ちくまの教科書 > 国語通信 > 連載 > 定番教材の誕生 第1回(5/5)
第1回 “恐るべき画一化”―定番教材はなぜ消えない
第2回 “生き残りの罪障感”―定番教材の法則
第3回 “復員兵が見た世界”―定番教材にひそむ戦場体験
第4回 “ぼんやりとしたうしろめたさ”―定番教材の生き残り
第5回 “豊かな社会の罪障感”―定番教材のゆくえ
野中潤(のなか・じゅん)
聖光学院中・高教諭
日本大学非常勤講師
著者のブログ
BUNGAKU@モダン日本
第1回 “恐るべき画一化”―定番教材はなぜ消えない
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なぜ敗戦後に定番化?

 ところが、橋本暢夫さんの調査によると、戦前の中等学校の国語の教科書において、夏目漱石の「こころ」の採録は、まったく見当たらないらしいのです。

 ということは、戦前はまったく採録されることがなかった「こころ」が、国語の教科書に夏目漱石が登場して50年目にあたる1956(昭和31)年になって初めて教科書に掲載され、瞬く間に他の教材を脇役へと追いやって、定番教材として不動の地位を築き上げてきたということになります。夏目漱石の「吾輩は猫である」が『再訂 女子国語読本』に登場してから100年が経ちましたが、「こころ」に関しては、前半50年と後半50年とではまったく好対照の採録状況であると言うことでもあります。

 ここであらためて問いを立てておきます。

 いったい「こころ」はどういうわけで定番教材としての地位を築き上げることが出来たのでしょうか。いや、いったいどうして定番教材であり続けているのでしょうか。

(第2回につづく)

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