イラスト: 寺西晃
          
        
              幼いころから磨かれた観察眼と黙っちゃいられない正義感。
              考え抜かれた言葉選びと胸がすくどんでん返しは、まさにエッセイのお手本。
              「姉のところには何故か面白いことが押し寄せてくる」と語る末妹が選んだ、
              家族、食、私、仕事のことから処世術まで。ちくま文庫オリジナル・アンソロジー。
            
          <草に寝そべる向田邦子>写真提供:かごしま近代文学館
        どんな手袋がほしいのか。
それは私にも判りません。
なにしろ、私ときたら、いまだに、これ一冊あれば無人島にいってもあきない、といえる本にもめぐりあわず、これさえあればほかのレコードはいらないという音も知らず──それは生涯の伴侶たる男性にもあてはまるのです。
多分私は、ないものねだりをしているのでしょう。一生足を棒にしても手に入らない、これは、ドン・キホーテの風車のようなものでしょう。でも、この頃、私は、この年で、まだ、合う手袋がなく、キョロキョロして、上を見たりまわりを見たりしながら、運命の神さまになるべくゴマをすらず、少しばかりけんか腰で、もう少し、欲しいものをさがして歩く、人生のバタ屋のような生き方を、少し誇りにも思っているのです。
(「手袋をさがす」より)
- 家族
 - 父の詫び状
 - ごはん
 - 白か黒か
 - 麗子の足
 - 丁半
 - 知った顔
 - 娘の詫び状
 - お辞儀
 - 父の風船
 - 字のない葉書
 
- 食いしんぼう
 - お八つの時間
 - 薩摩揚
 - 幻のソース
 - 水羊羹
 - お弁当
 - たっぷり派
 - 「う」
 - 「食らわんか」
 
- 犬と猫とライオン
 - 犬の銀行
 - 嚙み癖
 - 猫自慢
 - 六十グラムの猫
 - マハシャイ・マミオ殿
 - 中野のライオン
 - 新宿のライオン
 
- こだわりの品
 - 眠る机
 - 眼があう
 - 負けいくさ 東京美術倶楽部の歳末売立て
 - きず
 - 旅枕
 
- 旅
 - 鹿児島感傷旅行
 - 紐育(ニューヨーク)・雨
 - ないものねだり
 - 沖縄胃袋旅行
 - 反芻旅行
 
- 仕事
 - 一杯のコーヒーから
 - 放送作家
 - テレビドラマの茶の間
 - 花束
 - わたしと職業
 - 板前志願
 - 「ままや」繁昌記
 
- 私というひと
 - お軽勘平
 - 天の網
 - ポロリ
 - 正式魔
 - 電気どじょう
 - ヒコーキ
 - 黄色い服
 - 手袋をさがす
 
- 編者あとがき 向田和子
 - 解説 角田光代
 - 所収一覧
 
「向田邦子ベスト・エッセイ」解説
角田 光代
          
              向田邦子原作「字のないはがき」(西加奈子・絵)で「親子で読んでほしい絵本大賞」を受賞した
角田光代さんによる解説をお読みいただけます。
            
向田邦子著/向田和子編
            向田邦子
ベスト・エッセイ
          
          その随筆の中から、家族、食、犬と猫、こだわりの品、旅、仕事、私…、といったテーマで選ぶ。
【解説】角田光代
            ISBN: 978-4-480-43659-7/990円(10%税込)/
384ページ/カバーイラスト: 寺西晃
          
向田文学の原点!
向田邦子著/向田和子編
向田邦子シナリオ集 ── 昭和の人間ドラマ
迷いながらも人間らしく生きる人々を描く
向田邦子のテレビドラマ脚本のなかから
一話完結作「隣りの女」「きんぎょの夢」「毛糸の指輪」「眠り人形」「七人の刑事(十七歳三ヶ月)」の五篇を収録。
            ISBN: 978-4-480-43751-8/990円(10%税込)/
352ページ/カバーイラスト: 寺西晃
          

