松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.06.08)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.6.7)

『東京島』と「特集・和田竜」


<総合ランキング>  (5/26~6/1 文教堂書店全店調べ)
 1位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 松本ぷりっつ『うちの三姉妹 7』(主婦の友社)
 5位 『ファイナルファンタジー11電撃の旅団編ヴァナ・ディール公式ワールドガイド アルタナの神兵編』(アスキー・メディアワークス)
 6位 桐野夏生『東京島』(新潮社)
 7位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 8位 氷川きよし『氷川きよしフォトエッセイ KIYOSEAON』(主婦と生活社)
 9位 奥野宜之『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナコーポレートコミュニケーション)
10位 宮部みゆき『孤宿の人 上』(新人物往来社)


<特集・和田竜>
◎和田竜『のぼうの城』(小学館)



◎和田竜『忍びの国』(新潮社)



時は乱世、天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一落とせない城があった。それは、周囲を湖に囲まれ「浮城」と呼ばれていた武州・忍城。城主・成田長親は何があっても泰然としていて、領民から「のぼう様」と呼ばれ、誰も及ばぬ人気があった。この忍城とその城主の物語『のぼうの城』は、3月15日放送の「松田チョイス」で取り上げ、谷原さんが大絶賛。今回、この小説に登場するお城のゆかりの土地・埼玉県行田市を和田さんが案内してくれ、創作秘話を聞かせてくれました。また、あわせて新作『忍びの国』についても語っていただきました。この新作は、戦国大名不在の国、伊賀の国に織田軍一万余が攻め込み、そこで繰り広げられた壮絶な戦いを描く。自らの欲のみに生き、他人を平気で踏みにじる、人でなしの集団である伊賀の忍びの者たちの人間離れした術と、この戦いの陰に咲いた純愛など、個性的なキャラクターが次々に登場し、息を継がせない戦いの場面が連続する戦国エンタテインメント大作。
谷原 松田さん、新作の『忍びの国』、いかがでした。
松田 『のぼうの城』も引き込まれるように読みましたが、新作『忍びの国』は伊賀の話なんですが、なんだか伊賀の忍者に首根っこを掴まれて、戦国の戦乱の中に投げ込まれたような、本当に、ハリウッド映画のような臨場感があって……。力のある若手の時代小説作家がうまれて、これから楽しみだなと思いますね。
谷原 やはり、『のぼうの城』に続くエンタテインメント時代劇なんですね。
松田 そうですね。とっても映像的ですからね、これも是非、映画にしてほしいと思いましたね。


<今週の松田チョイス>
◎桐野夏生『東京島』(新潮社)



松田 いつも強烈な作品でぼくたちの心を揺さぶる桐野夏生さんの最新長編小説『東京島』です。
 桐野夏生の問題作『東京島』。「あたしは必ず、脱出してみせる」。32人が流れ着いた無人島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても助けは来ず、いつしか若者達は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か楽園か? 欲望をむき出しにして生きていく人間たちの姿を容赦なく描いて、読む者の手を止めさせない問題作、ここに誕生!>
松田 桐野さんは、これまでも極限状況に置かれた人間の、ギリギリと苛むようなシチュエーションを書いてきたんですけども、今回も凄まじい。31人の男と1人の女が無人島に漂着して、人間同士の対立とか嫉妬とか、人間のいやらしい部分がさんざんあって、それに直面せざるをえないような状況があって。だけども、読み進んでいくと、意外なことが次々と起こっていって、この人たちの運命が一変してしまうんですね。なかなか、読まないとわからないんですけども……。で、最後まで読むと、人間って結構強いんだなあ、たくましいんだなあという希望みたいなものが見えてくる、不思議なテイストの作品なんですね。なんか、優香ちゃんも読もうと思って……。
優香 本屋さんで、気になって買ってはいたんですけども……。きょう、紹介聞いて、やっぱり読もうと思いました。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.06.01)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.31)

『菜種晴れ』と「特集・石田衣良“恋愛の極意”」


 <総合ランキング>  (5/19~5/25 三省堂全店調べ)
 1位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 奥野宜之『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナコーポレートコミュニケーション)
 4位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 5位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 6位 鈴木貴博『カーライル』(ダイヤモンド社)
 7位 築山節『脳と気持ちの整理術』(日本放送出版協会)
 8位 今尾恵介『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)
 9位 野口嘉則『3つの真実』(ビジネス社)
10位 中日新聞社『ドアラ・チック』(PHP研究所)


<特集・石田衣良“恋愛の極意”>
◎石田衣良『傷つきやすくなった世界で』(日本経済新聞出版)



◎石田衣良ほか『恋のトビラ』(集英社)



1997年、『池袋ウェストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。2003年には、『4TEEN』で第129回直木賞を受賞。現在、連載小説を9本、エッセイを4本抱えている、超人気作家・石田衣良さん。これまで、小説やエッセイを通して、若い世代を見つめ、メッセージを送り続けてきた石田さん。この10年で、人びとは余裕を失い、傷つきやすくなってしまったという。それは、「恋愛」についてもいえるのだそうです。今回は、、この5月の刊行された最新エッセイ集『傷つきやすくなった世界で』とアンソロジー小説集『恋のトビラ』のお話を糸口に、リポーター・白石と恋愛談義に花を咲かせました。これを受けて、スタジオでも恋愛談義になりました。谷原さんは、ぼくのもそのネタで振ってきましたが、受けにくいのでかわしてしまいました。
松田 恋愛論も含めて、ああいう風に発言する作家の人って珍しいんですね。みんな作品だけ書いている人が多くて。だから、ああいう人って先輩としては貴重だと思うんですよね。アドバイスしてくれる作家として、知識人として。


<今週の松田チョイス>
◎山本一力『菜種晴れ』(中央公論新社)



松田 女性の心にも響く人情時代小説、山本一力さんの『菜種晴れ』です。
 江戸末期、地方の菜種農家に生まれた二三(ふみ)は、わずか五歳で江戸深川の油問屋の養女となる。泣くのは一人の時だけ、過酷な試練にさらされながらも、気丈に新しい生活を受け入れ、力強く生き抜いていく。なぜなら、二三は人びとをうならせる絶品の天ぷらを作ることができたから。幕末の江戸、困難に立ち向かい、前へ前へと歩んだ一人の少女の波瀾万丈の半生を描く長編時代小説。>
松田 なんと言っても、主人公の女性のキリッとした姿が目に浮かぶようで、それがとても素敵なんです。この魅力的なヒロインを取り囲んでいる、周りの人たちも情が厚い人たちばかりで、とても素敵なんです。こんな素敵な人たちに、実は、過酷な運命が襲いかかる、だから読んでいて、胸を締め付けられるような辛い気持ちになります。でも、主人公は、どんな状況になっても、けなげに真っ直ぐに生きていくんですね。本当に素晴らしい感動的な時代小説だなあって思いましたね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですけども、二三は田舎の農家から江戸にもらわれていって、環境の変化というか、試練とかがいっぱいあるじゃないですか。でもそういうものに負けないで成長していく、そういう一人の成長物語として、一代記としていいなと思いました。あとそれから、今の日本人がなくしてしまったものが、ここにあるような気がします。
松田 そうですね。江戸町人の品格のようなものが、すごく伝わってきますね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.05.25)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.24)

『ブランケット・キャッツ』と「特集・『日本のおかず』&『おつまみ横丁』」


 <総合ランキング>  (5/11~5/17 有隣堂全店調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 西尾維新『傷物語』(講談社)
 5位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 6位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 7位 岩本薫『YEBISUセレブリティーズ6』(リブレ出版)
 8位 勝間和代『勝間和代のインディペンデントな生き方 実践編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 9位 奥野宜之『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナコーポレートコミュニケーション)
10位 福田健『女性は「話し方」で9割変わる』(経済界)


<特集・『日本のおかず』&『おつまみ横丁』>
◎西健一郎『日本のおかず』(幻冬舎)



各界有名人が愛してやまない、当代最高の割烹「京味」の主人による、待望の「家庭料理」のバイブル。牛肉ごぼう、ぶり大根、にしん茄子、豆あじの南蛮漬け、たらちり鍋、親子丼……なによりのごちそうは、旬の素材をいかした「おかず」です。10年経っても、20年経っても古くならない「家庭料理」の教科書として後世に残したい1冊です。「京味」の常連である阿川佐和子さんにインタビューしました。


◎編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)



横丁酒場で味わえるような、素朴で飽きない、うまい定番おつまみを185品取り揃えました。少ない素材で、3ステップという少ない行程で、呑みながらでも作れる、簡単なおつまみを厳選。今日の一杯、明日の一杯を楽しくするだけではなく、ずーっと使い続けてもらいたい酒の肴集。編集者と料理研究家の瀬尾幸子さんにインタビューし、本の中から1品つくってもらいました。


<今週の松田チョイス>
◎重松清『ブランケット・キャッツ』(朝日新聞出版)



松田 いつも、ぼくたちを感動させてくれる重松清さんの連作小説『ブランケット・キャッツ』です。
N ブランケット・キャッツ、それは、馴染んだ毛布とともに二泊三日でレンタルされる猫たちのこと。「わたしね……泥棒しちゃった……」。猫を借りる人びとには、それぞれ深い事情があった。定年間際に横領してしまった女性、子どもに恵まれない夫婦、リストラされて家を売る一家。今を生きる人々の孤独と幸せを見つめる、感動の連作短編。>
松田 「借りてきた猫」という言葉がありますが、これは文字通り、レンタルされた猫を借りた家族の話なんですね。猫は別に話すわけではないですし、クールなものですから、特別なことをするわけじゃないんです。ただ、猫がひとときある家族にいることで、その家族のゆがみとか問題とか、そこにいる人々の孤独みたいなものがあぶりだされていくんです。いろんなドラマが、そこに生じる。本当にうまいつくりになっているなあって思うんですけども。ぼく自身は、いかにも重松さんらしいなあと思う、リストラされた一家の主が思い出を作ろうとして猫を借りてくるんだけど、家族はそれどころじゃない。「お父さん、なに舞い上がってんのよ」みたいにどんどんバラバラになっていく。だけど、あることをきっかけにして家族がまたきゅっと繋がっていくという。最後はホロリと感動させられる素敵な物語集でしたね。
優香 私も読みまして、本当に重松さんて、なんでこんなすごいんだろうというか、短編で短いんですけども、ギュギュッと詰まっていて。こんなにも違うお話をたくさん書けるって、やっぱすばらしいなあって思いました。それと、私は、この中で唯一、猫目線のお話があって、子どもたち二人が出てくる……。
松田 家出するんですよね。
優香 はい。「旅に出たブランケット・キャット」というんですけども。小さい頃って、動物に守られたいっていう願望ってなかったですか? 空想で妄想でそういうことを考えていたんですけども、まさにそういう感じで、猫が助けてくれたり、守ってくれたり、それがまた、ホンワカ、ジーンとして、とても温かいお話で、本当に気持ちいいですよね。
松田 そうですよね。気ままに生きているような猫なんだけど、それが逆に癒しになるという、すごくいいお話ですよね。
優香 猫の気持ち、よく分かっているな重松さんという感じですね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.05.17)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.17)

「特集・川上弘美『風花』」


<総合ランキング>  (5/5~5/11 オリコン調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 3位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 4位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 5位 『ヘキサゴンドリルⅡ』(扶桑社)
 6位 西尾維新『傷物語』(講談社)
 7位 TBSイブニングファイブ『余命1ヶ月の花嫁』(マガジンハウス)
 8位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 9位 小栗左多里、トニー・ラズロ『ダーリンは外国人 with BABY』(メディアファクトリー)
10位 『ポケモンぜんこく全キャラ大事典』(小学館)


谷原 松田さん、最近のランキングだと実用書が目立つんですが、小説はどうなんですか?
松田 総合ランキングだとどうしてもノンフィクションが強くなっちゃうんですが、小説の方で言うと、本屋大賞の『ゴールデンスランバー』が山本周五郎賞も受賞して話題になっています。これから、ベテラン、新人、いろいろ話題作が目白押しなので楽しみだと思います。


<特集・川上弘美『風花』>
◎川上弘美『風花』(集英社)



『センセイの鞄』、『夜の公園』、『真鶴』など、恋愛小説の名作を次々と生み出してきた川上弘美さんが、一組の夫婦にフォーカスを絞って書く、初めての小説『風花』を発表しました。主人公は結婚7年目の「のゆり」。彼女は、ある日、匿名の電話によって、夫の卓哉に恋人がいることを知らされます。離婚をほのめかす夫、夫婦の間にたちこめる、微妙なざわめき。途方に暮れながら、揺れ動きながら、自分と向き合い、少しずつ前に進むようになった「のゆり」、33歳の物語。何気ない日常のささやかな描写を織り交ぜながら、自分の人生と夫との距離を見つめ直す女性の心理をきめ細かく描いた恋愛小説の傑作。この作品が、どのように誕生したのか、川上さんが考える「夫婦」とは、「結婚」とは。2年前の「ブランチ」登場以来のTV出演となる川上さんが、気軽にインタビューに答えてくれました。(レポーター:金田美香)


<VTR>
私(松田)もロケに同行して、川上さんの話を聞かせていただきました。VTRでも出てきましたが、特に印象に残った言葉を二つ再録してみます。
*主人公の「のゆり」が「結婚」についてゆるやかに問うていく。そういう描写を通して描きたかったものは?
川上「私の年代っていうのは、仕事を続けるにしても、辞めるにしても、結婚はするもんだという、そういう風に、なんとなく思っていた最後の年代のような気がするんですけれども。いまの20代、30代の女の人たちは(男の人も同じだと思うんですけど)、こうあるべきだということがなくて自由と言えば自由、でも、じゃあ自分たちはどうしたらいいのか、いろいろな選択肢があるだけに、きちんと考えようとすればするほど迷っちゃうんじゃないかなって思うんです。……でも、それはものすごく幸せなことだと思うんですよね。……自分で選んで、どんなに拙く見えても、どんなに幼く見えても、一歩一歩自分で何かを掴んでいってほしいなあって思って書いていったような気がします。」
*川上さんは、この作品を書くことで何を伝えたかったのか?
金田「のゆりと卓哉を通して川上さんが伝えたかったことというのは?」
川上「それ、難しい質問なんですよ。たぶんね、小説を書いてて、伝えたいことって、私はないかもしれない。それよりも、とにかく読んでいただいて、その読んだ方が、何かを感じてくだされば嬉しい。その触媒、きっかけになれば嬉しいなあ。私が書いた通りのそのものを、『あ、そうですか』と受け取って、その通りのままっていうんじゃなくて、一行があったら、その一行で自分のことを考えたり、今までのことを思い出したり、それで、全然違うことを考えたり、それが、もしかすると一番嬉しいかもしれない。」


<スタジオ>
優香 私も、この『風花』読みましたけれども、恋愛小説って、ちょっと苦手な意識があったんですけども、すごく読みやすくて。なぜかと思ったら、恋愛だけじゃなくって、現実的なことが、ちょうどいい具合に混ざり合っているんで、すべてがリアルというか。白黒ハッキリつけたいし、だけどグレーな部分も、あっ、やっぱあるよなあって思って。そのグレーの部分がリアルなんですよ。
谷原 ぼくも読んだんですけども、正直言って、怖かったです、この本、男の立場からすると。女性が主体にして描かれているんで。男って理屈っぽいけども、実は夢見がちで、女の人は一見受け身に見えるけども、決断したらとっても現実的なんだなって感じて。
優香 最終的に思ったのは、女の人は強いなっていうこと。優柔不断だけど、最後にはね。谷原 とっても芯が強いですよね。この本読んでいて、途中から、ある女優さんをイメージしていたんですけども、和久井映見さんの顔が、すっと浮かんできたんですよね。松田さん、川上さんの物語は面白さに加えて文章のうまさも言われていますね。
松田 そうですね。いま言われたような感想をもたれるというのは、このしなやかでなめらかな文章なんですね。こういう文章だからこそ、非常に深い心理的なものをえぐり出すこともできるんですね。この小説は、夫婦の危機の物語ですね。激しい修羅場はひとつもないんですよね。静かに静かに二人の関係が壊れていく、だけど、その中で、新しい感情が少しずつ少しずつ育っていくんです。読む人によっては、それを「怖い」と思うかも知れませんし、ある種の「優しさ」というかな、大事なものを大切にしたいという意味での優しさもあると思うんですよね。だから、川上さんが最後に言ってましたが、読む人によって、感じ取り方が全然違う。もしかすると、読んでいる人の心理が写る鏡みたいな作品なんじゃないかなっていう気がしましたね。
優香 これも、読んだ後に、みんなで話し合える本ですよね。
松田 男の人も女の人も、年配の人も若い人も、それぞれの読み方をすると思いますね。
谷原 美香ちゃん、お目にかかって、とても雰囲気のある方でしたね。
金田 そうなんですよ。まるで、小説の主人公の方のような存在感があるんですよね。でも話すと、優しくて包み込んでくれるような、お母さんのような印象も受けますし。女性の魅力がたっぷりで、憧れですね。
谷原 世の男性にも是非読んでいただきたい恋愛小説です。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.05.10)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.10)

「特集・劇団ひとり&立川談春」


<総合ランキング>  (4/28~5/4 オリコン調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 『ヘキサゴンドリルⅡ』(扶桑社)
 5位 西健一郎『日本のおかず』(幻冬舎)
 6位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 7位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 8位 小栗左多里、トニー・ラズロ『ダーリンは外国人 with BABY』(メディアファクトリー)
 9位 『無双OROCHI魔王再臨 コンプリートガイド』(光栄)
10位 『CINEMA SQUARE Vol.18』(日之出出版)


<特集・劇団ひとり&立川談春>
◎劇団ひとり『そのノブは心の扉』(文藝春秋)



お笑い芸人としては、総勢十数名のキャラクターを演じ分け、俳優としては映画「嫌われ松子の一生」、TVドラマ「電車男」「純情きらり」で好演し、作家としては小説『陰日向に咲く』がベストセラーになり、映画化もされた。今、ノリにノっている男「劇団ひとり」の初のエッセイ集が刊行されました。“ひとりで遊び、ひとりで悩み、ひとりで書いた”この本。めくるめく「ひとりワールド」が全開です。劇団ひとりさんにインタビューしました。


◎立川談春『赤めだか』(扶桑社)



17歳で天才・立川談志に入門。「修業とは矛盾に耐えることだ」と言われ、理不尽に怒ったり、思わぬところで優しかったりする師匠に翻弄される苦闘と苦笑の日々。「上の者が白いと言えば黒いもんでも白い」という前座生活の苦労と二つ目になることができた喜び。笑わせて、泣かせて、しっかり心に残る修業物語。落語家達の奇妙な生活を活き活きと描き、落語の面白さを教えてくれる一冊。高座前の談春さんを直撃しました。


谷原 松田さん、この2作品の魅力は?
松田 劇団ひとりさんは、本当に文章がうまい人で、このエッセイ集でも、奇矯な行動を、わりに淡々と報告するんですね。面白おかしくしようとしない。だから逆に、読んでいると面白さが増していくという文章芸がある人ですね。立川談春さんも、笑いをとろうとしないで、淡々と奇妙な世界を書いていくんですが、読み進めるにしたがって、ふつふつと笑いがこみ上げてきます。だから、二人とも笑いのコツみたいなものをちゃんと掴んでいる人だなあって思います。また、立川談志さんというキャラクターがメチャクチャ面白いので、それを読んでいくのも楽しみですね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.05.04)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.3)

『さようなら窓』と「特集・森田まさのり『べしゃり暮らし』」


<総合ランキング>  (4/21~4/27 文教堂書店全店調べ)
 1位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 『あいのり10 Fate~めぐり逢い~』(学研)
 5位 北方謙三『楊令伝5 猩紅の章』(集英社)
 6位 小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)
 7位 小栗左多里、トニー・ラズロ『ダーリンは外国人 with BABY』(メディアファクトリー)
 8位 高橋克徳他『不機嫌な職場―なぜ社員同士で協力できない』(講談社)
 9位 大庭史榔『1分骨盤ダイエット』(三笠書房)
10位 伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮社)


<特集・森田まさのり『べしゃり暮らし』>
◎森田まさのり『べしゃり暮らし』1~5(集英社)



累計5000万部を超える大ヒット作となった『ろくでなしBLUES』で連載デビューし、現在放送中のドラマ「ROOKIES」の原作者でもある森田まさのりさんの最新作『べしゃり暮らし』を特集しました。ウケるためなら命がけ!? 吉竹高校3年の吾妻圭祐は自称「学園の爆笑王」。その才能を昼の放送で遺憾なく発揮していた。ある日、大阪から転校してきた元芸人・辻本潤と出会い、コンビを結成。紆余曲折しながらもプロのお笑い芸人を目指す青春ストーリー。森田さんの作品の特徴は、超リアルで写実的な絵。その秘密は、森田さん自らによるカメラ取材にありました。今回は、お笑いライブの舞台裏取材に同行し、その綿密な取材ぶりを目の当たりにします。また、仕事場では、森田さんが、最も神経を使うという、人物の表情を描く瞬間も披露してくれました。また、作品への熱い思いも語っていただきました。


<今週の松田チョイス>
◎東直子『さようなら窓』(マガジンハウス)



松田 歌人の東直子さんが書いた最新長編小説『さようなら窓』です。
N この家はあたしの家じゃない。ゆうちゃんの家。繊細な感受性から複雑な家庭に疲れてしまったきいちゃん(築)。そんな彼女が安らかに眠れるように、彼氏のゆうちゃん(佑亮)は夜ごとお話を聞かせてくれる。それはどこかはかなく哀しい人たちのお話だった。きいちゃんが優しいゆうちゃんにさよならするまでが綴られる、切なくも温かい恋物語。>
松田 主人公のきいちゃんに、本当に心優しいゆうちゃんが夜ごとに話をしてくれるんですね。そのお話に包まれて、幸せな時を過ごしているんです。言ってみれば「現代版・千夜一夜物語」といったテーストのお話なんですね。そのお話に出てくる登場人物は、どこかはかなげで、哀しみを抱えていて、だけど、一話一話、とってもしみじみ温かさを感じさせられるお話なんですね。繊細なきいちゃんなんですけども、縁の薄かった実の父親の最期を看取ることになって、そのことがきっかけになって、自分の足で歩きだす。自分の哀しみみたいなものを抱えながら、歩き出そうとして、それで、優しいゆうちゃんと別れる、「さようなら」する。だけど、悲しい別れじゃなくて、自分がもっと成長していくための別れなんで、きいちゃんに「また逢おうね」って言いたくなるような優しいラストなんですね。
小林 本当にゆうちゃんが優しくて、こんな優しい男性がいるのは、きいちゃん幸せ者だなあって思いながら読んでいたんですけども。東さんの独特の表現で、ゆうちゃんがきいちゃんにお話してくれるお話の登場人物とかが、すごく不思議なんだけど、また愛すべきキャラクターで、なんかあったかくなるような。私は、こういう恋愛もあるんだなと最後に思いました。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.04.26)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.4.26)

『こうふく あかの』と「特集・矢口敦子『償い』」


<文庫ランキング> (4/14~4/20 日販オープンネットワークWIN調べ)
 1位 佐伯泰英『白桐の夢 居眠り磐音江戸双紙』(双葉社)
 2位 佐伯泰英『上海 交代寄合伊那衆異聞』(講談社)
 3位 北方謙三『水滸伝 十九』(集英社)
 4位 平岩弓枝『小判商人 御宿かわせみ33』(文藝春秋)
 5位 横山秀夫『震度0』(朝日新聞出版)
 6位 矢口敦子『償い』(幻冬舎)
 7位 伊坂幸太郎『死神の精度』(文藝春秋)
 8位 栗本薫『旅立つマリア グイン・サーガ120』(早川書房)
 9位 北方謙三『替天行道 北方水滸伝読本』(集英社)
10位 荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険 40』(集英社)
谷原 松田さん、文庫ランキング3位の『水滸伝』なんですが、ぼくもはまっているんですが、読み始めると止まらないですよね。
松田 本当にぼくも止まらないで困っているんですけども。なんで、こんなに面白いのかというと、「水滸伝」という大ロマンを一回解体して、そこに、新しいキャラクターなり、迫力のある合戦場面なりをふんだんに入れて、何倍にも何十倍にして再構築してるんですね。だから、北方さんの並外れた筆力が生み出した一大エンタテインメントなんで、絶対に面白いこと間違いないですね。
谷原 キャラクターが本当に魅力的で、楊志というキャラクターがいて、その男の生き様、死に様が本当にかっこいいんですよ。皆さん、是非読んでいただきたいと思います。あと1位の佐伯さんの作品も面白いです。


<特集・矢口敦子『償い』>
◎矢口敦子『償い』(幻冬舎)



7年前の作品にもかかわらず、新宿の二つの書店(福家書店新宿サブナード店、紀伊國屋書店新宿本店)が、偶然、同時期にPOPを立てて、独自に展開したことから火が付き、いまや45万部のベストセラーになったという、感動の長編ミステリー。主人公は36歳の元医師・日高。彼は、子供の病死と妻の自殺によって絶望し、ホームレスになった。流れ着いた郊外の町で、社会的弱者を狙った連続殺人事件が起き、日高はある刑事の依頼で「探偵」となる。やがて彼は、かつて自分が命を救った15歳の少年が犯人ではないかと疑いはじめるが……。作者の矢口さんは、小学5年生の時に、病気で学校に行けなくなり、大学も通信教育で卒業しました。そういう過去をもっているせいでしょうか、彼女の作品は社会的弱者への優しい眼差しに満ちています。札幌在住の矢口さんを訪ね、この作品に託した思いをうかがいました。また、ヒットのきっかけになった書店も直撃しました。


<今週の松田チョイス>
◎西加奈子『こうふく あかの』(小学館)



松田 活きのいい作品を次々と発表しています西加奈子さんの最新作『こうふく あかの』という作品です。
 先日、『通天閣』で、織田作之助賞を受賞した西加奈子さん。その最新作は、『こうふく あかの』と『こうふく みどりの』という、どこかで繋がっている、まったく別々の物語。『こうふく みどりの』では、中学生緑の日常と淡い初恋が描かれます。そして、『こうふく あかの』では、2007年のサラリーマンの苦悩と2039年のプロレスラーの生き様が交互に語られ、やがて二つの話がリンクしていくのです。>
松田 『こうふく みどりの』と『こうふく あかの』というのは、それぞれ独立した波瀾万丈の物語として楽しめるんです。『こうふく あかの』の方を取り上げてみようと思うんですが、これは、ちょっと自意識過剰なサラリーマンが、奥さんから妊娠を告げられる。だけど、全然心当たりがないので、非常に衝撃を受けるという、深刻なお話が一方であって、そこに突然、未来の、約30年後のプロレスの試合の話が入ってくるんですね。そういう荒唐無稽な話なんですけども、西さんの独特の、活きのいい、コミカルな語り口でグイグイと読まされていくんです。で、あるところまでいくと、この二つの全然違うドラマが、「アントニオ猪木」というキーワードで結びつくっていうことがわかってくるんですね。なかなか不思議な展開になっているんです。最後まで読むと、ハッピーエンドとは言えないんですけども、ああ、こういう終わり方いいんだ、人生ってこういうもんだって思うんです。人生っていうリングの上で、みんな死にものぐるいで戦っている。それもいいじゃないかって、心が温かくなる、元気をもらえるという素敵な物語なんですね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.04.20)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.4.19)

「特集・小川糸『食堂かたつむり』」


<小説ランキング>  (4/3~4/9 丸善日本橋店調べ)
 1位 小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)
 2位 伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮社)
 3位 山本一力『菜種晴れ』(中央公論新社)
 4位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 5位 東野圭吾『流星の絆』(講談社)
 6位 川上弘美『風花』(集英社)
 7位 和田竜『のぼうの城』(小学館)
 8位 海堂尊『ジーン・ワルツ』(新潮社)
 9位 緒川怜『霧のソレア』(光文社)
10位 江上剛『愛、弁解せず。』(PHP研究所)


<特集・小川糸『食堂かたつむり』>
◎小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)



<スタジオ>
英玲奈 今週のランキングでも堂々1位を飾り、ただいま、大ブレイク中です。『食堂かたつむり』の作者小川糸さんにお会いしてきました。


<VTR>
優香 久しぶりに号泣しました。もう、溢れて出てくるんですよ。(3月22日O.A.)
はしの 後半、涙をこらえるのが大変。閉じては上向いて(眼をパチパチ)、また開けて、閉じては上向いてというのを繰り返して……。(3月29日O.A.)
N そんな声が広がって、現在12万部突破の大ベストセラーになっているのが『食堂かたつむり』。ある日突然、何もかも失った主人公倫子は、故郷で食堂を始める。一日一組、その客だけに作られたメニューは、人びとを癒し、小さな奇跡を生んでいきます。>
英玲奈 あの方だと思います。
N とても気になる、この本の作者小川糸さんを訪ねました。>
英玲奈 英玲奈です。
小川 はじめまして、小川糸です。
N 新緑に映える黄色いワンピースがお似合いの小川糸さん。とても優しげ。>
英玲奈 小川さんと倫子ちゃんが一致してきました。
小川 いえー、どうなんでしょう。
英玲奈 ホンワカとした雰囲気で。すごく優しそうな方だなあという印象を受けました。
小川 ウフフフフ。わかんないです。
英玲奈 わかんないですか。
小川 わかんないです。……こちらになります。
英玲奈 こちらですか。
N そんな小川さんが案内してくれたのが……。>
小川 私にとっての「食堂かたつむり」なので……。
N 小川さんのお気に入りの場所、お友達の料理研究家が開いたというアトリエで、お話を伺うことにしました。>
英玲奈 『食堂かたつむり』を「王様のブランチ」で紹介した後、すごい反響があったという風に伺ったんですけども。
小川 はい。みなさんから、ああいうコメントいただいて、本当にうれしいと同時に、背筋が伸びるというか。物語を書こうと思ってから、10年経つので、その間に、辛いこととかもあって、それがお腹からにじみ出てくるというか、放送の後は、いろいろ思い出してボロボロ泣いてしまいました。
N これまで小川さんは、fairlifeという音楽集団で、作詞を担当。>
小川 浜田省吾さんがメロディを作って、私が詞を書いて、水谷(公生)がアレンジをして……。
英玲奈 水谷さんとおっしゃる方は?
小川 私のパートナーというか夫です。
英玲奈 旦那さんで。じゃあ、ご結婚もされて……。
小川 はい。
N これまでに3枚のCDを発表して、その中には、ポルノグラフィティの岡野昭仁さんをはじめ、奥田民生さんやゴスペラーズら一流アーティストがゲストとして参加。しかし、小川さんの目標である作家にはなかなかたどり着けず、『食堂かたつむり』が世に出るまでには紆余曲折がありました。実は、この作品、2年前の「ポプラ社小説大賞」で、最終選考にも残らず落選。しかし、光る物を感じた編集者の目にとまり、2年の歳月をかけ、今年、出版がかなったのです。>
小川 私も、これがダメだったら、作家になるっていうことをあきらめようかなって思って出した作品なので……。
英玲奈 感謝ですね。
小川 本当に感謝です。
N そんな10年分の思いが詰まった『食堂かたつむり』では……。「リンゴちゃん、こんなカレー、はじめて食ったよ」……近所のオジサンへのお礼のザクロカレー。高校生カップルの恋をかなえるジュテームスープ。倫子の料理が人びとに幸せを運び、物語はファンタジックに進んでいくのですが、突然、倫子の前に重い現実が立ちふさがります。しかし、その現実の中にこそ、生きることの尊さが隠されているのです。>
小川 生きていると、きれいなこととか、いいこととか、楽しいことばっかりじゃなくて、時に、残酷なこともやらなければならなかったり、苦しかったり、辛いこともあるんですけども、そういうのから目をそらさないで、向き合った上で、でも、振り返ってみれば、いいことがたくさんあって、生きていることが愛おしく思えるような、そういう作品を書きたいなあと思って書きました。
N 声も、なにもかも失った倫子は、自分に残された唯一のもの、料理と向き合います。料理をしながら自分を見つめ、料理を通して人とふれあっていくうちに、倫子は生きる喜びを見つけていくのです。>
英玲奈 本当に、この中に出てくる料理が、どれをとっても美味しそうで、食材もいろんなものが出てきましたけれども、実際に小川さんは料理が得意なんですか。
小川 私も好きでよく料理はしてるんですけども。この本を出してから、「全部作ったんですか」って……。
英玲奈 気になりますよね。
N 物語で重要な役割を果たしている料理のメニューは、実際に小川さんが食べて感動したものや、自分でもふだんから作っているものだとか。その中でも英玲奈ちゃんのお気に入りは……。>
英玲奈 この中に出てくる「ジュテームスープ」というスープがありましたが、それは恋がかなうんですよね。
小川 はい。
英玲奈 ちょっ今、力が入ったんですけども。
小川 実際に作っているもので、よく知っているものを入れたいなというのがあって……。
英玲奈 じゃあ、ジュテームスープ、小川さんは作られたことがあるんですか。
小川 ジュテームスープという名前では作ってはいないんですけども……。
英玲奈 お野菜のスープ。
小川 はい。ポタージュはよく作りますね。
N もしかしたら、あなたの恋もかなうかも。春のジュテームスープの作り方を大公開。材料は旬にあわせて、クレソンや空豆など春野菜がいっぱい。まず、スープの味を決める煮汁を用意。豆をグツグツと1時間煮込みます。その間に、具材を下ごしらえ。>
英玲奈 糸さんは、料理するときに、その時の旬というものを大切にするんですか。
小川 そうですね。その時期時期で、八百屋さんに一番安く並んでいるものが旬なので、そういうのをよく使ってます。……(鍋で野菜を炒めながら)火の通りにくい野菜から入れるようにしています。
英玲奈 葉物は入っていませんものね。
小川 葉物はすぐ火が通るので、ギリギリにいれて。
N 野菜に火が通ったところで、煮豆、先ほどの豆の煮汁、ローリエ、タイムを加え、弱火でコトコト1時間。最後に葉物。クレソンとキャベツの葉を入れたら火を消して粗熱をとります。ここで、ローリエとタイムを取り除き、水を加えたら、塩とバターで味を調えます。ハンディミキサーで実を細かくして火が通れば、春をたっぷり詰め込んだ「食堂かたつむりジュテームスープ」のできあがり。>
英玲奈 (ひと匙口に入れて)あっ、美味しい! 辛みのあるクレソンがどうなっているかと思ったら、香りに変化して。
小川 まろやかになって。
英玲奈 これは、いろんな栄養があって、身体に良さそうですね。
小川 お豆のだしが出てて、それで本当に野菜だけなので、バターは入っていますけども、そういうのを入れるだけで、身体にスッとなじむ、美味しいものができると思います。
英玲奈 今後は、どういう作品を書きたいんですか。
小川 1作1作、心を込めて。『食堂かたつむり』もそうなんですけども、広い意味でも実用書のような物語、読んだ人が、読んでよかったなあって思えたり、何か、その人が生きていく上でプラスになれるような、そういう作品を書いていけたらいいなあって思っています。


<スタジオ>
優香 うーん。ジュテームスープ、美味しそうでしたね。私も、この本、大好きなんですけども。なんか、そのままだなっていうか、ホンワカした雰囲気が、とてもピッタリだなって思ったんですが、えみちゃんどうでした。
はしの 私も、イメージ通りの感じで、本当に食堂とか作ってもらいたいですよね。
優香 ねえ、食べたいですよね。
はしの 優しいお料理を作ってくれそうな雰囲気の方ですよね。
優香 松田さん、いかがでしたか。
松田 ロケにおつきあいしたんですけども、本当に素敵な人で。あと、創作ノートを見せていただいたんですね。すると、想像力を刺激するような単語やフレーズが並んでて、あ、こういう言葉を繋げていって、ああいう物語ができるんだなあっていうことが面白かったですけどね。それと、「小川糸」ってペンネームですけども、糸って、それだけだと柔らかいですよね。でも、それを針に通して縫っていく、そうすると柔らかい縫い物ができる。だから、針があるんだ、要するに、堅いもの、鋭いものが優しさの中にあるんだというメッセージ、まさに『食堂かたつむり』のテーマだなあって思ったんですけどね。
谷原 ぼくも、実は、昨日の夜読んだんですけども。女性に受けているということで、読んでみたら、文体がとても簡潔で、男性にも決して読みづらい本ではなくて。光と影とか、喜びと悲しみとか、対照的なものがギュッと入って、さっきのジュテームスープみたいにグシャグシャグシャってなってる感じで……。ぼく、読み終わったのが1時ぐらいだったんですけども、一人でビールを飲みたくなって。何か、食べたり飲んだりしたくなるような……。
松田 ジュテームスープがあればよかったですね。美味しかったですよ、すごく。
谷原 次回作も期待したいと思います。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.04.12)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.4.12)

『流星の絆』と「特集・大宮エリー『生きるコント』」


<BOOKニュース*「本屋大賞2008」発表!>
◎伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮社)



4月8日、全国の書店員1000人が、「いま、一番売りたい本」を選ぶ「本屋大賞2008」の発表がありました。その表彰式の模様をお送りしました。受賞者の伊坂さんの挨拶から、以下の言葉が紹介されました。
伊坂 後になって、あんな奴選ばなきゃよかったなあとか言われないように、とりあえず、もう少し頑張りたいと思います。>
谷原 今年、伊坂さんが本屋大賞を受賞した一番の理由といえば。
松田 本屋大賞は今回で5回なんですが、5回ともノミネートされたのは伊坂さんだけなんですね。毎回、ベスト5に入っていて、今回初めて受賞ということになったんですね。書店員さんからも「伊坂作品の中では最高傑作だ」という熱いメッセージを贈られていますし、これまでの受賞作よりも部数をどれだけ伸ばしていくか期待したいですね。
谷原 ぼくは映画は観たことあるんですが、本はまだなので、是非読んでみたいですね。
松田 はい。面白いですよ。


<特集・大宮エリー『生きるコント』>
◎大宮エリー『生きるコント』(文藝春秋)



大宮エリーさん。1975年大阪生まれ。映画監督・脚本家・放送作家。東京大学薬学部卒業後、電通に入社。06年、退社してフリーに。NHK「サラリーマンNEO」「エル・ポポラッチがゆく!!」、映画「海でのはなし。」など、話題作を次々と手がけ、多数のヒットCMを生み出す傍ら、スピッツ、山崎まさよしのMVも手がける。5月には「GOD DOCTOR」で舞台初演出に挑戦。幅広い分野にわたる活躍で、いま注目されている彼女の「週刊文春」連載エッセイが刊行されました。毎日、真面目に生きているつもりなのに、なぜか、すべてがコントになってしまう人生。吉本芸人もびっくり、天然系笑いの女王エリーさんにインタビューしました。彼女には、芸能人のお友達もいっぱい。お友達を代表してオスギさんと小泉今日子さんにもコメントをいただきました。


<今週の松田チョイス>
◎東野圭吾『流星の絆』(講談社)



松田 東野圭吾さんの最新ミステリー『流星の絆』です。
N 東野圭吾の感動のミステリー『流星の絆』。幼くして、両親を惨殺された功一、泰輔、静奈の三兄妹。14年後、偶然出会ったある人物を真犯人と確信。緻密な復讐計画を着実に実行に移していく。しかし、そこに起こった大きな誤算。妹の静奈が仇の息子に恋をしてしまったのだ。しだいに崩れていく、彼らの計画の行方とは。>
松田 東野さんのミステリー作品というのは、謎解きの面白さもあるんですが、人間心理のきめ細かく描いていて、それがキリキリと読者の胸に迫ってくるんですね。家族だったり、夫婦だったり、恋人だったり、相手を思いやる気持ちが、すごく切々と迫ってくるという作品なんです。この作品でも、親を惨殺された三兄妹が復讐の計画を立てて、着実に進めていくんですけども、妹が仇と思われる男の息子に恋してしまう。その二つの葛藤が、ものすごいサスペンスになっていく。しかし、ラストのクライマックスは、さすがに東野さんだなという見事な終わり方なんですね。それともう一つ、おまけに面白いのは、ハヤシライスが、すごくおいしそうに出てくるので。ハヤシライスがキーになっているんですけども、読んでいると、やたらハヤシライスが食べたくなるという、そういうミステリーでもあります。
谷原 食べたいですよね。ぼくも読んだんですけども、ぼくにとってミステリーの面白さって、道具立てだったり、伏線を読んでいって、どういうオチにもっていくのかっていうのを自分の中で想像しながら読んでいくんですが、それが、この本は、すべてぼくの想像を超えていて、やられたなあという思いが、読み終わった後ありましたね。そして、いっぱいの優しさが詰まった本で、お兄ちゃんの妹への愛とか、いろんな優しさが詰まっています。この中に、ぼく、すっごくやりたい役があります。この役やりたいという。
松田 あの役ですね。
谷原 あの役です。
松田 谷原さんがピッタリだと思います。
谷原 皆さん、是非読んで確かめてみて下さい。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.04.06)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.4.5)

「特集・阿川佐和子『婚約のあとで』」


 <総合ランキング>  (3/24~3/31 有隣堂書店アトレ恵比寿店調べ)
 1位 小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)
 2位 小栗左多里、トニー・ラズロ『ダーリンは外国人 with BABY』(メディアファクトリー)
 3位 小宮一慶『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 4位 福田健『女性は「話し方」で9割変わる』(経済界)
 5位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 6位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 7位 大庭史榔『1分骨盤ダイエット』(三笠書房)
 8位 勝間和代『勝間和代のインディペンデントな生き方 実践編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 9位 『はたらきたい ほぼ日の就職論』(東京糸井重事務所)
10位 中野明海『大人の赤ちゃん肌メイク Make-up book』(扶桑社)
優香 哲夫さん、『食堂かたつむり』1位ですね。
松田 やりましたね。小川糸さんに登場していただいて、特集を組むことになっていますので、是非楽しみにしてください。
優香 楽しみです。


<特集・阿川佐和子『婚約のあとで』>
◎阿川佐和子『婚約のあとで』(新潮社)



<VTR>
金田美香 今回、私が阿川さんにお会いするためにやってきたのは軽井沢です。こちらに阿川さんの別荘があるということなので、うかがってみまーす。
N 冬の名残をとどめる軽井沢。明治大正の頃から作家・文豪に愛され、多くの名作がここから生まれました。>
金田 こんにちわー。
阿川 まあ、ようこそ。はるばるいらっしゃいました。
金田 はじめまして。
N 鮮やかな春の装いで阿川佐和子さんのご登場。>
金田 目の前に浅間山が見えるんですね。
阿川 いいでしょう。借景でね。
金田 いい景色です。
阿川 ちょうど正面に見えるというのが気に入ったみたいで、父が、この土地を買って小屋を建てたのが40年前ぐらいなんですけどね。
N 作家である阿川弘之さんが愛した、この別荘は、佐和子さんも子どもの頃、よく訪れていたのだとか。今では、お父様から引き継ぎ、大事に使っているこの場は、大切な執筆場所でもあります。>
金田 こちらで執筆されたりもするんですか。
阿川 そうですね。いまや、私の持ち物でございますから。東京だと、いろんな雑事なんかで気が散ると、「よし、この1週間は山に籠もる」なんていうときには、こっちに来て……。小説を書く時って、2~3日かかるんですよね。「よし書ける」っていう風に思うまで。
N そんな阿川さんの新作が『婚約のあとで』。主人公の波は、29歳にして、心に決めた人との婚約を発表。ところが、飛行機で偶然隣に居合わせた老人から思いがけない言葉を告げられる。「もったいないよ、急いで結婚するのは」。そこから、決めたはずの波の心に波紋が広がっていく。本当にこの人でいいのか、どこがよくて婚約したのか。周りを見れば、許されぬ恋に走る妹、男を踏み台にのし上がる「都合のいい女」、7年前の夫の浮気を心に刻み続ける主婦。この作品は、性格も、生きる世界も違う7人の女性達が入れ替わり登場し、それぞれに違う恋愛のかたちが描かれる。>
金田 私も読ませていただいたんですけども、私には、共感というよりは、信じたくないようなという部分もあり。まだ夢を見ていることが大きいので。
阿川 どうなりたいの?
金田 常にラブラブで……。
阿川 ラブラブのままで結婚して、結婚後もラブラブのまま生きていきたい。
金田 という夢はあります。
阿川 わたしも若い頃は、そう思っていましたね。
N 「堂々と公表できない関係なんて、今幸せだったとしても、いずれつらくなるだけ」「好きな男のそばにいたいなら、その人に合わせて生きていく」。この物語では、人によって違う恋愛との向き合い方が描かれます。>
金田 「恋愛感情のない結婚はしたくない」というのは、うんうんと思いました。
阿川 それはそうだったのよ。それが失敗で結婚できなかったから、そこそこ妥協した方がいいかもしれないわね。
金田 これだけ、いろいろな、7人もの恋愛のパターンというか、全部違うじゃないですか。やっぱり、恋多き女性しか、こんなことは書けないのかなあと。
阿川 やっぱ、そう思う。だれもそう思ってくれないんですよ。かつて渡辺淳一さんはね、「恋愛小説はすべて経験しなければ書けないものなんだ」って。「へえー」って言ったことがあるけど、そうはいきませんよ。だから、いろんな友だちとのお喋りなんかの場面で、ちょっと印象に残る話や、つらい悩み事の告白も、頭の中に残っている、ちょっとひっかかったエピソードを集合させて、「全部出てこい」っていって、これをこの話にいれてみようかなとか、そういう風にかき集めて作ったんですね。
N 登場する女性達が、自分の人生を歩もうとする反面、男性達は、どこか頼りないタイプばかり。>
阿川 意外に、ダメ男好きなのね、わたくし。ちょっと欠陥商品みたいな男だけども、憎めないっていう人は傾向としては好きですね。
金田 阿川さんが思う、いい男の見分け方というか……。
阿川 そんなものできたら、この歳まで一人でいませんよ。でもね、いま「この人素敵な人だなあ」って思う人に、もし20代の頃に会ってたら、素敵と思っただろうかというと、全然思わなかっただろうっていう人なのね。私にとっては、人間関係を大事に思う人、それから、相手が誰であろうと、地位とかで人を見ない人は大事だなあって思ったり、後は、つらかったり、くらーい空気になったときに、ちょこっとユーモラスな部分をもって余裕が持てる人って偉いなあって。すると、顔じゃないわよ。
金田 そうですかね。お父様の阿川弘之さんも、ユーモアは大事だと。
阿川 ねえ、父は口ばっかりなんですよ。
金田 佐和子さんの本も読まれているとおっしゃっていたんですが。
阿川 なんか、読んだらしいですよ。
金田 なんておっしゃっていたんですか。
阿川 言いたくないですよ。やっぱりね、父親が娘の恋愛小説を読むっていうのは、相当照れがあると思うんですよ。第一声が「まあ、よくこんな長いものを書いたもんだ」と言って、「どこまで経験した話か知らないが」って。だって、小説家なんだから、そんなこと……。「これはお前の経験か」という質問自体がおかしいと思うのに、どっか疑ってんのね。
N 「女性ってのはね、今が大事だから。(中略)未来の夢を語るより、現在を満足させればその方が安定する」……思わず、なるほどと肯いてしまう一節が小説の随所に。その背景には、数々のインタビューをこなしてきた阿川さんならではの出会いに秘密がありました。>
阿川 例えば、1章で波のお父さんに「人生は、二者択一の繰り返しだ」と言わせたんですが、あれはね、中国のチャン・イーモウ監督、「初恋の来た道」という映画を作った監督にインタビューに行った時に、監督がおっしゃった言葉なんですね。チャン・イーモウ監督は中国で貧しい、すごく限られた社会に閉じこめられてて、大学を卒業していれば、なにかの職にありつけるだろう、という動機で、映画大学に入り、たまたま映画監督になり、世界的な映画監督として認められるようになったっていうんです。で、監督は「人生ってそんなものじゃないかと思うんです」、つまり、自分の目の前に突きつけられた二股の道のどっちを行くか、ということを一つずつ、例えば、右に行くと怖いイヌがいそうだからやめておこうとか、左に行けば可愛い女の子がいるから行ってみようとか、そういう不純な動機も含めて、一所懸命に考えて、どっちかの道を選ぶことを繰り返し繰り返し積み重ねていって、最終的に、自分の思ってもないところにたどり着いたとしても、それもまた自分が選んできた人生だと思うんです、って。私自身も、本当はお嫁さんに行くはずだったのに、なんだかちっとも決められないまま、何になりたいか決められない人間はダメな人間か、というコンプレックスをもってたんです。でも、目の前のことをちゃんと誠意を持って選んでいれば、いつか道は開けるという考え方で、なんか救われた気がして。あっ、高邁な目標とか夢とかをもたなくっても、いいんじゃないかなって思った、その時の気持ちを、波のお父さんに託してみたんですけどね。
N 最新作『婚約のあとで』が話題になっている阿川佐和子さん。この作品に託したのは、今を懸命に生きる女性へのエールでした。>
阿川 私は、どの道を選んだ女性が偉くて、どの道を選んだ人がちょっとマイナスだなんていうことはないと思うんですよ。専業主婦だろうとバリバリと仕事をやろうと、年取って新しい恋人が出来ようと、全部それぞれの不満も抱え、悩みも抱え、幸せももってると思うから、みんなそれぞれなんだっていうことを最終的には思ってはいますね。なんか、ささやかな喜びで明日も元気に生きていけるって、みんなちょこちょこっと思ってるっていうこと。かろうじて伝えたかったと言えば、そういうことかしらね。


<スタジオ>
谷原 松田さん、この阿川さんの新作『婚約のあとで』の感想を一言で言うと?
松田 面白くて奥が深い、最高の恋愛小説だと思いますね。まずね、構成が面白いんですよ。オムニバスなんですけども、主人公の視点で書かれているかと思うと、次には、ほんの脇役の視点だったりして、いろんな角度から恋愛に光を当てていくんで、恋愛をめぐる人間関係とか心理がきめ細かく、複雑に描かれているという面白い構成になっているんですね。
優香 奥が深いんですね。
松田 単に恋のときめきとか喜びだけじゃなくて、嫉妬とか裏切りとかも描いているんですけども、そういうビターテイストも含めて、すごく美味しい味わいになっているという、本当に最高の恋愛小説なんだと思いましたね。
谷原 阿川さんのような素敵な大人を目指したいですね。

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