、夏休み、読んでみて下さい。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.07.13)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.7.12)

「芥川賞・直木賞の予想」と「特集・この夏のオススメのガイドブック」


<特集・ブランチ厳選 この夏のオススメのガイドブック>


夏休みまであとわずか。旅行に行く人、まだ計画が決まってない人、長い休みが取れない人、それぞれにぴったりの旅本を紹介します。


◎「ことりっぷ」シリーズ(昭文社)



仲のいい女友達と2泊3日のショートトリップ。働く女性が週末に行く小さな旅を提案。女性に嬉しい気配りたっぷりのレストランやホテルをセレクトし、実際の旅に即したモデルコースを提案。


◎「旅行読売 臨時増刊号 思いたったらひとり旅」(旅行読売出版社)



日本全国の一人泊歓迎の宿、オススメスポットなど133選を紹介します。また、昔町、ローカル線、温泉、グルメ、神社、花など目的別にも観光スポットを紹介しています。


◎おののいも『てくてく北京』(ワニブックス)



今年の海外旅行先で、注目なのは、オリンピックも開催される北京。この町を著者が歩きつくします。写真ではなく詳細で楽しいイラストで、著者がひとり旅で見たもの食べたものの全てを紹介してくれます。


◎『島田紳助のすべらない沖縄旅行ガイドブック』(幻冬舎)



今、一番売れているガイドブック(アマゾン調べ)。芸能界一の沖縄通による最強ガイドブック。沖縄渡航80回以上の紳助さんが独断と偏見で沖縄のいいところをピックアップし、楽しみ方を提案します。(紳助さんのインタビューあり)


<今週の松田チョイス>


小林 今週の<松田チョイス>は特別編です。来週15日に発表となります、第139回芥川賞・直木賞の予想を松田さんに言っていただきます。
松田 はい。
小林 まず、芥川賞からまいります。候補になったのは、こちらの7作品です。この中で、松田さんが注目するのは、楊逸(ヤンイー)さんの『時が滲む朝』です。


◎楊逸『時が滲む朝』(文藝春秋)



松田 前回も受賞直前まで言った楊さんなんですけども、今度の作品は、1989年の、中国の民主化運動が天安門事件で挫折するんですね。それに参加した若者たちが、その後、不遇な人生を送っていくという話なんです。彼らが、尾崎豊の歌にすごく共感する。挫折の重さみたいなものが切なく迫ってくるんですね。ちょうど、北京オリンピック開幕直前で、中国のことにいろいろ関心をもたれていると思うので、今、是非読んでもらうといい作品だと思います。受賞してもらうと、中国人作家で初の受賞ということですから、ちょっと期待したいなと思います。
小林 さて、続いて参りましょう。注目の直木賞です。候補になったのは、こちらの6作品です。この中で、松田さんが「本命」としたのは、この作品です。


◎山本兼一『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』(文藝春秋)



N 直木賞候補2回目となる山本兼一さんの『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』。時は幕末、京都の茶道具屋の娘ゆずと店の奉公人だった真之介。二人は、駆け落ちして道具屋を構えたばかり。見立てと度胸と夫婦愛で、いわくつきの道具を捌き、勝海舟に坂本龍馬、新撰組とも渡り合う。夫婦の成長を軸に、商人の心意気を描く連作小説。>
松田 まず、キャラクターがとっても魅力的なんですね。道具屋の若夫婦と奉公人たちも素敵ですし、それに実在の坂本龍馬とか近藤勇とか高杉晋作なんかがからんでくる。だから、歴史的な事実とフィクションが見事に融合してて、本当にワクワク楽しませてくれます。それに、道具屋だけに、道具の「目利き」、道具話がまた、すごく楽しめるんですね。本当に、いぶし銀のような、味のある作品で、直木賞は新人賞なんですが、もうベテランの域に達している筆致だなあという気がしました。
谷原 ぼくも時代小説マニアなもので、チェックさせていただいたんですけども。いま、松田さんが「キャラクターが素晴らしい」とおっしゃったんですが、若夫婦の真之介とゆずさんの相性がすごくいいんですよね。道具の目利きを旦那さんがちゃんとやるんですけども、ゆずさんの方が、もともと道具屋のお嬢さんなんで、こちらの方が目利きのランクが上なんですよ。で、旦那さんは道具の目利きをするんですけども、幕末の志士たちの人物の目利きもするじゃないですか。町人と武士、志士たちというと、志士側で描かれている幕末物って多いんですけども、町人側から見た話なんですごく面白かったです。
松田 そうですね。町人が強くなってきた時代でもあるんですね。でも、主人公の夫婦がいいので、真之介は是非、谷原さんに演じてもらいたいし、ゆずさんは蒼井優さんかなあとか思ったりして。
谷原 いやあ、是非、やらせていただきたいですね。最後に若旦那の面目躍如のところもありますので、皆さん是非読んでいただきたいです。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.07.06)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.7.5)

『体育座りで、空を見上げて』と「特集・『島耕作』」


<文庫ランキング>  (6/23~6/29 三省堂書店全店調べ)
① 東野圭吾『さまよう刃』(角川書店)
② 梨木果歩『西の魔女が死んだ』(新潮社)
③ 小林多喜二『蟹工船』(新潮社)
④ 中山真敬『たった3秒のパソコン術』(三笠書房)
⑤ 村山由佳『夢のあとさき』(集英社)
⑥ 石田衣良『愛がいない部屋』(集英社)
⑦ 雫井脩介『クローズド・ノート』(角川書店)
⑧ 堂場瞬一『久遠(上)』(中央公論新社)
⑨ 有川浩『空の中』角川書店
⑩ 横山秀夫『クライマーズ・ハイ』(文藝春秋)


<特集・「島耕作」>
◎弘兼憲史『課長島耕作』(小学館)



◎弘兼憲史『部長島耕作』(小学館)
◎弘兼憲史『取締役島耕作』(小学館)



1983年から連載が始まった「島耕作」シリーズ。「課長編」、「部長編」、「取締役編」と着実に出世を重ね、現在も雑誌「モーニング」にて連載中だが、ついに社長に就任! まさに他に類を見ない「サラリーマン漫画の金字塔」として、存在感を放ち続けています。この社長就任を記念して「島耕作」を徹底特集しました。「島耕作」シリーズの大・大・大ファンである中川翔子さんに島耕作の魅力を語ってもらいました。さらに、しょこたんによる島耕作モテポイントBEST3を発表しました。(3位・博識、2位・冷静で聞き上手、1位・仕事への姿勢)


<今週の松田チョイス>
◎椰月美智子『体育座りで、空を見上げて』(幻冬舎)



松田 中学生という微妙な年頃の心の揺らぎを見事に描き出した、椰月美智子さんの『体育座りで、空を見上げて』です。
N 『しずかな日々』で野間児童文芸賞、坪田譲治賞を受賞した椰月美智子さんの新作『体育座りで、空を見上げて』。主人公の妙子は、ごくごくフツーの中学生。そんな彼女の中学3年間がきめ細かく描かれます。友人との関係、教師や親への反発、部活、試験、受験。揺らぐ思春期の心を綴った青春グラフィティです。>
松田 この小説では、ちょっとした波乱や軋轢はあるけれども、とりわけ大きな事件が起こるわけじゃないんですね。でも、だからこそ、少女の内面でブツブツと沸き上がってくるような不安とか不満とか、そういった感情の揺らぎみたいなものが、本当に切々と迫ってくるように伝わってくる作品なんです。こういう心の内面なんかも含めて、中学生という微妙な年代のかけがえのない輝きみたいなものを、本当に見事にとらえられていて、いま中学生の人も、かつて中学生だったあらゆる人も、是非読んでほしい青春のグラフィティだと思うんですね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですけども、主人公は女性なんですけども、思春期って、男とか女とか関係ないんですよね。多少、違う部分があっても、子どもから大人に変わり始める第一歩っていうのは、感じていることっていうのは、みんな一緒だと思うんですよ。読んでみて思ったのは、最後の方で、すごく「大人はわかってくれない」って言ってるんですけど、ぼくも同じように思っていたんですけども、結局、いま振り返ってみると、あのときは、ぼくもわかろうとしていなかったな、大人のことを。だから、わかろうとしなかったら、わかってもくれなかったんだよなって思いましたね。
松田 そういう余裕がないということもあるんですね。
優香 わたしも読みまして、中学生の時って、思春期の時期に誰もが思う、独特の気持ちってあるじゃないですか。特に何が起きたわけじゃないんだけど、なにか苛立ったり、どうしていいかわからない。これから高校になって大人になるんだけど、子どもでいたいとか。その狭間で、どうしても身近にいる家族に当たってしまうという。でも、当たったときに、自分で悪いことしたなって思うんだけど、すぐに謝れず、それもどうしていいかわからないというモヤモヤ感が、すごくよく、上手に出てて共感しましたね。
松田 大人にみられたいけども、子供でいたいみたいな、矛盾していますよね。
優香 そうですね。
谷原 皆さんも、この作品で青春時代を思い出してみて下さい。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.06.28)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.6.28)

「特集・伊集院静『羊の目』」


<総合ランキング>  (6/15~6/21 有隣堂全店調べ)
 1位 Jamais Jamis『AB型自分の説明書』(文芸社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 勝間和代『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 5位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 6位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 7位 中村俊輔『察知力』(幻冬舎)
 8位 前田敬子・岡優太郎『まこという名の不思議顔の猫 続』(マーブルトロン)
 9位 姜尚中『悩む力』(集英社)
10位 五木寛之・香山リカ『鬱の力』(幻冬舎)
谷原 松田さん、今週のランキングですが、『鬱の力』、『悩む力』、『察知力』、『フレームワーク力』と、タイトルに「力」という文字を使った本が人気を集めているようですが。
松田 結構、流行りみたいですね。注目したいのは、「鬱」とか「悩む」とか、どっちかというと「力」とは反対の、ネガティブなイメージの言葉を組み合わせるというのも多いんですね。『老人力』や『鈍感力』もそうだったんですが、わりと大ヒットに繋がるんですが、そのミスマッチが逆にインパクトになっているんですね。
谷原 ネガティブなものに力を付けることでポジティブに変えていくという。
松田 逆にひっくり返すということですね。


<特集・伊集院静『羊の目』>
◎伊集院静『羊の目』(文藝春秋)



1992年、『受け月』で直木賞、1994年、『機関車先生』で柴田錬三郎賞を受賞し、人と人の絆を温かく、時に優しく描いてきた伊集院静さん。彼は作詞家として近藤真彦に提供した『愚か者』で、1987年に日本レコード大賞を受賞、その他『ギンギラギンにさりげなく』などのヒット曲も生み出しています。そんな伊集院さんの最新作『羊の目』は今までの作品とは一線を画しています。初めてエンターテイメント性を意識したというストーリー展開。実はその裏には以前かわした高倉健さんとの約束があったということです。読後に浮かび上がってくる「家族」や「死」などのキーワードを伊集院さんはどう考えるているのか、伊集院さん自身の怒涛のような人生と小説の内容をリンクさせながら紹介します。小説の舞台でもある浅草・隅田川のほとりに佇む日本家屋でインタビューし、最後に達筆の伊集院さんに「美は強い」と描いていただいた書を拝見。その言葉に託する思いを伺います。
<あらすじ>
昭和8年、ある捨て子が武美と名付けられ戦前の浅草で育つ。 「裏切る事は卑怯なこと」という「任侠の掟」を教えられ、武美は自分を拾ってくれた辰三のために、命ぜられるまま殺しを重ねていく。しかし東京進出を図る四宮組の親分の命を狙うも失敗。武美はロサンゼルスへ逃れるが、その地でも追ってきた四宮組の刺客との死闘を演じる。その後、武美はある人の手引きで安全な場所、すなわち刑務所で25年過ごす。出所後に舞い戻った東京で、任侠として、武美の最後の戦いが繰り広げられる。


谷原 松田さん、『羊の目』ですが、いかがでした。
松田 とてつもないスケールのエンタテインメントで、終始圧倒されるんですけどもね。主人公の少年が「男」になっていく、育っていく姿がすごく印象的ですし、それと同時に、
彼が信奉しているピュアでタフなアウトローの美学みたいなものがものすごい迫力で迫ってくるんですね。今の時代、いろんな意味で指針を揺れているというか、見失いつつある時代なんで、こういう一途な男の生き方というものが語りかけてくるものは、ものすごく大きいなっていう気がしますね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.06.21)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.6.21)

『田村はまだか』と「特集・槇村さとる『Real Clothes』」


先週(6月14日)は、9時前に発生した岩手・宮城内陸地震の影響で、「王様のブランチ」が中止になりました。そのために、先週の予定だった「特集」「松チョイ」が今週に繰り越しになりました。


<コミック・ランキング> (有隣堂アトレ恵比寿店 6/9~6/15)
 1位 尾田栄一郎『ONE PIECE』50(集英社)
 2位 浅野いにお『おやすみプンプン』3(小学館)
 3位 矢沢あい『Nana』19(集英社)
 4位 西村しのぶ『ライン』4(講談社)
 5位 瀧波ユカリ『臨死!!江古田ちゃん』3(講談社)
 6位 星野桂『D.Gray-man』15(集英社)
 7位 天野明『家庭教師ヒットマンreborn!』20(集英社)
 8位 黒丸・夏原武『クロサギ』19(小学館)
 9位 すえのぶけいこ『ライフ』18(講談社)
10位 井上雄彦・吉川英治『バガボンド』28(講談社)


<特集・槇村さとる『Real Clothes』>
◎槇村さとる『Real Clothes』1~4(集英社)



働いている女性の仕事や恋に対する等身大の悩みをリアルに描き、今、普段マンガを読まない20~30代の女性たちの間で、じわじわと人気となっているのが、槇村さとる『Real Clothes』(5/19・4巻発売・累計42万部)。主人公は、大手百貨店「越前屋」のふとん売り場勤務の天野絹恵(27)。「服なんてどうでもいい。表皮一枚のことじゃない」と思っていたのに、突然、エリート中のエリートが集まる婦人服第3部に異動……!? その手腕で4時間で1000万円を売り上げる部長・神保美姫や、その部下でやり手のバイヤーの田淵など、くせものぞろいの現場で、絹恵の人生が大きく動き始める……。35年にわたってマンガ界の第一線で活躍。作品には自分の働き方も反映していると語る槇村さん。今回はその仕事場での様子を紹介しつつ、読者から「力をもらえるセリフ」と評判の槇村流セリフ作り術など、作品作りの秘密について伺いました。


<今週の松田チョイス>
◎朝倉かすみ『田村はまだか』(光文社)



松田 久しぶりに、とっても気持ちのいい感動を与えてくれた長編小説、朝倉かすみさんの『田村はまだか』です。
N 札幌ススキノにあるとあるバーで、小学校の同窓会を終えた40歳の男女五人が「田村」を待っていた。大雪で列車が遅れ、クラス会に間に合わなかった「田村」。それぞれがある人との思い出を語り始めるが、「田村」はまだ来ない。人生にあきらめを覚え始めた世代が語り過ごした一夜は、怒涛の感動とともに幕を閉じる。>
松田 この作品は、絶妙な語り口のお話なんですね。クラス会で流れてきて、バーでグダグダ飲んでいる5人の男女という話なんですけども。なんとなく、名優揃いの舞台劇を観ているみたいな感じで、なんだか、バーのカウンターのこっち側にいて、彼らの話を盗み聞きしているみたいな臨場感があるんですよね。
優香 はい、そうなんです。私も読みました。本当におっしゃるとおりで、バーの空間がとっても良くて、みんなが「田村はまだか」って言うんですけども、そのセリフを言いたくなるように、田村さんを待っちゃうんですよね。
松田 そうですね。それで田村はなかなか来ないんですね。
優香 全然、来ないんですよ。
松田 その間に、ちょうど40歳の5人のそれぞれの人生が語られていくんですけども、いろいろ屈折していて、ちょっと人生を諦めかかっている人もいたりして。話を聞いていくと、なんで田村に会いたいと思っているかということがわかってくるんですね。それで、でも、田村はやってこないんですよ。ただ、最後には、人生っていろいろあるけどいいんだなあって、ある種深い感動のようなものが残る、不思議なテイストのお話ですよね。
谷原 田村は来るのか来ないのか、是非松チョイしてみてください。

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