松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.03.29)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.29)

『新世界より』と「特集・海堂尊『ジーン・ワルツ』」


<小説ランキング>(3/17~3/23 紀伊國屋書店新宿本店調べ)
 1位 東野圭吾『流星の絆』(講談社)
 2位 海堂尊『ジーン・ワルツ』(新潮社)
 3位 小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)
 4位 川上未映子『乳と卵』(文藝春秋)
 5位 桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)
 6位 万城目学『鹿男あをによし』(幻冬舎)
 7位 和田竜『のぼうの城』(小学館)
 8位 貴志祐介『狐火の家』(角川書店)
 9位 永井路子『岩倉具視』(文藝春秋)
10位 司城志朗『相棒』(小学館)
谷原 松田さん、「松チョイ」で特集しました2冊がいきなり7位と3位。ぼくが紹介した『のぼうの城』が7位で、優香ちゃんが紹介した『食堂かたつむり』が3位。
松田 本当に嬉しいですね。どっちも素晴らしい作品なので、是非読んでほしいですよね。
優香 えみちゃんも読んだんですよね。
はしの そうなんですよ。私も、先週の優香ちゃんの話を聞いて、すごい読みたくなって読んだんです。
優香 どうでした。
はしの 飛行機の中で読んだんで、後半、涙をこらえるのが大変。閉じては上向いて(上を向いて目をパチパチさせる)、また(本を)開けて、閉じては上を向いてと繰り返して。
松田 涙がこぼれてこないように。
はしの でも、作者の方が作詞家さんということがすごくわかる、スルーッと入ってくる文章で面白かったです。
優香 また後で語り合いましょう。
谷原 『のぼうの城』も面白いですよ。
はしの わかりました。


<特集・海堂尊『ジーン・ワルツ』>
◎海堂尊『ジーン・ワルツ』(新潮社)



あの『チーム・バチスタの栄光』シリーズの作者で現役医師でもある海堂尊さんが新作を発表しました。それが産婦人科を舞台にした『ジーン・ワルツ』。主人公は、美貌の産婦人科医・曾根崎理恵、人呼んで「冷徹な魔女(クール・ウイッチ)」。人工授精のエキスパートである彼女のもとに、それぞれの事情を抱える五人の女が集まった。神の領域を脅かす生殖医療と、人の手の及ばぬ遺伝子の悪戯がせめぎ合う。彼女は人のいのちをどこまで操ることができるのか? 『チーム・バチスタの栄光』を超えるドラマティックな衝撃があなたを襲う! 現役医師作家が日本最大の医療問題に挑んだ衝撃作! 作者の海堂さんを訪ね、この作品を書いた意図などを伺い、病理医としての素顔にも迫りました。
谷原 松田さん、海堂さんの新作『ジーン・ワルツ』はいかがですか?
松田 お医者さんなので、最先端の医療知識とか生命科学、遺伝子の世界の話とかがすごく面白く書かれているんですね。それだけじゃなくて、キャラクターも強烈で、『チーム・バチスタ』もそうでしたが、キャラクターが面白く動いてくれるので、ミステリーとしても楽しむことができる作品だと思います。


<今週の松田チョイス>
◎貴志祐介『新世界より(上・下)』(講談社)



松田 壮大なスケールの未来物語、貴志祐介さんの『新世界より』です。
 『黒い家』、『硝子のハンマー』など発表する作品が常に話題になる作家貴志祐介。彼が3年半の歳月をかけたSFエンタテインメントが『新世界より』。科学技術の衰退した1000年後の日本。そこは、「呪力」と呼ばれる超能力が支配する徹底した管理社会だった。何も知らされずに育った子供達に、想像を絶する悪夢が襲いかかる。博学な作者が、生物学、動物行動学などを駆使し、想像力の限りを尽くして描いた壮大な未来絵巻。>
松田 これは、千年後の世界でですね、ある女性が、それから千年後の人類に向けてある手紙を書いているという、めちゃくちゃスケールの大きい話なんです。
谷原 二千年後のことを見越して書いているという。
松田 そうなんですね。その女性が子どもの時代に、友だちと一緒に夏休みに冒険旅行をして、町の外に出てはいけないと言われているのに出て行って、すごい世界に、衝撃的な出来事に出会うんです。それから、ほんとうに血生臭い、巨大なスペクタクルが次々と起こっていって、最後には、なぜ、そういう世界ができていったのかということがわかるんですけども。また、未来生物、不思議な生物がいろいろ出てくるんですが、その奇妙な生態も面白いんですね。戦いのシーンもすごく迫力があります。で、千年後の未来物語というと、いかにも絵空事のように思われがちですが、今の社会にある生命観とか悪とか、そういうものを突き詰めていくと、こういう社会になっても、こういう世界になっても不思議ではないなと思わせて、リアルに迫ってくる、すごい迫力のある作品ですね。
谷原 松田さん、かなり分厚いですよね、この本。
松田 はい、1000ページ以上あります。いやあもう、ハラハラドキドキするんで、ページが減っていくのがもったいないぐらいで、「もう終わっちゃうのか」という感じで、迫力ありますね。
谷原 ぼくも、是非読んでみたくなりました。
松田 谷原さんは大好きだと思いますよ。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.03.22)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.22)

『食堂かたつむり』と「特集・向田邦子」


<特集・向田邦子>
◎向田和子『向田邦子の青春』(文春文庫)
◎向田和子『かけがえのない贈り物』(文春文庫)
◎向田和子『向田邦子の遺言』(文春文庫)
◎向田和子『向田邦子暮らしの愉しみ』(新潮社・トンボの本)
古き良き町並みを残しつつも、新しく生まれ変わろうとしている街・赤坂。この街には、作家・向田邦子さんが似合っていました。今から約40年前、若き日の向田邦子さんは、赤坂にあるTBSの旧社屋でテレビドラマの脚本作りに奮闘していました。そして、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」など、数々の名作を生み出し、高視聴率を獲得して「ゴールデンアワーのゴッドマザー」と呼ばれていました。その後、1980年に『思い出トランプ』に収録された短編三作で直木賞を受賞し、小説・エッセイともに髙い評価を受ける人気作家となりましたが、その翌年、飛行機事故で帰らぬ人となりました。そんな向田さんの仕事を支えていた妹の和子さんと共に、向田さんの仕事の数々を振り返り、とりわけTBSとの関わり、そしてその素顔などについて伺いました。
谷原 向田さんのホームドラマは、本当に血の通った人間と人間とのぶつかりあいとかやりとりとかがあったと思うのですが、今も愛される向田さんの作品の魅力といいいますと。
松田 作家としても、エッセイや小説は読み継がれていますが、いま読んでもみずみずしいんですね。書かれたばっかりみたいな感じで。ささやかな描写とか会話とか、一つ一つないがしろにしてなくて、それがぼくたちの胸に迫ってくるんだと思うんです。たぶんそれは、一つには、赤坂という街を媒介にして、才能豊かな放送人たちと交流して、美味しいものを食べて、仕事をしたということが、この世界をつくってきたんだと思いますね。


<今週の松田チョイス>
◎小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)



松田 最近、こんなに心を揺さぶられた本はありません! 小川糸さんの小説『食堂かたつむり』です。
N 作詞家として音楽制作に関わってきた小川糸さんのデビュー作『食堂かたつむり』。倫子が、勤めていた料理店から帰ると、恋人ごと部屋が空っぽ。あまりのショックに声を失った倫子は、ふるさとに帰って、小さな食堂を始める。お客は一日に一組だけ。いつしか、ここで食事をすると、願いが叶うという噂が広まり、店は軌道にのるのだが、倫子はある事実を知ることになる。>
松田 こういう風にお話を要約すると、料理をめぐる心温まるお話という感じなんです。本当に、主人公が心を込めてつくる料理が美味しそうなんですね。それだけでも、読んでいてとっても豊かな気持ちになれるんですけども、この物語はそれだけでは終わらないで、あることをきっかけにして、本当に衝撃的な出来事に直面するんですね。まあ、比喩的に言うと、メリーゴーラウンドか観覧車に乗っていたつもりが、突然、ジェットコースターに変わっているということになるんです。ただ、最後まで読むと、本当に深い感動があるし、生きてることとか、食べることの本質みたいなものをわからせてくれる、素晴らしい小説だっていうことがわかるんですね。まだ、3月で早いと思われるかもしれませんけども、今年の「ブランチBOOK大賞」の「新人賞」に決めちゃおうかと思っています。
谷原 はやっ。早いですよ。
優香 早いですよね。でも、それぐらい良かったですよ。
谷原 優香ちゃんも読んだんだよね。
優香 はい。先週、谷原さんも号泣したって言ってたじゃないですか、本(『のぼうの城』)を読んで。私も久しぶりに号泣しました。もう、溢れ出てくるんですよ。重松清さん(『その日のまえに』)も大好きで、家族ものってすごく好きで、いつも泣いてたんですけども、それ以来の感動でした。松田さんに、「この本、甘く見てると痛い目にあうよ」と紹介されたんですよ。で、どんなことがあるんだろうって読んでいて、表紙も可愛らしいし、名前も『食堂かたつむり』って可愛らしいし、でも、ほのぼのしてるから、えっ何なんだろう、松田さん、何だったんだろうって思いながら、それも忘れるぐらい入り込んで、どんどん見てったら、バアーって(涙を流すしぐさをして)。母と娘のお話なんで、私にはジーンとドンピシャにはまって……。
松田 読んだ人と話したいんですよ。さっきもね、優香ちゃんと話してて、もっともっと話したいって感じで……。
優香 はい。
松田 みんな読んで話したいなあって思いますね。
優香 えみちゃんにも是非読んでもらいたい。
はしの いま、すっごく読みたくなりました。読みますよ。
優香 谷原さんも、慶太くんも祥太くんも。
谷原 みんなで読んで、語り合いましょう。みなさんも一緒に語り合いましょう。号泣してください。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.03.16)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.15)

『のぼうの城』と「特集・水野敬也『夢をかなえるゾウ』」


 <総合ランキング>  (3/2~3/8 有隣堂書店全店調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 3位 東野圭吾『流星の絆』(講談社)
 4位 堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波書店)
 5位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 6位 西尾維新『零崎曲織の人間人間』(講談社)
 7位 大庭史榔『1分骨盤ダイエット』(三笠書房)
 8位 トルーマン・カポーティ、村上春樹訳『ティファニーで朝食を』(新潮社)
 9位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
10位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)



<BOOKニュース>
◎ルーシー&スティーブン・ホーキング『宇宙への秘密の鍵』(岩崎書店)
あのホーキング博士と娘さんが、子どもたちのために書いたスペース・アドベンチャー。


<特集・水野敬也『夢をかなえるゾウ』>
◎水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)



ベストセラー『ウケる技術』の著者がおくる、愛と感動の自己改革「笑」説。主人公は、「人生を変えよう」と何かを始めるけれど、全部三日坊主に終わってしまうサラリーマン。そういう彼の前に、ある日突然、ゾウの姿をした「ガネーシャ」という神様が現れ、こう言います。自分が出す簡単な課題さえこなしていけば、お前は成功すると……。作者の水野さんは、モテないことを原動力に恋愛マニュアル200冊を読破、さらには就職活動に役立てようと自己啓発本200冊を読破したのですが、どちらでも失敗するというイタい過去がありました。本書では、そんな水野さんが、実際に実践して良かった教えを厳選して、おもしろおかしく紹介しています。100万部に届く勢いで売れているこの本の作者・水野さんの仕事場を直撃、インタビューしました。
谷原 松田さん。この本が一気にブレイクした理由は?
松田 「こうすれば成功する」という本は山ほどあるんですけども、こんなに笑える自己啓発本って初めてだと思うんですね。「ガネーシャ」というゆるーいキャラなんですが、それがいろいろ喋るんですが、すごくインチキくさいんですね。でも、逆に、いろいろ聞いていると面白いから覚えちゃうし、実は、古今東西のいろんな人たちの知恵が詰まっているんですね。それを笑いをまぶして伝えてくれるんですね。タイトルからして、「夢をかなえるゾウ」とダジャレですから、それぐらい気楽な気分でいると、いろんなものが吸収できるということ、ちょっと変わったタイプの面白い本ですね。
谷原 構えずに読めるというわけですね。


<今週の松田チョイス>
◎和田竜『のぼうの城』(小学館)



松田 、血湧き肉躍る戦国絵巻、和田竜さんの『のぼうの城』です。
N まったく新しい時代小説『のぼうの城』。時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が、唯一落とせない城があった。武州・忍城。城主・成田長親は、領民からも「でくの坊」扱いされ、智も仁も勇もないと見られていた。この頼りない城主率いる二千数百の兵は二万の軍勢といかに戦ったのか。実際の史実に大胆な解釈を加えた戦国エンタテインメント小説。>
松田 この城主の長親というキャラクターがものすごく面白いキャラクターなんですね。「のぼう様」、「でくの坊」と呼ばれていて、部下や領民から親しまれている。というよりは、あまりにも頼りないので、支えてあげなきゃしょうがないという気分にさせる、不思議な城主なんです。そこに、豊臣の大軍勢が押し寄せてきて、関東の城はみんな落ちていく。で、弱小な城なんですけども、このお殿様は、なにをとち狂ったのか、「戦おう」って言い出しちゃうわけですよね。そこからが、部下たちの活躍も面白いし、攻める側も攻める側で知恵を使って攻めてくるし、それにスペクタクル・シーンがすごい迫力です。これは、なかなか映画にするのは難しいと思いますが、是非、黒澤明監督が蘇ってきて撮ってほしいと切に思いましたね。
谷原 ぼくも読んだんですけども、のぼうというのが親しまれつつも、バカにされたりしてるじゃないですか。なかに、かぞうという農民が出てくるんですが、忍城が取り囲まれてピンチに陥っているときに、敵方に寝返ってしまって、敵の仕事を手伝っているんですね。でも、ある時、「のぼう」が身を挺して出てきて撃たれるんです。すると、過去にいろんなことがあって侍が嫌いだった、普段は「のぼう」のことを「でくの坊」とバカにしていたかぞうが、実は「のぼう」のことが好きだったんだと気がついて、「よくものぼうを撃ちやがった」と、今度は、また逆に裏切って、それがきっかけで、忍城が唯一落ちない城になるというクライマックスのシーンで、ぼくはボロボロ泣いてしまいました。今年一番の痛快な本でした。皆さん、これは是非、是非読んで下さい。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.03.08)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.8)

「特集・益田ミリ『すーちゃん』」


 <総合ランキング>  (2/25~3/2 三省堂書店全店調べ)
 1位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 ドアラ『ドアラのひみつ』(PHP研究所)
 4位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 5位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
 6位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 7位 山田真哉『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大違い』(光文社)
 8位 勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)
 9位 川上未映子『乳と卵』(文藝春秋)
10位 つつみみか『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波書店)
谷原 松田さん、『女性の品格』がいまだにランキングで1位ということは、どういう層が買っているんですか。
松田 そうですね。今や300万部を超えて『バカの壁』の410万部に追いつくんじゃないかって言われていますけれど。面白いんですけども、新書っていうのは『バカの壁』もそうなんですが、最初は中高年のオジサンが買いだすんですね。それで売れだすと若い人と女性が買いだすんです。ところが『女性の品格』だけは、はじめっから男女比が75対25で変わらないですし、20代、30代、40代、50代、60代、だいたい同じパーセントで、売れ始めたときも今も売れ続けている。だから、まんべんなくいろんな層にズーッと売れ続けているんですね。たぶん、最近テレビなんかに露出なさっていますが、テレビの影響力が効きやすいかたちなんでしょうね。
優香 「ブランチ」にも出ていただきましたしね。
松田 そうですね。


<BOOKニュース>
◎「GLAMOROUS」4月号(講談社)蜷川実花×10人のヌード


<特集・益田ミリ「すーちゃん」>
◎益田ミリ『すーちゃん』(幻冬舎)
◎益田ミリ『結婚しなくていいですか。 すーちゃんの明日』(幻冬舎)



60万部突破の上野千鶴子『おひとりさまの老後』(法研)をはじめ、いま本屋さんで平積みコーナーができているのが女性の生き方を考える本。そんな『おひとりさま……』と並んで、いま、じわじわと独身OLの間で人気上昇中なのが異色の4コマ漫画『結婚しなくていいですか。』。主人公は、お金も美貌も男もいない三十路半ばの「すーちゃん」。「このままおばあさんになって、仕事もお金もなくて、寝たきりになって、頼る人もなかったら」……。ネギが安いと思って買い物をしながら、すーちゃんは考え続ける。「そしたら、あたしの人生は、歩いてきた人生全部が台無しになってしまうの?って考えたら震えてしまうんだ」。漠然とした将来への不安、大逆転のない「ふつう」な日々。やたらポジティブに走らず、悲劇のヒロインにもならず、「これが私だよな」と淡々と思うすーちゃんに共感が集まっています。そんな「すーちゃん」を描く著者益田ミリさんの仕事場にお邪魔して、この本が生まれたきっかけ、日々のネタ集め、この作品を通して伝えたかったことなどを伺いました。
谷原 ほのぼのとした絵と対照的に、主人公のすーちゃんはとても考えているキャラクターなんですね。えみちゃんも読んだんですよね。
はしの 読みました。30代の独身女性の独り言が、悩みとか思いとかが淡々と飄々と描かれていて、「あ、そういうことを思うことっておかしくないんだな。みんな、ポソッと思っているんだなあ」って思える本ですね。
優香 私も読みました。私もホロッとした一人なんですけれども。ほんとに、絵はほのぼのとして可愛いらしい感じなんですけども、言ってることの一つ一つが重みがあって、ジーンと胸に響くんですよね。本当に鈍感になってしまってはいけないことっていうこともいっぱいあるし、そういうことをわからせてもらえたという本で、なんか面白かったです。
はしの 30代の独身女性にも共感してもらえるし、30代の独身男性も同じようなことを思っているのかなあって……。
松田 そうですね、益田さんという人は、そもそも「つぶやき川柳」というものでデビューした人なので、川柳みたいに短い言葉で気持ちなりをピシッと言う感じがよく出ているんですね。だから、一人の時にポツリとつぶやくことに真実があって、みなさん、自分を鏡に映しているような感じで読んでいるんじゃないかなあって思いますね。
優香 共感できるんですね。
谷原 独身じゃありませんが、ぼくも読んでみます。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.03.01)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.1)

『5年3組リョウタ組』と「特集・山口隆」


 <月間コミックランキング>(2008.2/1~2/25 文教堂書店全店調べ)
 1位 岸本斉史『NARUTO―ナルト―』41巻(集英社)
 2位 久保帯人『BLEACH―ブリーチ―』32巻(集英社)
 3位 天野明『家庭教師ヒットマン reborn!』18巻(集英社)
 4位 空知英秋『銀魂』22巻(集英社)
 5位 村田雄介『アイシールド21』28巻(集英社)
 6位 大暮維人『天上天下』18巻(集英社)
 7位 北条司『エンジェル・ハート』25巻(新潮社)
 8位 石川雅之『もやしもん』6巻(講談社)
 9位 羽海野チカ『3月のライオン』1巻(白泉社)
10位 ハロルド作石『BECK』32巻(講談社)
谷原 松田さん、羽海野チカさんの9位にランクインした新しい作品ですが。
松田 『ハチクロ』でデビューして、いきなりブレイクしたという人ですけども、今度は青年コミックなんですね。本当に意欲的な人だなあと思います。読み始めると、孤独な青年と、それを包み込むように見守る三姉妹というお話で、本当に目が離せない。これからどうなるんだろうって、楽しみな作品ですね。


<特集・山口隆『叱り叱られ』>
◎山口隆『叱り叱られ』(幻冬舎)



ニューアルバム「音楽の子供はみな歌う」で、日本語ロックに新しいページを開いたサンボマスター。そのボーカル&ギター、作詞作曲を担当する山口隆。彼の初の本格的対談集『叱り叱られ』が、ついに発売。世代、文化、コミュニティの断絶を音楽は越えていけるのか? ゼロ年代にデビューした山口が山下達郎、大瀧詠一、岡林信康、ムッシュかまやつ、佐野元春、奥田民生という、彼が敬愛する6人の巨星たちに、問い、語り、思考した革命的な音楽論。ツアー真っ最中の山口さんを直撃。全身全霊を注いだライブパフォーマンスの原点となった中学生時代のロック体験、今回の対談で印象に残った言葉などをお聞きしました。


<今週の松田チョイス>
◎石田衣良『5年3組リョウタ組』(角川書店)



松田 テレビ番組のコメンテーターとしても活躍していますし、最近は小説を3作続けて発表しました石田衣良さんの『5年3組リョウタ組』という作品です。
N あの石田衣良さんが、学校社会を鮮やかに切り取った作品、『5年3組リョウタ組』。主人公は熱血でもなく内気でもない、ごく普通の小学校教師、リョウタ先生。問題児童にドキドキ、上司のパワハラには無力感。ペーパーワークに押しつぶされそうになりながら、それでも前向きにぶつかっていく姿が爽やかな感動を誘う学園小説です。>
松田 石田さんは、これまで『4TEEN』とか『池袋ウエストゲートパーク』とか、若者たち、少年たちの群像を鮮やかに描いてきたんですが、今度は、教師の目線で子供たちを描くという、初めての試みなんですね。主役のリョウタ先生というのは、教師ものにありがちな「熱血教師」ではなくて、普通の青年なんですね。茶髪でおしゃれなネックレスをして、教頭先生に注意されたり、合コンを楽しみにしていたりするという先生なんです。そういう先生の前に、いろいろな難問が次々と押し寄せてくるんですけども、迷ったり、つまずいたりしながら、前向きに一生懸命にやっている姿が、すごく感動的なんですね。教育問題というと、すごく大げさに構えちゃうんですが、結局、子どもと普通の目線でつきあうことが大事だということを教えてくれる。そういう作品でもあるんですね。
谷原 なるほど、実は翔太君も読んだとか。
翔太 はい。本当に泣けましたね。熱血ではないんですけども、逆にそれが感情移入とかしやすくて。ほんと、ぼくは本とかあんまり読まないんですが、スラッと読めて、本当に楽しかったなと思いました。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.02.23)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.2.23)

「川上未映子」大特集


<大特集・芥川賞作家・川上未映子>
◎川上未映子『乳と卵』(文藝春秋)



<スタジオ>
谷原 こんなに話題になる新人作家さんの登場はないんじゃないかと思うんですが。美香ちゃん、よろしくお願いします。
金田 はい。実は昨日、その川上さんが注目を浴びた第138回芥川賞の贈呈式がありました。30社以上の報道陣が集まり、ここ数年では飛び抜けて多数の出席者でにぎわっていました。きょうは、その芥川賞作家川上未映子さんを「ブランチ」が独占インタビューします。お仕事場にもお邪魔してたくさんお話を伺ってきました。


<VTR>
金田 どうも、はじめまして。
川上 はじめまして。こんにちわ。
金田 「王様のブランチ」です。遅ればせながら、芥川賞受賞おめでとうございます。(と花束を渡す)
川上 おおきに、ありがとうございます。
N 川上さんと言えばミニスカ、この日は全身シックに統一。>
金田 かっこいいですね。足も細いし。靴は何ですか。
川上 これはプラダ……なんて言うと……。
金田 指輪もテントウムシが……。すごい、ファッション誌から出てきたような。
川上 それは言い過ぎですよ。恥ずかしいですね。
N 自ら「文筆歌手」と名乗る川上未映子さんは、1976年大阪生まれの31歳。実は、小説家としてデビューしてから1年足らず。初小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』がいきなり前回の芥川賞候補に。そして、このたび、第2作の『乳と卵』で見事芥川賞を受賞したシンデレラガール。>
金田 きょうは、川上さんがお好きな場所に。
川上 そうですね、来てみたかった場所というか。
N それは、川上さんが尊敬する明治の作家樋口一葉の記念館。わずか24年という激しくも短い一生を送った一葉。その名作の数々は、晩年の1年あまりの間に書かれ、「奇蹟の14ヵ月」と呼ばれています。ここには、そんな一葉の貴重な直筆原稿や遺品が展示されています。>
川上 「奇蹟の14ヵ月」……。
金田 1年ちょっとで、これだけの作品を……。川上さんも短い間に。
川上 まだ2作しかね、書いてないから。まだ14ヵ月もいってないみたいな感じなんですけども。
金田 まだ1年。
川上 9ヵ月。小説書き始めてからね。
金田 前作もノミネートされて。
川上 あれは、一番ビックリしましたね。
金田 今回、2作目で受賞されたということで。興奮しちゃいましたよ。それを見ていて。
川上 わたしも興奮しました。ありがとうございます。
N 若い一葉が家計を支えた逸話は有名ですが、川上さんは若くして歯科助手や書店員をして家計を助けていました。中には、こんなバイトも……。>
金田 ホステスなんかも経験がおありとか……。
川上 そうでございます。あれも壮絶な職場でしたね。
金田 でも、資料を読んだんですけども、No.1になれたという……。
川上 いやいや、そんなこと言ってない。
金田 でも、そう書いてありましたよ。
川上 こうやってね、話があれ……。でも、一所懸命頑張っていたんですよ。人と人とのつきあいのお仕事だから、どの現場でも基本は同じですよね。
N そんな川上さんが文学に目覚めたきっかけは、誰もが読んでいたあの本。>
金田 もともと文学少女だったんですか。
川上 全然。だって、家族で本を読む人、誰もいないんですよ。あたしの姉なんか、1冊読破したことがないんです。そう、教科書が始まりだったんですよ。国語の教科書、みんなつまらないって言うけど、あれはバリエーション豊かで、絶対読まないという本も入っているでしょう。だからね、結構、重宝してましたね。
N 作家デビューのきっかけは、自らのアルバム宣伝のために始めたブログでした。これが関係者の目にとまり、エッセイを依頼されたのです。>
金田 やっぱり、書くことが好きだったとか。
川上 書くのはね、自分がね、うまく書けるとか、ちゃんと書けるとかの自信はあったかといえば、なかったですね。むしろ、歌の方が「ちょっとうまいんじゃないか」みたいな気持ちでやったのが、あまりパッとしなかったから、もう、あまりそうこうことはどうでもいいんだということで、好きなものを一生懸命やってみようと思って。
N そして、このたび、2作目の『乳と卵』で見事芥川賞を受賞。
池澤夏樹(芥川賞選考委員) 声のある文体であるということ。つまり、目で読んでいて音が響いてくる、そういう仕掛けをちゃんと作り込んでいるという意味では、やはり歌手なのかなと思います。
N 樋口一葉にも似た、息の長いリズム感のある文体。それを生み出す、畳みかけるような大阪弁が特徴的な『乳と卵』。物語は、大阪から姉の巻子とその娘の緑子が東京のわたしのアパートへ訪ねてくるところから始まる。姉の上京の目的は豊胸手術を受けること。そんな母に反発して、小学校6年生の緑子は一切口をきかない。しかし、娘のノートには、思春期ならではの悩み、そして母への思いが書かれていた。母と娘、そしてわたし。女性3人の体と生理を巡り揺れる心。だれもがもつ体を題材に、女性の存在意味を問いかけます。>
川上 人間に興味があるんですよ。そして、たまたま人間について書こうと思ったら、わたしが女の属性をもっていて、で女の側からのアプローチになってしまった。人間の体と心みたいなもの、これも簡単に二つ分けれないんですけども、そのものを一個の角度から書いてみたいなという気持ちでスタートしているんですね。
金田 それが豊胸手術というものに繋がっていったんですか。
川上 そう。どういうわけか。
金田 川上さん自身も興味があって。
川上 ありましたね。
金田 すごく詳しく書かれていたから。
川上 わたしね、町を歩いていても、男には本当に興味がないんですよ。「好きな男性のタイプは」と言われても、ないです、タイプが。でもね、女の人は見てしまいますよね。だから、化粧品売り場なんて大好きなんですよ。女の人がキラキラしてるでしょう。ああいうのいいですよね。女の人……美しさの基準てどこにあるんでしょうね。


N 壁一面が本で埋め尽くされた部屋。ここが芥川賞作家川上未映子さんの仕事場。デスクの前にはメモがびっしり。>
金田 すごい貼ってある。これは歌詞ですか。ちょっと見ただけでは、どんな内容なのか……。<N 「署名添加」「未知と表面」「柔軟性の幸運」……果たしてこれは……。>
川上 全然意味はないんです。気に入ったフレーズみたいなのがパッと出てくるんですよ。それを書く時期があって、書いたのを前に貼っておくと、いい雰囲気になって、なんか作品書くときに、いい感じに出てくる。目にはいるようにしてると落ち着くんですよ。模様みたいな感じですね。好きな模様とか、柄とか。柄みたいな感じで書きます。
金田 言葉が柄。
N 小説を書き始めるまで、少なくとも数ヶ月の助走期間が必要だという川上さん。>
川上 別に、小説を書くから、これを考えようじゃなくて、たとえば、「好き」という気持ちはどういうことなんやろか。いいとか悪いとかね。善悪とかね。なんとなく、そういうことをご飯を食べながらとか考えるんですよ。そういうものが常にふわふわふわっと漂ってて、小説を書くときに、なんか、全部が同時にあるのが、なんとなくうまくまとまってくれる瞬間というのがあって、キターッと思った時にバーッと書く。
金田 降りてきたというか。
川上 そんな神々しいもんじゃなくて、なんとなくペロンと来てダッていう感じ。ペロリンと来て……。
金田 芥川賞受賞ですか。
川上 結果的にはね。
N そんな川上作品の特徴が、『わたくし率 イン 歯ー、または世界』など、一風変わった長いタイトル。>
川上 やっぱり、書き上がった内容を、タイトルは1行やわと、1行で表そうと思って欲張っちゃうんですよ。だから、よしんば中身を読んでくれなくても、タイトルで読んだ気持ちになって欲しいぐらいな気持ちがあるんですよ。
N 実は、今回も長いタイトルを考えていたそうです。>
川上 悪い癖が出て、長ったらしいタイトルを考えていたんですよ。
金田 ちなみに、どういう風に長いタイトルになってしまったんですか。
川上 それ言うんですか。「胸と卵と毛の会議」みたいなね。
金田 「毛」も入っていたんですか。
川上 「毛」も入っていたんですよね。まあ、「乳と卵」にしてよかったですよ。
N そんな『乳と卵』で、今回、高く評価されたリズム感のある大阪弁。>
川上 大阪生まれで大阪育ちで、自分で大阪弁をしゃべろうというのは、日本語と同じで選べなかったんですよね。なんとなく、自然にこのイントネーション。だから、今回、人間の体っていうのは、生まれたときから、もとからあって選べないことじゃないですか。そこで、選ばないものを同じ要素として、登場人物たちには大阪弁をしゃべらしてみた。もう、勝手な自己満足なんですけども。
N 大阪弁のリズムで、この文章を味わってみたい。そこで……。>
金田 大阪弁で読んでもらっていいですか。
川上 そうね。
N 芥川賞作家川上未映子さん自らが、受賞作の一節を大阪弁で朗読。>
川上 「あたしの手は動く、足も動く、動かしかたなんかわかってないのに、色々なところが動かせることは不思議。……(以下略)」。
金田 すごーい。なんだか日記を読んでもらっているような。
川上 心地よかったですか。
金田 はい。
川上 じゃあ、ズーッと読みましょうか。
金田 (笑)。
川上 それは迷惑で。
金田 これからも、たくさんの作品を書かれていくと思うんですけども……。
川上 (しょげて見せて)もうテンション低い。締め切りがパーンと浮かんで。
金田 これから、どんな作品を……。
川上 まったくわからないですね。
金田 まったくわからない。
川上 ちょっとはわかるけども。
金田 まだ、今は助走中ですか。
川上 うん。メモをいっぱい取ってる最中。
金田 あの、歌手としては……。
川上 ライブ。執筆とは全然違うので、ライブはこれまでと同じで、1年に4~5回やってるんですけども、それはやろうと思っています。3月にもやろうかなって思っていて。
金田 お子さんも。
川上 えっ。
金田 ご結婚されているということで。
川上 結婚とお子さんは別じゃないですか。三食ご飯を作り、部屋を掃除し、素敵な環境を整えて、1日6時間執筆みたいなのが、本当に憧れですね。
金田 それはできそうですか。
川上 たぶん無理。


<スタジオ>
谷原 とっても感覚的な方なんですけども、それをコントロールする理路整然とした部分をもってらっしゃって、独特ですね。
優香 素敵ですね。もう、座り方がずっと色っぽいですね。女性としても素敵だし、お話ししたくなる、一緒に相談して、いろんな話を聞いて、アドバイスをもらいたいなって。すごく面白い方だなあって思いましたし。やっぱり、感性が、バッと降りてくるとか、文章を書く人って素晴らしいなって思いますね。
谷原 そう、無から何かを生み出すんですからね。美香ちゃん、独特の雰囲気がある方で。
金田 VTRをご覧の通り、本当に気さくでさばさばしていて、会った瞬間からお友だちになったような気分にさせてくれる方で。また、本を読むと、これまた独特で、読んでいて会話しているかのようなリズム感があって。最初は慣れないんですけども、読み終わると、アッという間だったんですよね。やっぱり、文字が柄に見えるとか、鋭い感性をお持ちになっていて、終始、取材の間中、驚きの連続でした。
谷原 松田さんもこのロケの現場に行かれたそうですね。
松田 はい、とっても楽しかったですね。昨日、贈呈式でもお目にかかったんですが。会う度に魅力に圧倒されます。すごく哲学書もたくさん読んでまして、それがああいう風に、知的な会話に生きてくるんですね。本当に知的でチャーミングで素敵な女性だなって思いましたね。
谷原 作品についてはいかがですか。
松田 『乳と卵』という作品は、関西弁の、大阪弁の語りが気持ちいいんですけども、そして、ユニークなキャラクターがたくさん出てきて、そこに哲学的な、「人間の体ってなんだろう」というテーマを、面白く、笑いを絡めながら読ませてくれるという、非常に楽しい作品ですね。
谷原 なんか、優しく包み込んでくれる不思議な女性でしたね。「胸と卵と毛の会議」、ぼくも読んでみたいと思います。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.02.17)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.2.16)

『セ・シ・ボン』と「勝間和代」


 <総合ランキング> (2/4~10 ブックファースト渋谷文化通り店調べ)
 1位 勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)
 2位 小宮一慶『「1秒」で財務諸表を読む方法』(東洋経済新報社)
 3位 大谷和利『iPodをつくった男』(アスキー)
 4位 勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)
 5位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)


<BOOKニュース>
◎今井広美『友輝へ お願い、ママにキスして』(竹書房)


<特集・勝間和代>
◎勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)



◎勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)

本業は公認会計士。書く本はことごとくベストセラーになる勝間和代さん。最新刊の『効率が10倍アップする新・知的生産術』は現在、20万部を突破しています。子育てと仕事との両立のために編み出したという、徹底的に無駄を省いた勝間流の知的生産術とは? 情報をいかに取り入れ、どうアウトプットするか。仕事上の通信、ネットの利用法、読書の仕方、人とのつき合い方まで、勝間さんに密着取材し、その極意を教えていただきました。


<今週の松田チョイス>
◎平安寿子『セ・シ・ボン』(筑摩書房)



松田 いま、笑える小説を書かせたら、この人の右に出る人はいないと思います。平安寿子さんの最新作『セ・シ・ボン』です。
N 「その時の私は生き迷っていた。これは、およそ30年目、著者である平さんが一念発起してパリ留学したときのことを綴った私小説的エッセイ。期待に胸ふくらませる、26歳女子。しかし、花の都パリで待っていたのは、風変わりな人々、おかしな出来事の数々だった。笑って、あきれて、やがてしみじみとする、調子っぱずれの留学物語。>
松田 これは、小説のように面白いエッセイなんですけども、特別に大きな事件が起こるわけでも、大恋愛に遭遇するわけでもないんです。でも、本当に個性豊かな人物が次々に出てきて、含蓄のある名言を吐いてくれるんです。主人公のタイコというのは、そういう人たちの間でうろうろしているんですが、時間がたってみると、ものすごく貴重ないい人生経験をしたなということがわかるんです。だから、読んでいると、笑えて、しみじみとして、最後はちょっとホロリとするという、いいお話なんですね。一言で読感を言うと、「セ・シ・ボン」(そりゃもう素敵!)という感じ、まさにそういう本です。
谷原 マヤリンも読んだんだよね。
小林 本の冒頭で、「女の黄金時代は、なんといっても三十代ね」という言葉が出てくるんですけども、そこで心を鷲掴みにされてしまって、いかに30代が素晴らしいか、パワフルかということが書かれていて、自分自身も30代がすごく楽しみになりました。あと、わたし、あんまりお酒は飲めないんですけども、平さんと一緒にお酒を飲みながら語ってほしいなあって思えるような……。
松田 人生経験をね……。
小林 そうなんですよ。
松田 そういう意味では、いろんなことを楽しく教えてくれる本だと思いますね。
谷原 男のパワフルな黄金期はいつなんでしょうか。読んでみたいと思います。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.02.10)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.2.9)

『いのちのパレード』と「大野智『FREESTYLE』」


<総合ランキング>  (1/28~2/3 三省堂書店全店調べ)
 1位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 2位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
 3位 阿川弘之『大人の見識』(新潮社)
 4位 勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)
 5位 平岩弓枝『新・御宿かわせみ』(文藝春秋)
 6位 桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)
 7位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 8位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 9位 城山三郎『そうか、もう君はいないのか』(新潮社)
10位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)


<特集・大野智『FREESTYLE』>
◎大野智『FREESTYLE』(角川書店)



「嵐」の大野智さんが10年にわたって制作してきた、オリジナル・フィギュア100点、ペインティング20点、オブジェ2点など、アート作品を1冊にまとめました。この作品集には、アーティスト大野智の独創的なポートレート、制作への思いをじっくり語ったロング・インタビュー、10年間、制作過程を見つめてきた「嵐」メンバーからの一言なども収録されています。作品の現物を見せていただきながら、大野さんに、制作意図などについてインタビューしました。


<今週の松田チョイス>
◎恩田陸『いのちのパレード』(実業之日本社)



松田 いま、物語を書く人はたくさんいますけども、その中で飛び抜けた力をもっている、面白さ、うまさで言えば恩田陸さんだと思います。その、恩田さんの最新作『いのちのパレード』です。
N 本屋大賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞。幅広いジャンルで評価を得てきた恩田陸さん。その集大成ともいえる短編集が『いのちのパレード』。ホラー、SF、ミステリー、ファンタジー。15の短い物語に込められた壮大な想像力が、読者を圧倒します。>
松田 この本には奇妙な味の短編小説が十五編収録されています。一つ一つが20ページぐらいの短いお話なんです。だけども、それぞれが壮大なスケールの物語だったり、果てしない永い永い歴史の一部を一部を切り取ってきたみたいな、桁外れの大きさを感じさせられる物語ばかりで、それで、最後には意外なラストが待っているという、それぞれが楽しめるお話ばっかりですね。谷原さん、読んでどうでしたか。
谷原 あ、松田さんにふられた。ぼくも読ませていただいたんですが、恩田さんという人はとっても文章が上手じゃないですか。で、読んでいく内に、日常生活で、普通の人だったら見過ごさすようなところを、恩田さんが注目してみると、どっか隙間というかほころびのようなところを見つけて、それを想像力でどんどんふくらましていったっていう感じがしたんですね。日常なんだけども、ちょっと位相がずれた世界。どの短編も、最後のオチはゾクッとするようなものが多いんですが、中には可愛いお話で、「夕飯は七時」というのがありまして、子どもって想像力が凄くあるじゃないですか。で、大人が訳のわからない単語を言うと、それは何だろうと、勝手に生き物だとかを想像して、それが実際に出てきちゃうというお話。それが微笑ましくて好きでしたね。松田さんはいかがでした。
松田 ぼくはね、「かたつむり注意報」という作品が面白くて。ある作家の生涯を追っている人が、その最期の地に行くんですけども、そこで、巨大なかたつむりが夜、町中を歩いているという幻想的なんだけどリアルな光景に遭遇するというお話です。その映像が鮮明に焼き付いているという感じで、本当に繰り返し読みたくなる素晴らしい短編集ですね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.02.03)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.2.2)

『ラジオ・キラー』と「荒木飛呂彦&乙一『The Book』」


<コミックランキング>  (12/29~1/27 日販オープンネットワークWIN調べ)
 1位 青山剛昌『名探偵コナン』60巻(小学館)
 2位 高橋ヒロシ『WORST』19巻(秋田書店)
 3位 畑健二郎『ハヤテのごとく!』(小学館)
 4位 田辺イエロウ『結界師』19巻(小学館)
 5位 赤松健『魔法先生ネギま!』(講談社)
 6位 CLAMP『ツバサ』22巻(講談社)
 7位 真島ヒロ『FAIRY TAIL』8巻(講談社)
 8位 矢吹健太朗『To LOVE -とらぶる-』7巻(集英社)
 9位 河原和音『高校デビュー』10巻(集英社)
10位 うすた京介『ピューと吹く!ジャガー』14巻(集英社)


<特集・乙一&荒木飛呂彦『The Book』>
◎乙一&荒木飛呂彦『The Book』(集英社)



荒木飛呂彦の代表作でありシリーズ累計7000万部を超える大ヒット・コミック『ジョジョの奇妙な冒険』。このたび、このシリーズ第四部を奇才・乙一が渾身の小説化。「コミック版ジョジョ」の魅力の一つが【スタンド】という特殊能力を持った少年たちの、頭脳的な駆け引き、そして、極限状態でもあきらめない心。小説は、この要素を引き継ぎつつ、乙一らしい絶望と悲しみ、切なさを加えることに成功している。なぜ、執筆開始から5年、ボツ原稿が2000枚にものぼることなったのか、乙一オリジナル【スタンド】はどのように生み出されたのか、この小説を執筆することで得たものは、などを乙一さんに伺いました。また、VTR冒頭、荒木飛呂彦さんに「ジョジョ」の目指すもの、『The Book』の出来映えなどについてお聞きしました。
松田 原作コミックは息詰まるサスペンス・アクションなんですが、乙一さんは、そこに圧倒的な絶望と悪を持ち込んでいます。それによって、人間の悲しみ、切なさ、優しさを見事に表現しています。こうして、『ジョジョ』でありながら乙一ワールドでもある、コミックと小説が理想的な形で響きあった作品が誕生したんですね。


<今週の松田チョイス>
◎セバスチャン・フィツェック『ラジオ・キラー』(柏書房)



松田 ドイツの異色サスペンス・ミステリー、セバスチャン・フィツェックの『ラジオ・キラー』です。
N ラジオ局の乗っ取り事件発生! 人質をとって立てこもった知能犯が、ラジオを使った冷酷な殺人ゲームを始める。交渉人に指名されたのは、長女の自殺に深く傷ついていた犯罪心理学者イーラ。犯人との息詰まるようなやりとりをはさんで、事件は思いも寄らぬ展開へとなだれ込んでいく。ノンストップ・サイコミステリー。>
松田 この小説は、終始、心臓がドキドキしっぱなしです。思いがけない出来事が次々と起こり、アッと驚くラストシーンまで、一気に突っ走っていくんです。だから、読み始めると止まらなくなります。この犯罪は、マスコミや大衆を巻き込む「劇場型犯罪」なんですが、ラジオ局に立てこもった犯人の要求が、ドイツ中のどこかの電話番号に電話して、決まった答をしないと人質を一人殺すという、シンプルなもの。それだけに怖いのです。そして、犯人との交渉にあたる女性は、高名な犯罪心理学者なんですが、実は、娘の自殺で神経がボロボロになっている。こういう崖っぷちに立っているような絶望的な状況に置かれている主人公からも目が離せません。まさに、スリルとサスペンス満載のミステリーです。
優香 私も、読んだんですが、私は翻訳ものというのは苦手だったんですよ。でも、これはとっても読みやすかったですね。犯人との交渉人も正義のヒーローというのではないのでハラハラするし、その上、びっくりするようなラストシーンなんですね。
松田 壮大な仕掛けのマジックを目の前で見ているような感じでしたね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.01.26)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.1.26)

『戦後腹ぺこ時代のシャッター音』と「阿川弘之」


<総合ランキング>  (1/13~19 有隣堂書店全店調べ)
 1位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 2位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
 3位 大庭史榔『1分間骨盤ダイエット』(三笠書房)
 4位 勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)
 5位 田村裕『ホームレス中学生』(ワニブックス)
 6位 『広辞苑 第六版』(岩波書店)
 7位 阿川弘之『大人の見識』(新潮社)
 8位 森博嗣『タカイ×タカイ』(講談社)
 9位 勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)
10位 ロンダ・バーン『ザ・シークレット』(角川書店)


<特集・阿川弘之『大人の見識』>
◎阿川弘之『大人の見識』(新潮社)



文壇の最長老、現在87歳の阿川弘之さんが「ブランチ」に初登場します。阿川さんは、「古き善き日本人」を取り戻すべく、旧制高等学校時代・海軍時代などの経験や見聞、読書や思索、人との交流などからえた叡智を満載した『大人の見識』を書きました。この本は昨年11月に発売されて以来、30万部突破の大ヒットになっています。今回は、阿川さんの横浜のお宅を訪問し、インタビューとともに、その暮らしぶりも拝見しました。また、娘の阿川佐和子さんにも、お父さんの横顔を「娘の見識」をもって語っていただきました。
松田 「見識」なんてついていると、上からお説教されるんじゃないかという風に思うかも知れませんが、(VTRの中で阿川さんが)おっしゃったように、長い人生の中で、いろんな人と出会って、たくさんの本を読んで、その中から得た豊かな知恵を、ユーモアも交えて、穏やかに語りかけてくれているんですね。だから、若い人たちにも、生きる上での大切なヒントみないなものを教えてくれる素晴らしい本になっていると思いますね。


<今週の松田チョイス>
◎赤瀬川原平『戦後腹ぺこ時代のシャッター音』(岩波書店)



松田 「路上観察」や「老人力」でおなじみの赤瀬川原平さんの『戦後腹ぺこ時代のシャッター音』という本です。
N 1950年代にヒットしたフォトドキュメント『岩波写真文庫』。「東京案内」「スポーツ」「芸術」など、時代の空気をとらえた1冊1テーマの写真百科です。これは、写真好きで名高い赤瀬川原平さんが、そんな『岩波写真文庫』を厳選してまとめた1冊。貧しくも夢を忘れなかったあの時代を振り返ると、懐かしさを味わえるとともに、楽しい発見が一杯です。>
松田 この『岩波写真文庫』が出されていた1950年代というのは、ちょうど「三丁目の夕日」の時代なんですね。みんな物もなくて、貧しくて腹ぺこで、だけど、未来に向かっていろんなものが光り輝いていた。そういう時代なんですね。そして、おなかも減っていたんだけども、知識や文化とか、写真とか映像とかへの飢えもすごくあったんですね。そういう人たちのニーズに応えたのが、「写真文庫」というシリーズなんです。もう一つ、写真というものが、今より大事なものだったんで、1カット1カット、シャッターチャンスを狙って撮っている写真が、すごく力があるんですね。だから、時代を超えて、いま、じっくり見ていくと……赤瀬川さんの絶妙な解説を読みながら見ていくと、いろんな発見がある楽しい本ですね。
優香 本当に活気があるというか、なんかしゃべりかけてくる感じですよね。この時代をまったく知らないんですけど、なんか懐かしいというような気持ちになれるってすごいですね。
松田 ぼくらは、さっき出てきた小学生ぐらいだったんですね。自分が行っていた教室という感じで懐かしいんですけども。
谷原 たしかに、古い写真を見ていると、自分たちの親たちの世界をかいま見られて、ちょっと温かい気持ちになったりしますよね。

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