松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.01.20)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.1.19)

『みなさん、さようなら』と「桜庭一樹」


<総合ランキング>  (1/7~13 三省堂書店全店調べ) 
 1位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 2位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
 3位 阿川弘之『大人の見識』(新潮社)
 4位 田村裕『ホームレス中学生』(ワニブックス)
 5位 勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)
 6位 島田裕巳『日本の10大新宗教』(幻冬舎)
 7位 勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)
 8位 上野千鶴子『おひとりさまの老後』(法研)
 9位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
10位 ロンダ・バーン『ザ・シークレット』(角川書店)


<特集・桜庭一樹>
◎桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)



谷原 今週は、芥川賞・直木賞が発表されましたが。さて松田さん、見事当てましたね。
松田 はい。配当はないんですね(笑)。
谷原 配当は個人的に……(笑)。
<16日に第138回芥川賞・直木賞の選考会が行われ、芥川賞には川上未映子さん「乳と卵」、直木賞には桜庭一樹さん『私の男』が選ばれ、二人のシンデレラが誕生しました。「ブランチ」では、さっそく発表の翌日、金田美香ちゃんとぼくの二人で桜庭一樹さんをお訪ねしてインタビューしました。>
金田 桜庭さん、このたびはおめでとうございます。
松田 おめでとうございます。
桜庭 ありがとうございます。
金田 一夜明けて、改めて受賞の感想は。
桜庭 まだ実感が湧かない感じで。二回目の候補で受賞なんですけども、前回の落ちたときの方が「落ちたんだあ」ってきたんですけども……(笑)。
N 過酷な現実と闘う少女たちの物語を得意とするライトノベル作家として活躍してきた桜庭さん。ここ数年は、一般小説の世界に飛び出し、『赤朽葉家の伝説』では、前回の直木賞候補になるなど、いままさに注目の若手作家。>
金田 それでは、突然ですが、「桜庭一樹さんへの5の質問」(拍手)。まず、『私の男』を書くきっかけを教えてください。
桜庭 最初のきっかけの一つになったのが、男の子の友達の失恋話というのがあって。3、4年前に聞いたんですが、そん時はあまり深く考えなかったんですけど、その子は、女の子に振られた、そしたら、「もう、女性は信じられなくなった。他人の女性は、いま自分のことを好きでも、心変わりしたら離れていっちゃうと思ったら、怖くなっちゃった」と言っていて。「でも、お母さんとか妹とか、血の繋がりがある女性は、何か変化しても離れていくことはないから、血の繋がっている異性しか、もう信じられない」って言っていたことがあって。「どうしてしまったんだろう」って思って(笑)。後から考えてみて、それは極端な例だけど、他人では得られない一体感とか血の繋がりを大事に思う気持ちというのは、誰にでもあって、そういう意味では、血の繋がりって、家族の絆の美しさと怖さって、みんなが持っているもんだなあって思った時に、私はすごく普遍的なテーマだと思ったので……。
金田 続いて、第二問。
桜庭 クイズみたい(笑)。
金田 ヒロインの名前を「腐野花」というインパクトのある名前にした理由を教えてください。
桜庭 若いときは素敵だけども、うまく歳をとって成熟していけない人間というのが現代的なんじゃないかなと思ったので、腐っていく花束のイメージで「腐野花」って、そのままつけたんですね。
N そんな花の父が、荒んだ雰囲気を醸し出すキザな男・腐野淳悟。物語は、こんな1行から始まる。「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。」>
松田 1行目から、ある種キザな男ですよね、淳悟というのは。ああいうのを書くときの気持ちというのは、どんなものでした。
桜庭 例えば、映画だったら、出てきた瞬間、どういう人かわかるから感情移入できるというのがあるので、ある種、映像的に、パッと見た瞬間、この人がどんな人かわかって、そのまま物語にもっていけるという風にしたかったので……。
N そこで、桜庭さんが考えたのが、傘を躊躇なく盗むという行為。>
桜庭 善悪の判断基準がゆるい人は怖いと思うんですね。私はよく自転車に乗っていて、駅から家まで自転車で通っていて、時々、盗まれるんですよ。「なんだよ」と思っていたら、もう10年来の友達の男の子が、みんなで飲んでいたときに、「飲んで遅くなったら、よく駅前で自転車を盗む」って言ったんですよ。「お前かっ!」って。傘も、盗んじゃうではなくて、スッと取っちゃう人って怖いと思ったんで。そういう善悪の判断基準を突きつけられる話だよということが最初のシーンでわかるということで、このシーンを思いついて、ようやく『私の男』が書けると思って、書き始めました。
松田 すごい「つかみ」だなあって思いました。
金田 第四問、趣味を教えてください。
桜庭 格闘技で、空手を少し習っているぐらいです。
金田 また、すごい真逆なものを……。
松田 試合とか出たことはあるんですか。
桜庭 私ね、全日本女子というのに2回出て、2回とも1回戦で負けて、それっきりです。
松田 でも、出たんですか。
金田 それでは、最後の質問です。いま、興味のあるテーマは。
桜庭 すごく暗くて怖いんだけども、誰にでもあるものとか、そういう人の暗い面とか悪意とかを、怖い話とかで終わるのではなくて、人の共感を得る話として書いていきたいというのがあります。


谷原 美香ちゃん、実際にお会いして、桜庭さん、どうでした。
金田 小説のイメージとは、また違って、ファッションもすごく可愛らしいものがお好きで、本当に女性らしい一面もお持ちで、すごく魅力的な方だなあって思いました。
谷原 それでも、空手とかやったりしてるとか。
金田 そうなんです。いろんな面をお持ちですよね。
谷原 松田さん、桜庭さんの、どういうところに才能を感じますか。
松田 受賞作『私の男』というのは、選考委員のなかでも「反道徳的」だという声もあったぐらいで、なかなか強烈なストーリーなんですけども、ただ、時間をさかのぼっていくに従って、ある種の浄化がされていって、最後には光り輝くラストシーンに読者を連れて行くという。すごい筆力だと思いますね。選考委員もそれに圧倒されたんだと思いますけども。これだけ書ける人が、次にどういう作品を書いてくれるのか、楽しみだなあと思いますね。


<今週の松田チョイス>
◎久保寺健彦『みなさん、さようなら』(幻冬舎)



松田 新進気鋭の作家・久保寺健彦さんの長編小説『みなさん、さようなら』という作品です。
N 昨年、文芸誌の新人賞を受賞した久保寺健彦さんのデビュー作『みなさん、さようなら』。小学校の卒業式に起こったある事件がきっかけで、生まれ育った団地から外の世界に出ることができなくなった主人公・悟。しかし、団地の中には何でもあった。彼はここで友達をつくり、働き、恋愛をし、婚約にもこぎ着ける。時代とともに減っていく友人たち。果たして悟は団地から出て行くことはできるのか? 団地の中で生き続ける男のサバイバル・ストーリー。>
松田 小学校を卒業してから30歳まで、団地から一歩も出られなくなった男の話っていう、非常に奇抜なシチュエーションの物語なんです。団地に住んでいるからといって、引きこもっているわけではなくて、いつも体を鍛えているし、独学で勉強もするし、恋もするし、自分が憧れだった菓子職人にもなれるし。本当に、人の数倍も努力して、充実した人生を送っている。だけども、時代とともに団地がだんだん荒廃してくるんですね。その中で、生き抜いていかなければいけないというので、過酷な人生をたどるんです。団地という地味な場所を舞台にして、冒険小説というかサバイバルストーリーをつくっているという、非常に面白い小説でしたね。
優香 私も読みました。タイトルも暗い感じだし、最初から団地に籠もっているということもわかっているので、暗いお話なのかなと思ったら、そうではなくて、団地の中にいるみんなを心配している男の人で、とても前向きな方なんです。生きてるということがすごく伝わる、そういう18年間の人生を目撃しているような気持ちで読める、濃厚な人生だなという感じで読めるものでした。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.01.12)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.1.12)

『警官の血』と「山崎ナオコーラ」


<第138回芥川龍之介賞・候補作品>
☆川上未映子「乳と卵」(「文學界」12月号)
☆田中慎也「切れた鎖」(「新潮」12月号)
☆津村記久子「カウソウスキの行方」(「群像」9月号)
☆中山智幸「空で歌う」(群像」8月号)
☆西村賢太「小銭をかぞえる」(「文學界」11月号)
☆山崎ナオコーラ「カツラ美容室別室」(「文藝」秋号)
☆楊逸「ワンちゃん」(「文學界」12月号)
松田 女性作家が候補者の過半数を占めています。なかなか華やかな顔ぶれですね。中でも、本業が歌手だという川上未映子さんですね。饒舌な関西弁で独特の色気がある文体なんですけども、ちょっと注目したいなあと思っていますね。


<特集・山崎ナオコーラ>
◎山崎ナオコーラ『カツラ美容室別室』(河出書房新社)



コーラ好きなので、自分の名前にもコーラを入れてしまったという山崎ナオコーラさん。2004年、『人のセックスを笑うな』で第41回文藝賞を受賞してデビュー。同作品が、第132回芥川賞の候補作になり、さらに、この1月には永作博美、松山ケンイチ主演で映画化されるなど、大注目されている若手実力派。そういう山崎さんの最新作が『カツラ美容室別室』。美容室とそのお客たちとの、恋愛とも友情ともつかない微妙な関係を描いた作品。小説の舞台になっている高円寺を散策しながら、作品について語ってもらいました。
谷原 松田さん、ナオコーラさんの候補作はいかがでした?
松田 随所に出てくる、キャッチフレーズのような言葉がとてもリズムがいいんですね。ちょっと短歌みたいな感じでポーンと入ってきたりして。ドラマにならないような日常を描きながら、そこに、人と人との微妙な距離を感じさせる作品なんですけどもね。なんか、「地上10センチのリアル」といった感じがして、とっても不思議なテイストの作品ですね。面白かったです。


<第138回直木三十五賞・候補作品>
☆井上荒野『ベーコン』(集英社) 
☆黒川博行『悪果』(角川書店)
☆古処誠二『敵影』(新潮社)
☆桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)
☆佐々木譲『警官の血』(新潮社)
☆馳星周『約束の地で』(集英社)

谷原 今年の直木賞は重量級のミステリーが揃っているという印象なんですけども、さあ松田さん、本命に選んだ作品は?
松田 力作揃いで、いろいろ悩んで、「ダブル本命」ということで2作あげたいと思います。1作目は桜庭一樹さんの『私の男』ですね。
◎桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)



松田 「松田チョイス」でも取り上げましたけども、男と女の強烈で濃厚な物語を、臆することなくグイグイ書ききった筆力は並大抵のものじゃないなと思いましたね。
谷原 たしか、これは優香ちゃんが読んでショックを受けたという。
優香 衝撃的、かなりの衝撃作です。
谷原 ぼくも衝撃を受けてみたいのですが、さあ、もう1本の本命作品は?
松田 もう1本はですね、佐々木譲さんの『警官の血』という上下二巻の作品ですね。
◎佐々木譲『警官の血(上・下)』(新潮社)



松田 『このミステリーがすごい!』の国内部門でも1位に輝いています。実直な警官として生きようとした3代の男たちの物語なんですけども、戦後の闇市から全共闘、そして現代の経済犯罪まで、その時々の事件を織り込みながら、この男たちの人生が描かれていくんですよ。本当に大河小説といっていいと思うんです。そして、第3部の和也という男の話あたりになると、サスペンスがすごくて、最後に本当に衝撃的な「真実」が明らかにされるという、ミステリーとしての醍醐味もあるんですけども、警察とは何かという、警察の姿を赤裸々に描いている問題作でもあるんですね。非常に迫力のある力作だと思います。
谷原 ぼくも是非読んでみたいですね。はい、芥川賞、直木賞の決定は来週の16日になります。松田さんの予想当たるのでしょうか。皆さん、注目しましょう。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2008.01.05)

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.1.5)

『ウォッチメイカー』と「三浦しをんと文楽の世界」


<特集・三浦しをんと文楽の世界>
三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』(ポプラ社)



三浦しをん『仏果を得ず』(双葉社)



直木賞作家・三浦しをんさんが、いまはまっているのが日本の伝統芸能「文楽」の世界です。どこか敷居が高く、難しそうというイメージがある「文楽」ですが、三浦さんは、この世界に魅せられて、昨年、2冊の本を刊行しました。ちょっととっつきにくいけど、じっくりつきあってみると楽しい「文楽」の世界を三浦さんの案内で覗いてきました。
谷原 松田さん、本の方もかなり面白いですか。
松田 小説の『仏果を得ず』というのがとても面白いんです。伝統芸能の話っていうと、面倒くさそうな気がするんですが、これは物語を楽しみながら、文楽の魅力を知ることができるんです。出てくる登場人物が、ものすごく個性的で愛すべきキャラクターばかりで、その人達が、しをんさんの絶妙な語りにのって物語が展開されるあたりは素晴らしいですね。文楽の世界に出会って、しをんさんの語りが、また一段と冴え渡っているという気がしますね。


<今週の松田チョイス>
◎ジェフリ・ディーヴァー『ウォッチメイカー』(文藝春秋)



松田 『このミステリーがすごい!』と「週刊文春」という二つの権威あるミステリー・ランキング海外部門で1位に輝いたジェフリ・ディーヴァーの『ウォッチメイカー』という作品です。
VTR 世界中で愛されるジェフリ・ディーヴァーの「リンカーン・ライム・シリーズ」。第1作『ボーンコレクター』は映画化もされ、大ヒットに。主人公は、事故によって体の自由がきかなくなった一流の科学捜査官リンカーン・ライムと彼の手足となって現場に赴く新任の鑑識捜査官アメリアのコンビ。現場に残されたわずかな手がかりを頼りに、冷酷な殺人鬼と息詰まる頭脳戦を繰り広げます。そのシリーズ最新作となるのが『ウォッチメイカー』。犯人は、ウォッチメイカーを名乗り、残忍な殺人現場に必ず名刺代わりのアンティーク時計を遺していく。時計のように緻密な連続殺人計画をライムたちは食い止めることができるのか? 『このミステリーがすごい!』海外部門で1位、「週刊文春」ミステリー・ランキングでも1位に輝いた、いま必読の1冊です。>
松田 さすがに、軒並みNO.1に輝いた作品だけあって、読み出すと、超高速のジェットコースターに乗せられたみたいに、グイグイグイグイ、ハラハラしながら読み進むんですね。で、このリンカーンとアメリアのコンビというのは、『ボーンコレクター』から7作目になるんですが、サスペンスも意外性も飛び抜けて優れた作品です。色濃いキャラクターがたくさん出てくるんですけども、特に、冷酷な事件を計画して実行していくウォッチメイカーという犯人像が強烈で、圧倒的で、本当に魅力を感じてしまうほど悪い奴なんです。それで、物語を読んでいくと、ほかの事件がからんできたり、途中で意外とあっさりと犯人が捕まってしまうんですね。これで終わりかと思っていると、それから、とんでもないどんでん返しが次々にやってくるという、もう、ミステリーファンにはたまらない1冊ですね。
谷原 ぼくも読ませてもらったんですが、ウォッチメイカーというキャラクターが、とても緻密な犯罪計画を立てていくんですね。で、そのウォッチメイカーのキャラクターに引きずられるように、ぼくは、かれこれ4日間ぐらいで読んだんですけども。おかげで、大掃除がどんどん遅くなりましたけどもね(笑)。ウォッチメイカーという人物を作り上げたジェフリ・ディーヴァーさんというのはすごい方だなあと思いますね。松田さんもおっしゃったように、これで終わったと思ったら、さらに別の展開が待っているという、もう、ずーっとジェフリ・ディーヴァーの手の上で転がされ続けた506ページでした。ミステリーファンの方、必読です。是非読んでください。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2007.12.30)

「王様のブランチ」本のコーナー(2007.12.29)

「第6回 輝く!ブランチBOOK大賞」


<2007年BOOK界 様々なムーブメントが!>
①「自己改革本」の大ブーム ②ケータイ小説の大ヒット ③「カラ兄」などの古典名作復活


<第6回 輝く!ブランチBOOK大賞>


小林 今年で6回目を迎えました「ブランチBOOK大賞」、審査委員長は今年もたくさんの面白い本を紹介してくださいましたブックマスター、筑摩書房の松田哲夫さんです。
松田 はい。今年も、たくさんの本に楽しませてもらったのですが、その中からより抜きの作品や作家を表彰させていただきます。


<新人賞>
☆梅佳代『うめめ』『男子』(リトルモア)他



つい見過ごしがちな日常の中のハッとする瞬間を切り取った写真集。「笑える写真集」として大評判になりました。浅草仲見世で賞状を授与し、インタビューしました。
「あなたの写真集『うめめ』『男子』『うめ版』は人間のおかしさ、愛らしさを見事にとらえ、私たちを超笑わせてくれました。絶好のシャッターチャンスを決して逃さないあなたに敬意を表し、王様のブランチはBOOK大賞新人賞を贈りここに表彰します」(表彰状)
谷原 松田さん、新人賞に梅佳代さんを選ばれた理由というのは。
松田 こんなに笑えた写真集というのは滅多にないと思うんです。何度見ても笑っちゃうんですよね。それに、それぞれの人が、「この人、どんな人生を送っているんだろう」っていろいろ考えさせられたりして、そういう意味ではストーリー性もあるし、本当に楽しい写真集でしたね。


<優香賞>
☆松浦寿輝『川の光』(中央公論新社)



都市に流れる川に住むネズミの一家の冒険物語。いのちといのちが繋がっていく姿が活き活きと描かれていて、優香ちゃんは感動したそうです。
「いつもおきれいな優香さんの賞をいただいて、本当に嬉しく思います。優香さんはじめ、ネズミ一家の必死の大冒険の物語を楽しんでくださった読者の皆さんみんなに、この機会をかりて改めて心からお礼申し上げます。 松浦寿輝」(松浦さんからのメッセージ)
優香 松浦さん、どうもありがとうございます。この本は、読み終わりたくないというぐらい、読み続けていたい、その続きがもっと見たいと思えるような本でした。だいたい、動物がメインのお話って、人間が悪く描かれがちです。最初のきっかけも、人間が、ネズミたちの住む場所を追いやってしまうということだったんですけども、でも、この子たちがおうちを探して冒険していくなかで、人間の子供に助けてもらうところがあって、そこが、すごくいいなあ、温かくなるなあと思いました。ぜひ、子供から大人まで、みんなに読んで欲しいと思います。


<谷原章介賞>
☆荒俣宏『アラマタ大事典』(講談社)



学校では教えてくれないけれど、知れば知るほど面白い303のヘンな話。この本は谷原さんの好奇心と知識欲をいたく刺激したようです。賞状を渡し、インタビューしました。
「あなたはその計り知れない豊富な知識を「アラマタ大事典」に惜しげもなく注ぎこみ谷原審査員を驚愕せしめました。よって王様のブランチは谷原章介賞を贈りここに表彰します」(表彰状)
谷原 荒俣さん、ありがとうございました。今回は、小説ではなくて雑学事典のような特殊な本なんですけども、僕自身も読んで楽しかったし、ためになった。子供に与えても、子供が興味を持って読めると思うんですよ。このなかで大好きな話が「おやつの話」で、なんで「おやつ」って言うんだろうと思ったら、昔の日本では朝晩しかご飯を食べなかったんですって。ちょうどおなかがすくのが、昔の時間でいう「八つ時」にそれを食べるんで、「おやつ」ということになったという。ふだん何気なく言っている言葉とか見ているものとかで、知らないことっていっぱいあるんですね。これからも、いろんなことに興味を持って見たいきたいと思わせてくれる本だと思い、今回これを選ばせていただきました。


<大賞>
☆角田光代『八日目の蝉』(中央公論新社)



今年、5冊の傑作小説集を刊行した角田さん、中でも『八日目の蝉』は、「母親」とは何か、「家族」とは何かを切なく問いかけてくる、緊迫の長編サスペンスでした。角田さんの仕事場を訪れ、ぼくが賞状を授与し、インタビューしました。
「あなたは今年人間心理の機微を捉えた優れた小説集五冊を刊行されました。中でも『八日目の蝉』は極めつきのサスペンス小説であると同時に、親子のあり方を改めて私たちに問いかけてくれました。よっって王様のブランチはBOOK大賞新人賞を贈りここに表彰致します」(表彰状)
松田 『八日目の蝉』は今年一番圧倒された素晴らしい小説でした。ちょうど電車の中で読んでいて、涙があふれ出してきて、すごく気まずい思いをしながら読んでいました。
N この『八日目の蝉』は角田さんがあまり手がけなかった犯罪小説であると同時に、出産、育児というテーマにも独自の視点で取り組んでいます。そこには、角田さんのどんな思いが込められていたんでしょうか。)
角田 出産については、自分も年齢を経てきて、周囲の人が、出産した人はしているし、していない人はしていないし、でも出産について悩んでいる人もいる。自分も世代的に出産に近いところにいたんですよね。なので、同世代の女性を書くときに、出産を扱わないと不自然である……産むにしろ産まないにしろ、その問題を書かないのは不自然かなあと思って、わりとそのテーマは重点的に書いたなあっていう気がします。犯罪に関しては、わりといままで、日常の非常に小さいことを書くのが、私は得意だったんですけど、ずーっと日常の小さいところを書いていても、何か自分の枠組みのようなものが出来てしまうんじゃないかっていうのがあって、単純に日常の対極にあるものという意味で犯罪というものを考えて……。
N 今回、テーマを決め込まずに、夢中で書き進めていた角田さんは、ある時、自分が一番書きたかったものに気づいたといいます。)
角田 書き終わってしばらくしてから、自分が一番書きたかったものって何なのかなっていうと、人間の強さとかたくましさみたいなことをを書きたかったんだと、ある時気づいて、たぶん、人はこうあるんじゃないかっていうことなのかなあと思って……。


松田 『八日目の蝉』というのは、サスペンスも凄い、グイグイ引き込まれますし、犯罪みたいに、本当に深いものを問いかけてくるんですけども、最後にはすごく感動的なあったかい物語になっていくという理想的な作品なんじゃないかなって思いますね。本当に何度でも読み返したいっていう気がします。
優香 私もこの作品を読みまして、本当に衝撃的だし面白かったです。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2007.12.24)

「王様のブランチ」本のコーナー(2007.12.22)

『秋の牢獄』と「古谷千佳子」


「王様のブランチ」は、この日で第600回を迎えました。それを記念して、この日の放送は沖縄県那覇市の首里城から生中継でお送りすることになりました。
前日、昼前に那覇に到着し、先行ロケで沖縄に来ているディレクターのオススメの沖縄そばを食べて、首里城の中継ポイントを確認に行きました。すると、にわかに雨が降り出してきました。夜の19時からは、ホテル・ハーバービューで600回のお祝いのパーティが開かれました。その後、二次会、三次会とあったようですが、ぼくは22時でリタイア、部屋で本を読んでいました。若いスタッフの中には、3時過ぎまで飲んでいて、睡眠1時間で本番にのぞんだ強者もいたようです。
その晩は激しい雨で、翌日の天気予報も「曇り時々雨」というものでした。ところが、朝になると青空が広がり、まぶしいばかりの天気でした。気温も25度と高く、汗ばむような気候でした。ぼくは、自分のコーナーを無事終えて、ここで取り上げた『秋の牢獄』の作者恒川光太郎さんと一緒に沖縄そばを食べました。この「てぃしらじそば」という店は、新しい店だそうですが、恒川さんが一押しというだけあって、ジューシー(かやく飯)ともども絶品でした。
その後、みんなのオススメで「沖縄美ら海水族館」に行って、ジンベイザメが悠然と泳いでる姿を観賞しました。帰りに、今度はタクシーの運転手さんオススメのお店でまたまた沖縄そばを賞味しました。帰路は、20時半発の飛行機の予定だったのですが、整備が遅れて30分後に搭乗。すると、電気が切れ、エアコンが止まってしまいました。サブの電源が動かないとのこと。メイン電源で問題なく飛行できるということで1時間半遅れで出発しました。羽田に到着するまでは心配だったのですが、無事着くことができました。
なかなか、波乱に富んだ、面白い沖縄旅行でした。(写真は本番直前の様子です。)



<クリスマス絵本ランキング>  (11/1~30 青山ブックセンター本店調べ)
 1位 荒井良二『ぼくのおとぎ話からの手紙』(フレーベル館)
 2位 酒井駒子『よるくまクリスマスのまえのよる』(白泉社)
 3位 及川健二『ねこのセーター』(学習研究社)
 4位 アン・グッドマン『メリークリスマス、ペネロペ!』(岩崎書店)
 5位 パトリック・マクドネル『おくりものはナンニモナイ』(あすなろ書房)


<特集・海人写真家古谷千佳子>
沖縄在住の海人写真家古谷千佳子さん。東京に生まれ、家族旅行で訪れた沖縄の海に惹かれ、いつか沖縄に、と決意しました。そして、知り合ったウミンチュ(漁師)を通して、漁業の世界や海辺の暮らしに興味をもちました。自ら潜水漁法を経験後、東京でカメラマンの修業をかさね、再び沖縄にやってきて、本島、離島を飛び回り、海人の暮らしをカメラにおさめてきました。東京や沖縄で写真展を開催したり、雑誌などに作品を発表しています。古谷さんの撮影に同行して、その仕事ぶりと沖縄のおじいたちに寄せる熱い想いを語ってもらいました。


<今週の松田チョイス>
◎恒川光太郎『秋の牢獄』(角川書店)



松田 沖縄在住の新進気鋭の作家・恒川光太郎さんの最新作『秋の牢獄』です。
VTR デビュー作『夜市』で日本ホラー小説大賞を受賞し、直木賞候補にもなった恒川光太郎さんの珠玉の作品集『秋の牢獄』。11月7日、水曜日。女子大生の藍は、秋のその1日を、何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になれば全てがリセットされ、再び11月7日が始まる……。>
松田 この本には三つのお話が収められています。ある1日が永遠に繰り返される話や、日本の各地を移動していく家に住むことになった男の話、幻を操れる超能力をもった少女の話です。どれも「閉じこめられる話」なんですね。主人公たちは、時間や場所などに閉じこめられてしまいます。そして、そういう自分が置かれた状況がわかってくると、彼らは深い絶望に陥ります。でも、その絶望の底から、いい知れない幸福感のようなものもわき上がってくるんです。ちょっとしたはずみに、フッと迷い込んでしまいそうな怪しいまでに美しい別世界を垣間見せてくれる、リアリティをもった現代の民話といった感じで、味わい深い物語ばかりです。
谷原 恒川さんは沖縄在住ということですが……。
松田 この本のお話は沖縄が舞台になっているわけではありませんが、日常生活の延長線上にスピリチュアルな世界が広がっている沖縄という土地からインスパイアされているということです。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2007.12.15)

「王様のブランチ」本のコーナー(2007.12.15)

『わたしってどんなヒトですか』と「万城目学」


<総合ランキング>  (12/3~9 リブロ池袋本店調べ)
 1位 『このミステリーがすごい!2008年版』(宝島社)
 2位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 3位 田村裕『ホームレス中学生』(ワニブックス)
 4位 伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮社)
 5位 西尾維新『刀語 第12話』(講談社)
 6位 ロンダ・バーン『ザ・シークレット』(角川書店)
 7位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 8位 中村江里子『中村江里子の毎日のパリ』(KKベストセラーズ)
 9位 阿川弘之『大人の見識』(新潮社)
10位 佐藤優『国家の謀略』(小学館)
松田 (1位の 『このミステリーがすごい!2008年版』の)海外編の1位に輝いたジェフリー・ディーヴァーの『ウォッチメイカー』ですが、映画化された『ボーンコレクター』の探偵リンカーン・ライム・シリーズの最新刊ですね。ぼくは、まだ読んでいないので、正月休みの楽しみにとってあります。


<BOOK NEWS>
◎TBS「イブニングファイブ」『一ヶ月の花嫁』(マガジンハウス)


<特集・万城目学>
英玲奈 「ブランチ」でも(万城目さんには)たびたび注目してきたんですよね、松田さん。
松田 ぼくの「松田チョイス」で次々に取り上げてきましたし、昨年、ブランチBOOK大賞新人賞も差し上げましたね。
優香 私も『鴨川ホルモー』と『鹿男……』読んだんですけども、とにかく発想が面白いですよね。誰も考えつかないようなところを……。
松田 でも、ありそうな……。
◎万城目学『鴨川ホルモー』(産業編集センター)



◎万城目学『ホルモー六景』(角川書店)



京都を舞台に、オニたちを操って戦わせる奇妙な競技「ホルモー」にかかわってしまった大学生たちの姿をコミカルに、そして感動的に描いた快作『鴨川ホルモー』で華々しくデビューを飾った万城目学さん。第二作『鹿男あをによし』も直木賞候補になり、この1月から玉木宏、綾瀬はるか主演でドラマ化も決定しています。そして、このたび第三作『ホルモー六景』が刊行されました。まさに大注目の大型新人作家である万城目さんの仕事場を訪ね、会社を辞めて3年間無職だったこと、どういうきっかけで「ホルモー」などという奇妙なものを思いついたのか、執筆へのこだわりなどをうかがいました。
優香 万城目さん、本がすごく変わっているので、ちょっと変わった方かなあと思ったんですが、意外と柔らかく優しい雰囲気の方でしたね。
谷原 松田さん、新作の『ホルモー六景』の方はいかがでした。
松田 短編集なんですけども、「ホルモー」にまつわるいろんな話が出てくるんですが、時代も安土桃山時代にいったり、大正時代にいったり、場所も東京が出てきたりするんですね。それで、全部、恋愛ドラマなんですよ。いろんなタイプの恋愛が、ホルモーがらみで……(笑)。
優香 ホルモーがらみで……(笑)。
松田 読んでいない人にはわからないと思いますが……。
優香 叫びたくなりますもんね、「ホルモー!」って。


<今週の松田チョイス>
◎大田垣晴子『わたしってどんなヒトですか?』(メディアファクトリー)



松田 エッセイコミックの第一人者、大田垣晴子さんの『わたしってどんなヒトですか?』です。
VTR 自分のことって、実はわからないことだらけ。人気画文家の大田垣晴子さんの最新コミックエッセイ『わたしってどんなヒトですか?』はひと味違う自分探し。作者自ら、美容、健康、恋愛、性格、運勢、体力など様々な方面のプロに「わたし」を判定してもらって歩き、それをイラストと文章で実況中継。思いもかけない自分がそこに。きっと参考になるはず。>
優香 私も読みました。すごい面白いです。自分を知る方法ってこんなにたくさんあるんだって。たとえば「色」もそうだし「脳」もそうだし、いろんなことがあるんです。「骨格」からなにから。それで全部知れちゃうっていうのは、すごく面白くて。私は、特に「ロルフィング」と「アーユルヴェーダ」が面白かった。
谷原 ロルフィング?
松田 整体みたいなね。整体よりも、もっと複雑なところまでわかる……。
優香 姿勢がよくなるというか……。いろんな情報がありました。
松田 大田垣さんという人は、すごく好奇心旺盛で、観察眼があって……。ここに、占いなんかもたくさん出てくるんですが、初めっから疑ってかかる人か、はまっちゃう人かが多いじゃないですか。大田垣さんは、素直に受けてみて、それで、驚いたり、「エーッ、こんな結果が出た」って焦ったりして、結構笑えるんですけども。だから、こんなにいろんな自分というものの知り方があるんだということを教えてくれる、すごく役に立つ本でもありますよね。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2007.12.09)

「王様のブランチ」本のコーナー(2007.12.8)

『冠・婚・葬・祭』と『神の雫』


<コミックランキングTOP5>
 (11/27~12/3 日販オープンネットワークWIN調べ)
 1位 井上雄彦『バガボンド』27巻(講談社)
 2位 井上雄彦『リアル』7巻(集英社)
 3位 浦沢直樹『PLUTO』5巻(小学館)
 4位 三浦健太郎『ベルセルク』32巻(白泉社)
 5位 若杉公徳『デトロイト・メタル・シティ』4巻(白泉社)


<こんな本どうでしょう!>
 ◎ほしよりこ『僕とポーク』(マガジンハウス)


<特集・『神の雫』>
◎亜樹直・作、オキモト・シュウ・画『神の雫』(講談社)



2004年から「週刊モーニング」で連載が始まり、現在も人気連載中の漫画「神の雫」。これまでのワイン漫画と違い、その深い造詣と、素人技とは思えないワインの表現描写がうけ、日本だけではなく、韓国ではビジネスマンの必読書として大ヒットし、ワインブームに火をつけたといわれています。原作者は亜樹直さん。実は、姉妹のユニット作家。弟はあの「HERO」の原作者でもあり、これまでも多くのアニメやドラマの原作を手がけている。今回は、亜樹さんの仕事場を訪問し、その独特な表現が生み出される現場をリポートしました。


<今週の松田チョイス>
◎中島京子『冠・婚・葬・祭』(筑摩書房)



松田 面白い小説を次々に発表しています作家・中島京子さんの最新作『冠・婚・葬・祭』という作品です。
VTR 成人、結婚、葬儀、お盆。これはそれぞれの人生の節目に立ち会った主人公たちが奇妙な体験をする連作短編集。成人式を取材した地方紙の新米記者。時代の波に押され引退した天才お見合いおばさん。当り前に行われるはずだった儀式が思わぬ方向に行ったとき、そこに人生の意味が鮮やかに浮かび上がった。>
松田 この小説集を読んでいると、本当にうまいなあ、とうならされる、本当に面白い小説集なんです。でも、小説を読んでいるというよりは、その人の人生を一緒に生きているような感じなんですね。人生って、物語みたいには思ったように動いていかないものんですね。とんでもないところに転がっていったりする。で、とんでもないところに転がっていって、最後に思いがけないハッピーエンドがあったりする。それが一緒に体験できるみたいな感じですね。たとえば、天才お見合いおばさんというのが出てくるんですけども、それまでもさんざんうまくカップルを結びつけてきたんだけど、昔取った杵柄で、あの手この手やるんですが、みんな外れちゃうんですよね。それで、どうしようもないなあと思っていると、最後に、実は見事な幸せなシーンが出てくるという。本当に、調子っぱずれの人生も、なかなかいいもんじゃないかと思わせてくれる、楽しい本でした。
小林 私も読ませていただいたんですが、新米記者が出てくるんですけども、まあ、とんでもない大きな事件に巻き込まれてしまって、私も、そこまで大きな事件には巻き込まれた事はないんですけども、仕事でちょっとミスするとすごく落ち込んじゃって、次に行くのにすごく時間がかかっちゃうんですが、そうじゃなくて、なんか落ち込んだ後に、見えてくる幸せだったりとか、ちょっとした嬉しいことが、本当は大切なのかなあっていうことを、本で学ばせていただいたなあって思いました。

松田哲夫の近況報告 (2007.12.03)

松田哲夫の近況報告(2007.12.2)

「週刊ブックレビュー」に出演しました


12月2日(日)の「週刊ブックレビュー」(NHK BS2)に出演しました。司会は児玉清さんと中江有里さん。この番組には、これまでに7回出演しています。書評ゲスト5回、特集ゲスト2回です。今回は、書評ゲストで、一緒に出演したのは、船曳建夫さん(東京大学大学院教授)と松長絵菜さん(料理研究家)のお二人でした。
私が取り上げた本は、以下の通りです。島本さんの本は、みなさんと話し合いました。
◎小川洋子『夜明けの縁をさ迷う人々』(角川書店)
◎安東みきえ『頭のうちどころが悪かった熊の話』(理論社)
◎島本理生『あなたの呼吸が止まるまで』(新潮社)



船曳建夫さんが取り上げて、みんなで話し合ったのは、以下の本です。
◎S.スクワイヤーズ『ローバー、火星を駆ける』(早川書房)
松長絵菜さんが取り上げて、みんなで話し合ったのは、以下の本です。
◎永井一正『生命のうた』(六耀社)
まったくタイプの違う3冊ですが、児玉さん、中江さんも含めて、面白い話ができました。話がはずんだので、そのすべてを放映することはできませんでした。


船曳さんとは、これまでに一回名刺交換したぐらいの知り合いでしたが、ここのところ不思議な縁で続けてご一緒することになりました。この「週刊ブックレビュー」が最初で、その後、12月18日(火)にBS11(12月に開局した新しいBSテレビ局)の阿川佐和子さんがメインパーソナリティの「第②ニッポン国・独立宣言!」でご一緒することになっています。それだけではなく、来年3月に六本木の国際文化会館で開催される連続セミナー「語り尽くそう、教養を」でもご一緒することになっています。
松長さんとは初対面でしたが、ご挨拶をすると、「わたし、はなちゃんと友達なんです」と話してくれました。はなさんとは、「王様のブランチ」である期間、ご一緒してきました。それから、私が編集した華恵さんの『ひとりの時間』も読んだと話してくれました。「実は、『ひとりの時間』というタイトルの本を作りたいと考えていたんです。でも、素晴らしい文章ですね、『小学生日記』から読んでます」とのことでした。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2007.12.01)

「王様のブランチ」本のコーナー(2007.12.1)

『しずかな日々』と「カレンダー特集」


<特集・カレンダー>
 *丸善・丸の内本店・売れ筋ランキング*
 1位 A WORLD OF BEAUTY(JAL)
 2位 歳時記カレンダー(シーガル社)
 3位 猫めくり(カミン)
 4位 世界の文化遺産 日本編(山と渓谷社)
 5位 6万円貯まるカレンダー シャッフル型(アルタ)
*今年一年を賑わせた人物・事柄をカレンダーで振り返る*
 ◎ビーチバレー 浅尾美和選手 (コメントあり)
 ◎北海道日本ハムファイターズ ダルビッシュ有投手
 ◎大衆演劇・劇団朱雀2代目 早乙女太一
 ◎東京六大学野球 早稲田大学斎藤祐樹投手
 ◎エビちゃんカレンダー 蛯原友里 (コメントあり)
*アイドルカレンダー・ランキング*
 1位 新垣結衣
 2位 皆藤愛子
 3位 小林麻央 (コメントあり)
 4位 杉崎美香
 5位 AKB48 (コメントあり)


<今週の松田チョイス>
◎椰月美智子『しずかな日々』(講談社)



松田 今年の野間児童文芸賞を受賞した椰月美智子さんの『しずかな日々』です。
VTR 椰月美智子さんの野間児童文芸賞受賞作『しずかな日々』。誰ともなじめなかった小学5年生の「えだいち」は、ひょうきんで思いやりのある押野くんと友達になり、少しずつ自分の殻を破っていく。ところが、お母さんの都合で転校の危機。周りの人の手助けで、近所のおじいさんと暮らすことに。それは、キラキラと輝く、幸せな日々の始まりでした。>
松田 本当に心が温かくなる素晴らしい小説なんです。町の中にあるんですけれど、田舎の家みたいなところで、無愛想だけど優しいおじいさんと一緒に暮らすんですね、この少年は。そして、すごく気の許せる友達もできて、キラキラと輝くような少年時代の日々を送る。本当に理想的な少年時代という感じなんです。だけど、なんで、こういう理想的な少年時代が送れたのか、ということが最後になるとわかる。実は、そのまわりではそれなりの嵐というようなものがあったんだけど、そこから守られていたから、よけいに輝きが素晴らしかったんだなということがわかるんですね。本当に静かだけど温かい、素晴らしい小説でしたね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですけども、最初、友達もあまりいなくて、母親と二人だけの生活だったんですよね。自分の世界の中心は母親だし、すべてが母親だったんですが、親友ができ、外で遊べるようになり、そして、おじいさんの家にいって生活するようになって、だんだん世界が色づいてきて、自分と母親の違いというものを意識していく。母からの自立の物語という側面もあるんですよ。幼いときの自分と、一つ一つ大人になっていくステップが重なっているところもありまして、とても共感して読むことができました。

「王様のブランチ」本コーナー情報 (2007.11.24)

「王様のブランチ」本のコーナー(2007.11.24)

『私の男』と『ホームレス中学生』


<総合ランキング>  (11/12~18 三省堂書店全店調べ) 
 1位 田中裕『ホームレス中学生』(ワニブックス)
 2位 ロンダ・バーン『ザ・シークレット』(角川書店)
 3位 加島祥造『求めない』(小学館)
 4位 「ユリイカ臨時増刊号・総特集荒木飛呂彦」(青土社)
 5位 渡辺健介『世界一やさしい問題解決の授業』(ダイヤモンド社)
 6位 美嘉『君空』(スターツ出版)
 7位 村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋)
 8位 吉本佳生『スタバではグランデを買え!』(ダイヤモンド社)
 9位 古市幸雄『「1日30分」を続けなさい!』(マガジンハウス)
10位 上野千鶴子『おひとりさまの老後』(法研)
<BOOK NEWS>
 ◎中山和義『大切なことに気づく24の物語』(フォレスト出版)


<特集・田村裕『ホームレス中学生』>
◎田村裕『ホームレス中学生』(ワニブックス)


 
発売から二ヶ月半で140万部突破を達成。麒麟・田村の切なくも面白い貧乏生活を綴った笑えて泣ける貧乏自叙伝。中学生の時に、父親が「家族解散宣言」したためにホームレスに。ハトのえさであるパンくずを拾い集めた日々。そして、いつでも遠くで見守ってくれていた母親への思い。今回は、どうしてこの本がこんなに売れているのか、田村さん本人へのインタビューを軸に、相方の川島さん、担当編集者などからもお話を伺いました。


<今週の松田チョイス>
◎桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)



松田 人気も評価もうなぎ登りの作家桜庭一樹さんの最新作『私の男』です。
VTR 桜庭一樹の最新作『私の男』。うらぶれた養父淳悟と、彼を愛するしかなかった娘の花。二人の禁断の愛の物語はアルバムをめくるように時をさかのぼっていく。著者は『赤朽葉家の伝説』で直木賞候補にも選ばれた注目の作家。北国の海辺の町で、逃げるように移り住んだ東京で、何があったのか。かいま見える殺人事件の影。そして、衝撃の過去が蘇ってくる。>
松田 この小説は、読み始めると、あまりに強烈な登場人物のキャラクターと、重苦しいまでの暗さに圧倒されてしまいます。孤独な男女の愛が、読者をたじろがせてしまうほどの迫力があるんです。ただ、桜庭さんの筆の力でグイグイと引き込まれてどんどん読んでいくと、過去をズーッとさかのぼっていくと、なぜこういう愛が生まれたのかということがわかってくる。そうすると、ギリシャ悲劇を観ているような、禁断の愛の美しさみたいなものが、最後には輝いて見えてくるんです。これだけ力がある作品なので、たぶん、次の直木賞候補になるんじゃないかと思いますし、大きな賞を取る作品になると思いますね。
優香 私も読みまして。こういう感じのは初めて読んだんですけども、表紙も結構衝撃的じゃないですか。で、読み始めても、刺激的なことがすごくあって、うーんちょっと難しいなあって思いながら読んでいったんですが、途中から、サスペンスなんだということに気がついて、そこからはグーンと引き込まれていったんです。とにかく、刺激が欲しい方にはいいですよね。
松田 過去にさかのぼっていくというところがミソですよね。いろんなことが見えてくる、そこが面白いです。
谷原 みなさんも禁断の愛に溺れてみてはいかがですか。

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