決定版太宰治全集 造本・体裁 A5判変型 上製 貼函入 本文9ポ一段組
平均540頁 月報8頁 装幀=多田進
- 全体の構成は、『晩年』以前の作品を含めた全著作を原則としてジャンル別に分けて、発表年代順に収録するが、著者が意図して編纂した著作は、その配列に準拠した。" />
- 各作品の初版本を底本とし、原稿・初出誌・再録本と厳密に対比校合した。その校異を付し、作品生成の推移をたどれるようにした。
- 表記は、正字旧かなとし、発表当時の作品の雰囲気と姿をそのまま伝える。
- 従来の全集では、太宰治の筆名以前の作品や文章は「習作」として最終巻に置いてきたが、本全集では、それらの作品を「初期作品」として第一巻に置き、時系列の上でそれ以後の作品との連続と非連続を見やすくした。
- 各巻の巻末には、その巻に収められた作品の近い時代に書かれた、現在入手しにくい回想や批評文などを収め、太宰作品の理解に資することにした。
『晩年』以前、即ち太宰治の筆名を用いる以前の、主として中学、高校時代に書かれた小説及び作文を網羅収録し、プレ太宰治の全貌を明らかにする。
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習作 最後の太閤 虚勢 角力 犠牲 地図 負けぎらひト敗北ト私のシゴト 針医の圭樹 瘤 将軍 哄笑に至る 口紅 モナコ小景 怪談 名君 無間奈落 股をくゞる 彼等と其のいとしき母 此の夫婦 鈴打 虎徹宵話〔初出〕虎徹宵話 哀蚊 花火 地主一代 学生群 評論その他 綴方・日記・英作文 |
「私はこの短篇集一冊のために、十箇年を棒に振つた。まる十箇年、市民と同じさはやかな朝めしを食はなかつた。(中略)私はこの本一冊を創るためにのみ生まれた。」(「もの思ふ葦」)と自らが語る第一創作集『晩年』(昭和十一年六月刊)と、それにつづく〝苦悩の時期〟に書かれた「ダス・ゲマイネ」をはじめとした作品群を収める。 | 晩年(葉 思ひ出 魚服記 列車 地球図 猿ケ島 雀こ 道化の華 猿面冠者 逆行 彼は昔の彼ならず ロマネスク 玩具 陰火 めくら草紙) ダス・ゲマイネ 雌に就いて 断崖の錯覚 虚構の彷徨(道化の華 狂言の神 虚構の春) |
パビナール中毒、入院、心中未遂、なお惑乱と絶望の時期はつづく。そして「創生記」「二十世紀旗手」「HUMAN LOST」が生まれる。しかし、転機がくる。昭和十三年、時に太宰治、三十歳。生への意欲が、文学への情熱が、太宰のなかに燃え上がる。名作「富嶽百景」「女生徒」が書かれ、書下し創作集『愛と美について』が生れる。
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創生記〔初出〕喝采 二十世紀旗手 あさましきもの HUMAN LOST〔初出〕 燈籠 満願 姥捨 Ican speak 富嶽百景 黄金風景 女生徒 懶惰の歌留多 葉桜と魔笛 愛と美について(秋風記 新樹の言葉 花燭 愛と美について 火の鳥) 創生記 HUMAN LOST |
十四年一月、結婚して甲府に新居を構えた太宰に、はじめて生活の安定と心の平和がおとずれる。その年九月、東京府下三鷹村に転居。「僕は、こんな男だから出世も出来ないし、お金持にもならない。けれども、この家一つは何とかして守つて行くつもりだ。」(「東京八景」)規則正しい執筆活動から次々と作品が生れた。 | 八十八夜 座興に非ず 美少女 畜犬談 ア、秋 デカダン抗議 おしやれ童子 皮膚と心 春の盗賊 俗天使 兄たち 鷗 女人訓戒 女の決闘 駈込み訴へ 老ハイデルベルヒ 誰も知らぬ 善蔵を思ふ 走れメロス 古典風 盲人独笑 乞食学生 失敗園 一燈 リイズ |
十六年二月、懸案の書下し長編「新ハムレツト」にとりかかる。「三百枚くらゐの予定です。当分、他の仕事は断つて、没頭しようと思ひます。」(山岸外史宛書簡)五月末までかかってこの最初の書下し長編は完成された。その直後、長女園子誕生。 | きりぎりす ろまん燈籠 東京八景 みみづく通信 佐渡 清貧譚 服装に就いて 令嬢アユ 千代女 新ハムレツト 風の便り 誰 恥 |
昭和十六年十二月、日本は大きな戦争に突入した。「しかし、私は小説を書く事は、やめなかつた。もうかうなつたら、最後までねばつて小説を書いて行かなければ、ウソだと思つた。それはもう理屈ではなかつた。百姓の糞意地である。」(「十五年間」)あの戦時下に、太宰は質の高い文学活動を展開しつづけた。 | 新郎 十二月八日 律子と貞子 待つ 水仙 正義と微笑 小さいアルバム 花火 帰去来 故郷 禁酒の心 黄村先生言行録 花吹雪 不審庵 |
「私の一身上に於いても、いついかなる事が起るか予測出来ない。この際、読者に日本の作家精神の伝統とでもいふべきものを、はつきり知つていただく事は、かなり重要な事のやうに思はれて、私はこれを警戒警報の日にも書きつづけた。出来栄えはもとより大いに不満であるが、この仕事を、昭和聖代の日本の作家に与へられた義務と信じ、むきになつて書いた、とは言へる。」(「新釈諸国噺」序) | 鉄面皮 赤心 右大臣実朝 作家の手帖 佳日 散華 雪の夜の話 東京だより 新釈諸国噺(貧の意地 大力 猿塚 人魚の海 破産 裸川 義理 女賊 赤い太鼓 粋人 遊興戒 吉野山)竹青 |
十九年五月十二日から六月五日にかけて津軽地方を取材旅行、七月、「津軽」完成。十二月、仙台に赴いて魯迅在留当時のことを調査、それをもとにして、二十年二月、「惜別」完成。引き続く空襲警報下の三月、「お伽草子」を書きはじめる。妻子を甲府に疎開させたが、四月二日未明、空襲により家を損傷され、自身も甲府に移る。六月末、「お伽草子」完成。 | 津軽 惜別 お伽草子(瘤取り浦島さん カチカチ山 舌切雀) |
戦争は終わった。甲府空襲で焼け出された太宰は、終戦の時、青森県金木の生家にいた。それより約一年三カ月、生家の離れを借りての疎開生活がつづく。この巻には、その津軽疎開中に書かれた全作品を収める。 | パンドラの匣 薄明 庭 親といふ二字 嘘 貨幣 やんぬる哉 十五年間 未帰還の友に 苦悩の年鑑 チヤンス 雀 たづねびと 男女同権 親友交歓 トカトントン 冬の花火 春の枯葉 |
二十一年十一月、太宰は東京三鷹の旧居に帰ってきた。様々の雑誌が次々と創刊され復刊され、ジャーナリズムは未曾有のにぎわいを呈していた。ジャーナリズムの寵児として華やかな脚光を浴びたが、太宰は決して濫作はしなかった。一日の執筆量ほぼ五枚、一つ一つの作品に精魂を打ち込んだ。太宰文学を代表する幾多の名作がこの時期に生れた。
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メリイクリスマス ヴィヨンの妻 母 父 女神 フォスフォレッスセンス 朝 斜陽 おさん 犯人 饗応夫人 酒の追憶 美男子と煙草 眉山 女類 渡り鳥 桜桃 家庭の幸福 人間失格 グッド・バイ |
昭和十年発表の「もの思ふ葦」より死の直前の「如是我聞」に至るまでの一切の随想、序文、後記、草稿、断片、座談会、アンケートなどを収録。 | もの思ふ葦 碧眼托鉢 古典龍頭蛇尾 悶悶日記 思案の敗北 創作余談 一日の労苦 校長三代 九月十月十一月 当選の日 正直ノオト 困惑の弁 心の王者 酒ぎらひ 諸君の位置 作家の像 自信の無さ 自作を語る 弱者の糧 男女川と羽左衛門 金銭の話 革財布 芸術ぎらひ 津軽地方とチエホフ 織田君の死 わが半生を語る 徒党について 如是我聞 その他 |
※品切れ 佐藤春夫、井伏鱒二、山岸外史、伊馬春部、小田嶽夫、今官一、小山清、堤重久、菊田義孝、戸石泰一等の師友、知己、縁者などに宛てた現存書簡をすべて収録。 |
新発見草稿(人間失格、如是我聞、グッド・バイ他27篇)、メモ、手帖(鎌倉心中事件遺書、惜別構想メモ他)を完全収録。原稿を対比して示し、併読を可能にした画期的編集。最新の年譜、著作年表を付す |