論理って何だろう?13
- 講義
- 論理とは何か20
- 形式が大事21
- 他者と対話するために22
- この本の使い方22
楽しい!
もうその一言に尽きる。
とはいえ、それで尽きてしまっては申し訳がない。他にも分かりやすいとか役に立つといったよさがこの本にはいくらでもあるのだから。私自身論理学の入門書はいくつか出している。世の中にも論理学の本はものすごくたくさんある。論理学の教科書・入門書は、現在入手可能なものにかぎっても、百冊は越えるだろう。そして私はそのうちの何冊かを手にしたことがあるにすぎないが、この本は他に類例のない論理学の入門書になっていると確信している。
だって、楽しいんだもの。なんだ、やっぱりそれに尽きてるんじゃないかと言われてしまいそうだが、ともかくマンガがおもしろくて、しばしば笑わされる。こんなふうに笑いながら論理学を学べるというのも驚きだが、そもそも論理学がこんなにギャグのネタになるというのもびっくりである。でも、そうか、考えてみたら論理学はギャグになるのですね。論理学そのものは厳格で融通の利かない学問である。その、かっちり論理で固めたところからゆるくはみ出てくると、それが笑いにつながる。また、ひたすら論理的にやろうとすると、ときに非常識なことにもなり、そこでもまた笑いが生じる。仲島さんはそのあたりを実にうまくマンガにしている。
また、登場する四人の高校生たちが魅力的だ。学習マンガというものがそもそも楽しいのだが、しかし、ややもすると「学習」ということにひきずられてか、マンガが平板になりがちなのではないだろうか。それに対して本書の四人はそれぞれが個性を発揮して、存分に活躍する。もうそれが実に楽しい。(なお、彼らに論理学を指南する「カメキ先生」は実在の人物とは無関係である。)
内容についても述べておこう。現代の論理学は「記号論理学」と呼ばれ、記号を駆使する。しかし、とくに数学嫌いで論理にあまり自信のない人ほど、記号に対して強い拒否感が働くようである。だから、本当に最初の入門では、記号をいきなり駆使するのではなく、記号は必要最小限にして、むしろ論理学の考え方を伝えるべきだろう。本書はそのような姿勢で作られている。さらに、論理学は役に立つという観点から、できるだけ生活や仕事にも生かせるような話題を扱っている。しかも、楽しい。あ、けっきょくそこに戻ってきてしまった。
問題も豊富にとりそろえてあるし、もちろん解答も解説もきちんとついているので、独習にもピッタリである。しかし私としては、これまで大学で論理学の授業をもち、不本意にも多くの学生たちに安眠をもたらしてきた先生方に本書を届けたい。この本を使えば、少なくともマンガを読んでいる間は学生諸君も起きているはずである。