梅田望夫インタビュー「ネットは書籍出版を変えるか」梅田望夫

 たとえば、ちくま新書は、僕の本が582番ですから、約600冊すでに刊行されているとすると、そのうちの売り上げ順位101番から600番までの500冊はロングテールとして、たとえば「なか見!検索」して良いとする、上位100冊は「なか見!検索」できない、とする。著者の気持ちとしても、本を出して何年かして売れなくなってしまったときに、絶版になるくらいなら、「なか見!検索」やグーグル・プリントによって、誰かに読んでほしい、という気持ちはあると思うのです。

■ネット読者が『ウェブ進化論』をリアル書店で買った理由

――『ウェブ進化論』は刊行直後、ネット書店のみならずリアル書店でもすぐに売り切れの状態になり、私たちは、ネットで本書を知った読者がリアル書店に買いに走ったということに少し驚いたのですが。

 やはり「本は本屋で買うものだ」という人が多かったことをあらわしていると思います。ネット書店、たとえばアマゾンは注文してから手元にとどくまで、だいたい2日はかかりますし(「24時間以内に発送」の場合)。

 アメリカの場合は、本屋が近くにないことが多いです。日本の書店数は、減ってきているとはいえ、2万店近くあり、4万店くらいのコンビニエンスストアの約半分の店舗数がある。

 日本の地方は、アメリカにちょっと似ているかもしれません。アメリカでは、アマゾンができて、ローカルの書店が軒並み潰れた、という現実があります。本をきちんと品揃えしているチェーンは本当に少ないし、のこりは全部アマゾン、という感じになってしまっています。アメリカでは、書店まで行くのに車で30分かかって、行っても目的の本がなかった、ということがありますから、それならアマゾンに頼む、という感じになっている。

 アマゾンは今度、アマゾン・アップグレードというサービスも出します。アマゾンから一度買えば、その本を仮に古本屋に売りはらってしまって手元に現物がなくても、オンラインで同じものを読める。このサービスは、アメリカのローカルの書店にとって本当にきついと思います。

 日本では「本屋で本を買う」というのは、基本的に大都市圏は変わらないのではないでしょうか。ただ、特に地方の中小書店は、相当工夫していかないと厳しい、という流れは、やはりあると思います。

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