軍医、作家、啓蒙家どの分野でも一流の仕事を残した複雑怪奇の天才の全体像!医師を家業とする家に生まれ、幼少時から神童と呼ばれた森鷗外。東大医学部に学び、ドイツ留学を経て、陸軍軍医・小説家など多くの分野で膨大かつ質の高い仕事をこなした。複雑怪奇な天才の全体像が今、明らかに。

「おわりに」より

ナイチンゲールの一生は、決してドラマチックではありません。実に地味で、質素で、また厳格な一生でした。しかし彼女が成し遂げた仕事は、人類の〝暮らしと健康〞というテーマに大きな光を投げかけたのです。特に看護という世界にとって、ナイチンゲールの存在は絶大なものがあり、永久にその業績は忘れられることはないでしょう。
最後の晩餐
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目次

まえがき

現代によみがえるナイチンゲール/実像のナイチンゲールに近づくために/〝クリミアの天使〞というイメージはどこからきたのか

第一章

社会的自立を求めて苦悩の日々を送る

一九世紀の英国社会/フロレンスの父と母/ナイチンゲール家の邸宅/ナイチンゲール家の人々/両親と娘たち/娘たちの初舞台/苦悩の日々/使命の発見/天職に向けて/看護師への道、遠のく/ローマへの旅/ナイチンゲールにとっての神/長い、長い恋の結末/カイゼルスヴェルト学園/家族からの独立

第二章

《淑女病院》勤務からクリミア戦争従軍へ

淑女病院の総監督として/手始めにしたこと/実務者としてのナイチンゲール/一年間でやり遂げたこと/クリミア戦争の勃発/スクタリに向けて出発/スクタリの兵舎病院の実情/スクタリにおけるナイチンゲール/戦場におけるもう一つの変化/帰国後の決心

第三章

社会科学者として成長したナイチンゲール

数学や統計学のとりこになった青年期/統計学の水準とナイチンゲールの関心/衛生改革者としての基礎を築く/初めて行った社会調査/一八五〇年頃の英国の病院実態/陸軍組織改革の企て/「勅選委員会」の仕事/二つの報告書

第四章

ナイチンゲールが作成した統計図表

英国兵士の死因別死亡率/国内の陸軍兵士たちの置かれた劣悪な生活環境/医療統計分野の草分け的存在/ケトレを凌いだ実力

第五章

病院建築家の顔を持つナイチンゲール

『病院覚え書』を執筆/病院建築構造による健康被害/ 〝病院病〞発生の原因/パビリオン構造の病院建築の利点/ナイチンゲールが提言した病棟構造の特徴/ナイチンゲール病棟の評価/現代の英国病院建築家の見解

第六章

ナイチンゲール、〝看護とは何か〞を解く

『看護覚え書』の価値/人類史上初の科学的看護論/『看護覚え書』のコア概念/〈自然の回復過程を助ける〉のが看護の仕事/例えば、インフルエンザに罹った人へのケアの基本は?/〈生命力の消耗を最小にするケア〉とは?/各論で述べていることは現代人も守るべきこと/日本で読み継がれている改定第二版『看護覚え書』

第七章

看護師教育を拓いたナイチンゲール

〝ナイチンゲール基金〞の創設と学校開設の兆し/近代看護の夜明け――ナイチンゲール看護師訓練学校の開設/初期のナイチンゲール看護師訓練学校の形/教育訓練システムの概要/教科書の指定と人格形成教育/世界に足跡を残した〝ナイチンゲール〞たち/日本におけるナイチンゲール方式の教育

第八章

病院看護組織と看護師の働き方改革

看護師は病人に害を与えてはならない/看護部門の独立と自立/看護管理者に求められるもの/合理的で効率のよい組織の形成/看護師の健康を守るための体制づくり

第九章

助産師養成計画とその挫折をバネに

日本の助産の歴史概観/英国における助産事情/ナイチンゲールの決意/産褥熱という感染症を巡る医師たちの見解/分娩時の死亡率を下げるための提言/助産師教育への夢

第一〇章

地域看護師養成事業と公衆衛生看護制度のめばえ

地域看護のスタート地点││リヴァプール/ナイチンゲールの協力と関与/英国の地域看護制度の特徴/ナイチンゲール、世論に訴える/ナイチンゲールの地域看護師像/地域看護師の訓練システム/ナイチンゲールからのメッセージ

第一一章

福祉国家への布石

一九世紀英国の貧困階層の実態/ナイチンゲールによる救貧院の実態調査/ナイチンゲールによる救貧法改革案ABC/首都救貧法の制定とその意義/『救貧覚え書』にみるナイチンゲールの救貧観

第一二章

ナイチンゲールが書いた印刷文献と手稿文献

膨大な著作をまとめるプロジェクト/『ナイチンゲール著作目録』の全体像/『ナイチンゲール著作目録』邦訳の現状/ナイチンゲールの手稿文献/ナイチンゲール看護学校内のナイチンゲール文献/カナダのナイチンゲール研究者、リン・マクドナルド博士

第一三章

穏やかな晩年

サウス街一〇番地の住処/穏やかな日々/動物好きだったナイチンゲール/親しい人びととの別れと新たな仕事/九〇年を生きて
おわりに
真実の姿が見える伝記を/本書の特徴は二点/ひとりの女性の生き方として
引用・参考文献
図版の出典
年表
金井一薫<span>(かない・ひとえ)</span>

金井一薫(かない・ひとえ)

1948年生まれ。東京大学医学部附属看護学校卒業。慶応大学文学部卒業。日本社会事業大学大学院にて社会福祉学博士号取得。一貫してナイチンゲール思想研究に勤しむ傍ら、保健医療福祉の連携を支えるため「KOMIケア理論」の構築に力を入れる。1987年ナイチンゲール看護研究所設立、所長。徳島文理大学大学院看護学研究科教授。東京有明医療大学名誉教授。著書に『新版 ナイチンゲール看護論・入門』(現代社)、『ケアの原形論』(現代社)、監訳に『実像のナイチンゲール』(リン・マクドナルド著 現代社)など多数。

金井一薫(かない・ひとえ)

よみがえる天才9 ナイチンゲール

ナイチンゲールは統計学を駆使して感染予防策を訴え、新しい病室の在り方を提案、医療の世界での看護師の地位向上を図るなど、新しい時代を切り拓いた人だった。

ちくまプリマー新書430/定価:990円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68455-4

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ナイチンゲール よみがえる天才9

森鷗外 よみがえる天才8 書影
森鷗外 よみがえる天才8 海堂尊<span>(かいどう・たける)</span>
軍医、作家、啓蒙家どの分野でも一流の仕事を残した複雑怪奇の天才の全体像!医師を家業とする家に生まれ、幼少時から神童と呼ばれた森鷗外。東大医学部に学び、ドイツ留学を経て、陸軍軍医・小説家など多くの分野で膨大かつ質の高い仕事をこなした。複雑怪奇な天才の全体像が今、明らかに。

「序章」より

鷗外の作品群は、彼の壮大な人生を描き出した、私小説の大河小説であると言うこともできるでしょう。自己の感情を隠匿し、二重の仮面を被り続けた鷗外の本音が、創作物の中にあっさり見つかることも多々あります。
……小説家、文芸批評家、軍陣衛生学の樹立者、軍医にして最高位の軍医総監、百科事典派的な啓蒙家、社会主義的思想家、国体護持的思想家など、鷗外を形容する肩書きは多数あります。それは全て鷗外であり、全て鷗外ではないのかもしれません。
最後の晩餐
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目次

序章

あなたは「森鷗外」を知っていますか?

1章

津和野の侍医の嫡男、東京医学校へ

文久2年(1862)1歳〜明治14年(1881)20歳

2章

陸軍軍医部に出仕し、陸軍官費留学生に

明治15年(1882)21歳〜明治17年(1884)23歳

3章

ドイツの青春

明治17年(1884)23歳〜明治21年(1888)27歳

4章

軍陣衛生学確立と戦闘的言論時代、鷗外誕生

明治21年(1888)27歳〜明治26年(1893)32歳

5章

日清戦争、台湾戦役と小倉左遷

明治27年(1894)32歳〜明治36年(1903)42歳

6章

日露戦争、軍医総監就任と「豊穣の時代」

明治37年(1904)43歳〜大正5年(1916)55歳

7章

大正期最初の軍医総監、退役後の文化活動

大正2年(1913)52歳〜大正11年(1922)61歳
森鷗外年譜
陸軍軍医総監一覧
付録地図
参考図書・文献
海堂尊<span>(かいどう・たける)</span>

海堂尊(かいどう・たける)

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を生かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。デビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ、同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(ともに宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋)。

海堂尊(かいどう・たける)

よみがえる天才8 森鷗外

陸軍軍医、作家、啓蒙家として膨大かつ質の高い仕事をした森鴎外。
留学、創作、出征、論争。豊穣でありながら複雑怪奇の天才の全体像を見晴らす本格伝記。

ちくまプリマー新書399/定価:1012円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68425-7

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森鷗外 よみがえる天才8

北里柴三郎 よみがえる天才7 書影
北里柴三郎 よみがえる天才7 海堂尊<span>(かいどう・たける)</span>
この一冊で全生涯がわかる決定版伝記西洋化を急ぐ明治の日本をコレラ、ペストなど獰猛な感染症が襲う。国民の健康維持と社会の衛生は、近代化の重要テーマだった。恩師、盟友、抵抗勢力……出会いに恵まれ、渦巻く批判と奮闘する。日本の医学と医療の基盤を創った巨人の足跡をたどる。よみがえる天才7北里柴三郎海堂尊

「序章」より

北里は帰国後、医学的に誤謬ごびゅうを重ねました。……
……伝染病研究所に君臨する「魔王」と呼ばれ、医師会等でも封建領主のように振る舞いました。しかし医学は、誤解と誤謬を是正しながら築き上げられていくものです。
……彼の人生を理解することは、現在の衛生行政の誤謬を理解する一助になり、その足跡をなぞることで、彼がめざした理想の社会の姿を垣間見ることができます。北里柴三郎が直面していた問題は、決して過去のことではないのです。
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目次

序章

あなたは「北里柴三郎」を知っていますか?

1章

生涯の敵・伝染病と、弟妹のコレラ死で遭遇する

嘉永5年(1853)1歳〜明治3年(1870)18歳

2章

熊本で医学の師・マンスフェルトと出会う

明治3年(1870)18歳〜明治7年(1874)22歳

3章

遅咲きの東大医学生、「同盟社」の頭領となる

明治8年(1875)23歳〜明治16年(1883)31歳

4章

内務省衛生局照査課から東京試験所兼務へ

明治16年(1883)31歳〜明治18年(1885)33歳

5章

コッホ四天王としての快進撃

明治19年(1886)34歳〜明治24年(1891)39歳

6章

衛生行政の礎、「伝染病研究所」創設

明治25年(1892)40歳〜明治45年(1912)60歳

7章

医療の未来を見据え、社会貢献に邁進した晩年

大正3年(1914)62歳〜昭和6年(1931)79歳
細菌発見略史(1873〜1906)
北里柴三郎年譜
栄典一覧
参考図書・文献
海堂尊<span>(かいどう・たける)</span>

海堂尊(かいどう・たける)

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を生かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。デビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ、同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(ともに宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋)。

海堂尊(かいどう・たける)

よみがえる天才7 北里柴三郎

日本の医学と医療の基盤を創った巨人の足跡をたどる本格伝記。
医学研究とは、社会の衛生とは、感染症とどう戦うか――北里の残した答えは現代にも生きている。

ちくまプリマー新書398/定価:1012円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68423-3

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北里柴三郎 よみがえる天才7

ガウディ よみがえる天才6 書影
ガウディ よみがえる天才6 鳥居徳敏<span>(とりい・とくとし)</span>
名画をのこし、近代の夢を描いた青年はコンプレックスまみれの青年だった―

「あとがき」より

天才だから偉大な作品を生み出せるわけではない。偉大な作品を生み出したから天才と呼ばれるのです。天才は天から降って湧いたようなインスピレーションから創作するわけではない。もしそうであるなら、天才を崇めることができても、天才から学ぶことはないのです。ガウディは、「人生は戦いである」と言います。戦う相手は自分自身ですし、自らの境遇・環境です。ガウディ建築は天から授かったものでなく、この飽くことなき戦いの戦利品なのです。
 私のガウディ研究は、天才と呼ばれるガウディを凡人に戻すことでした。すなわち、ガウディの創作方式が一般人と変わらぬ人間の創作方式に基づいていたことを証明することにありました。
最後の晩餐
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目次

はじめに

国宝と世界遺産の建築家/理想的な生き方

第1章

ガウディは才能に恵まれたのか?

天与の才/ガウディの家族/生い立ち/ガウディの資質

第2章

生まれた場所と時代

地縁関係が強いレウス/なぜガウディ建築はバルセロナに集中しているのか/文化の復興を求めるカタルーニャ

第3章

できの悪い学生だったの?

恵まれていたガウディ/中等教育時代の成績/中等教育時代の学友/バルセロナ建築学校

第4章

建築事務所でバイトをしながら学ぶ

高まる建築需要/実践して学ぶアルバイト/師ジュアン・マルトレイ/ガウディの同僚たち

第5章

パトロン、グエル伯爵とコミーリャス侯爵との出会い

グエル家とロペス家/王家とも親しかった/パトロンと建築家

第6章

サグラダ・ファミリア贖罪聖堂が着工されるまで

聖堂建立のために献金した人々とは/赤字続きの中、建設は続けられた/「降誕の正面」誕生/ガウディの聖堂

第7章

サグラダ・ファミリア聖堂に専念

ガウディの断食/「生まれつつある聖堂」/「神の使者」・「カタルーニャの天才」/サグラダ・ファミリア聖堂完成予想図

第8章

唯一無二のガウディ建築

様式の時代から折衷主義の時代へ/ガウディ建築の変遷―〈歴史主義〉〈自然主義〉〈幾何学主義〉/ガウディ建築の三つの様式

第9章

貧者ガウディと権威者ガウディ

貧者ガウディ/社会的評価と公的役職/カサ・ミラの衝撃/権威者ガウディ

第10章

凡人と天才

凡人と天才/独創と模倣―一.人間は創造しない、二.人間は発見し、その発見から出発する、三.自然法則を探求するもの、四.独創性とは、起源に戻ること/天才ガウディ
あとがき
ガウディ年表
鳥居徳敏<span>(とりい・とくとし)</span> 岡村隆弘 撮影

鳥居徳敏(とりい・とくとし)

1947年浜松市出身。名古屋工業大学建築学科卒業。神奈川大学名誉教授。73年渡西。マドリッド工科大学建築学部にてスペイン建築史を専攻。83年、ガウディ建築の二大造形源泉を解明した研究書『ガウディの謎に満ちた世界』をスペインの国費で出版。この本は、今でもサグラダ・ファミリア聖堂の建築家や模型職人たちの基礎資料となっている。著書に『ガウディの建築』『アントニオ・ガウディ』『ガウディ建築のルーツ』(鹿島出版会)、『建築家ガウディ――その歴史的世界と作品』(中央公論美術出版)など。

鳥居徳敏(とりい・とくとし)

よみがえる天才6 ガウディ

歴史や自然に学び、幾何学を駆使してたどり着いた独特の建築様式は今なお新鮮だ。
サグラダ・ファミリア聖堂やグエル公園はどのようにして生まれたのか。

ちくまプリマー新書370/定価:1078円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68396-0

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ガウディ よみがえる天才6

コペルニクス よみがえる天才5 書影
コペルニクス よみがえる天才5 高橋憲一<span>(たかはし・けんいち)</span>
名画をのこし、近代の夢を描いた青年はコンプレックスまみれの青年だった―

「あとがき」より

 彼に天賦の才があったのは、お仕着せあるいは出来合いの「問い」ではなく、学問的問いを自ら発見し、環境が課す困難にもかかわらず、めげずに問い続け、考え抜いていったことだった。問いを持ち続けること、その問いを吟味して鍛えること、またその問いが生み出す「新たな問い」を捨てないこと。そして、諦めない。この粘り強さが、コペルニクスのもっていた才能である。そしてこれは、天才と称される人々に共通する重要な特徴ではなかろうか。
最後の晩餐
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目次

はじめに

第1章

青少年期のコペルニクスーーポーランドからイタリアへ

どのような家庭に生まれたか/コペルニクスの生きた時代/天文学に関心を寄せていた青年期/イタリアで法学、さらに医学を学ぶ/天文学のための基盤を深めた留学時代

〈コラム〉

宇宙の二球モデル/プトレマイオス説の概要

第2章

留学帰りの聖堂参事会員兼医師の重要な余技

医師コペルニクス/司教の秘書官として働く/初めての出版は文芸書の翻訳/「コメンタリオルス」を執筆/地球は動くという革新的な理論/地球は三重運動によって回転している!?/地動説を思いついた動機に関するさまざまな意見/天文学の伝統を批判する/コペルニクスが思い描いた宇宙/いかにして太陽中心説に到達したか/地球を動かすことを決意した瞬間

〈コラム〉

プトレマイオス説の最終モデルとその問題点/ウプサラ・ノートの分析

第3章

天文学者として名が広まる聖堂参事会員

職務に追われる日々/天文学者としての名が広まっていく/問題を見つけ考え抜いたものに閃きが訪れる/多忙な日々と捏造されたスキャンダル/ローマ教皇も地動説を弾圧せず

〈コラム〉

コペルニクスにおける地動説の理論的展開

第4章

『天球回転論』の出版ーー地動説の公表

若き数学教授との出会いが運命を変えた/古代の諸仮説を捨てた理由/『天球回転論』出版へ向けて動き出す/亡くなる当日に完成した主著をめぐって/太陽中心説が革命的な理由

〈コラム〉

実在主義的地動説の問題点とは?

第5章

静かな革命ーー天球回転論が起こす波紋

地動説が世界観をかえてゆく/コペルニクスのパラメーターを活用したグレゴリオ暦の出現/太陽中心説を改作した宇宙体系の模索/ブルーノ、ケプラー、ガリレオの登場/ケプラーの法則/ガリレオの天体観測/ガリレオの『天文対話』と宗教裁判/コペルニクスは天才だったのか?
あとがき
参考文献
高橋憲一<span>(たかはし・けんいち)</span>

高橋憲一(たかはし・けんいち)

1946年生まれ。早稲田大学理工学部電気工学科卒業。東京大学大学院理学研究科退学。理学博士。科学史・科学基礎論専攻。九州大学大学院比較社会文化研究院教授を務め、九州大学名誉教授。『ガリレオの迷宮――自然は数学の言語で書かれているか?』(共立出版 2006)で、第60回毎日出版文化賞を受賞。共著に『数学の歴史II――中世の数学』(共立出版)。訳書に『ロジャー・ベイコン大著作』(朝日出版社)、ピーター・ディア『知識と経験の革命――科学革命の現場で何が起こったか』(みすず書房)、コペルニクス『完訳 天球回転論』(みすず書房)ほか。

高橋憲一(たかはし・けんいち)

よみがえる天才5 コペルニクス

長く天文学の伝統であった天動説を否定し、地動説を唱えたコペルニクスによって、近代科学は大きな一歩を踏み出した。どのように太陽中心説を思いついたのか。

ちくまプリマー新書364/定価:946円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68389-2

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コペルニクス よみがえる天才5

アレクサンドロス大王 よみがえる天才4 書影
アレクサンドロス大王 よみがえる天才4 澤田典子<span>(さわだ・のりこ)</span>
名画をのこし、近代の夢を描いた青年はコンプレックスまみれの青年だった―

「あとがき」より

 本書の最終章で見たように、アレクサンドロスの死後の強靱な生命力には驚くべきものがあります。アレクサンドロスは現在に至るまで一度たりとも忘れ去られたことはなく、彼の物語は世界各地で絶えることなく語り継がれてきました。死後二千数百年経た今も威光を放ち、人々を魅了してやまないアレクサンドロスは、まさしく、「よみがえる天才」と言えるでしょう。
最後の晩餐
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目次

はじめに ヴェルギナのアレクサンドロス

第 1 章

アレクサンドロスに迫る

「マケドニア王」としてのアレクサンドロス/ローマのアレクサンドロス伝/「失われた歴史家たち」/二極分化したアレクサンドロス像/「ローマの創造物」/「アレクサンドロス・モザイク」

第 2 章

東地中海世界とマケドニア

アカイメネス朝の興隆/ペルシア戦争/ギリシア世界を操るペルシア/前四世紀前半のギリシア世界/マケドニアの登場/ギリシア世界への参入/前四世紀前半のマケドニア/フィリポス二世による国家改造/マケドニアの軍隊/コラム1 サリッサは「超強力兵器」か?/マケドニアの社会/ペルシアの影響/ギリシア制覇への道のり/なぜギリシアを征服できたのか

第 3 章

アレクサンドロスの登場

「英雄」の誕生/母オリュンピアス/「もう一人の父」アリストテレス/父を模倣する/「お家騒動」/フィリポス二世の暗殺/アレクサンドロスの即位/コラム2 ヴェルギナの王墓/バルカンの平定

第 4 章

ペルシア帝国の打倒

東方遠征論の系譜/遠征の始まり/グラニコス河畔の戦い/小アジアの都市の「解放」/イッソスの戦い/フェニキアの占領/アレクサンドリアの建設/「神の子」/ダレイオス三世との最終決戦へ/アカイメネス朝の滅亡/ペルセポリス宮殿の炎上/ダレイオス三世の死

第 5 章

果てしない征服

東方協調路線の展開/フィロタス事件/中央アジアでの苦戦/クレイトス刺殺事件/跪拝礼の導入/カリステネスの死/「暴君」アレクサンドロス/インドへの侵攻/ヒュファシス河畔の「騒擾」/東方遠征の完了/オピスの和解/最期の日々/なぜペルシアを征服できたのか/東方協調路線の意義/アレクサンドロスの原動力/アレクサンドロスは神になろうとしたのか/アレクサンドロスのしたこととは何だったのか

第 6 章

シンボルとしてのアレクサンドロス

神話化の始まり/「アレクサンドロス帝国」の瓦解/ローマのアレクサンドロス/プルタルコスのアレクサンドロス像/「アレクサンドロス・ロマンス」/イスラーム世界のアレクサンドロス/ヨーロッパのアレクサンドロス/アレクサンドロスに憧れる人々/ギリシアのアレクサンドロス/コラム3 マケドニア問題――「アレクサンドロス」の争奪/歴史研究のなかのアレクサンドロス――ドロイゼンとターン/コラム4 「ヘレニズム」とアレクサンドロス/新しいアレクサンドロス像/コラム5 「もしアレクサンドロスが……」
あとがき
アレクサンドロス年表
主要参考文献
澤田典子<span>(さわだ・のりこ)</span>

澤田典子(さわだ・のりこ)

1967年富山県生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、千葉大学教授。専門は古代ギリシア・マケドニア史。主な著書に『アテネ 最期の輝き』(岩波書店 2008)、『アテネ民主政──命をかけた八人の政治家』(講談社 2010)、『アレクサンドロス大王──今に生きつづける「偉大なる王」』(山川出版社 2013)、A Companion to Ancient Macedonia(共著、Wiley-Blackwell 2010)、The Oxford Handbook of Demosthenes(共著、Oxford Univ. Press 2019)など。

澤田典子(さわだ・のりこ)

よみがえる天才4 アレクサンドロス大王

前人未到の大征服を成し遂げ、三二歳の若さで世を去ったアレクサンドロス。
時には「英雄」として、時には「暴君」として描かれる「偉大なる王」の実像に迫る。

ちくまプリマ―新書362/定価:946円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68386-1

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アレクサンドロス大王 よみがえる天才4

モーツァルト よみがえる天才3 書影
モーツァルト よみがえる天才3 岡田暁生<span>(おかだ・あけお)</span>
名画をのこし、近代の夢を描いた青年はコンプレックスまみれの青年だった―

第1章より

 人間である限り、必ずやモーツァルトの音楽は心の琴線のどこかに触れてくる。なぜかといえば、彼が描くのはどんな普通の人でも必ず経験する感情だから。彼の音楽を理解するのに特別な人である必要はない。まさにここにこそ、モーツァルトの音楽の並外れた普遍性がある。モーツァルトの天才は、異様な早熟でも、傷一つない流麗さでも、狂気と薄幸でもなく、「人間が人間であるための条件」を描き尽くしたことにある。ありきたりの人間の喜びと悲しみの間の無限の彩を愛しいと思うこと――これだけがモーツァルトの天才を理解するための条件とすらいっていいだろう。
最後の晩餐
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目次

第 1 章

モーツァルトの比類なさはどこに?

楽しいのに寂しい/強いのに壊れそう/「うつろい」への異常な感性/モーツァルトは特別な人間を描いたりしない

第 2 章

「天才君」の栄光と悲惨

「天才少年」はいくらでもいる?/レオポルト・モーツァルト――世界で最初の教育パパ/教育ビジネスで成功する!/核家族の温かさと息苦しさ/モーツァルト・ブラザーズ結成!/天才子役の宿命

第 3 章

「ある」と「なる」―天才の二つのありよう

庇護があった天才となかった天才/天才は末世に生まれる?/時代に殉じる vs. 時代を開く/天才は「がんばること」を拒否する?

第 4 章

失意は天才少年の宿命

天才、二十すぎれば/モーツァルト、大いに羽をのばす/就活の挫折と母の死/成功するには度胸と計算が要る/たぎる野心と大人の顔

第 5 章

教育パパの呪縛は結婚で断つ

モーツァルトと父親コンプレックス/お父さんは僕の価値がわかってない!/大脱走/婚約/新婚オペラ

第 6 章

「天才」とは何?

職人と芸術家の違い/音楽家はいつから「芸術家」になったか?/カントの天才観/モーツァルトはぶっとんでいる

第 7 章

フリーになるということ

「自分らしくある」ということ/勤め人にならずどう作曲家は食っていくか?/資本主義の黎明期に生まれたモーツァルト/「予約演奏会」は作 曲家の個展だ/ピアノ協奏曲の魅力/世界中の人と友達になる夢

第 8 章

芸術家と実人生

伝記は作品のミステリーを解く鍵?/モーツァルトの創作と母の死/「厳父」の恐怖/女性たちの肖像

第 9 章

美の冷酷さについて

みなぎる創造力と冷笑/ダ・ポンテ三部作と愛への不信/美のサディズム/モーツァルトの喜劇は痛々しい/真善美をあざ笑う

第 10 章

実存の不安と「まあこんなものか……」の希望

芸術家は人間についての科学者だ/明るく前向きの達観/啓蒙主義の時代の男女関係/恋愛結婚は近代のイデオロギー?/モーツァルトの幻滅と希望

第 11 章

「ところで」の奇跡

予告なき改行/モーツァルトは理屈を嘲笑する/生と死の予告なき/舞台転換/幸福は突然見いだされる

第 12 章

流麗さについて ― モーツァルトの作曲レッスンを受ける

モーツァルトのテーマはドミソばっかり?/モーツァルトの名作をいじってみる/モーツァルトはドとソだけで何でも出来た/モーツァルトは名ジョッキー/誰もこんな風には作曲できない……/時間の布を切断する

第 13 章

晴れた日のメランコリー

晩年のモーツァルトはほとんど曲を書いていない?/晴れた青空の諦念/悲しみでも幸せでもない謎の言語/春は巡る/エロスという名の希望

第 14 章

モーツァルトは神を信じていたか?

死は人間の最上の友?/モーツァルトは宗教音楽と相性が悪かった?/宗教音楽は決まりごとが多い/フリーメーソンのための葬送/近代人と時間の恐怖

第 15 章

幸福な阿呆に神は宿る

オルゴールのメロディー/魔法の箱を開けてみる/『魔笛』の奇跡/鈴を振り回す子ども/「あれ!」と叫ぶ子ども/人が神に近づくとき
これだけは聴きたいモーツァルト名演奏
モーツァルト略年表
人名/モーツァルト作品索引
岡田暁生<span>(おかだ・あけお)</span>

岡田暁生(おかだ・あけお)

1960年京都生まれ。音楽学者。京都大学人文科学研究所教授。『オペラの運命』(中公新書)でサントリー学芸賞を受賞。1000年あまりにおよぶ西洋音楽の流れを鮮やかに描いた『西洋音楽史』(中公新書)は高い評価を受け、ロングセラーとなっている。他の著書に、『恋愛哲学者モーツァルト』(新潮選書)、『音楽の聴き方』(中公新書)、『「クラシック音楽」はいつ終わったのか?』(人文書院)、『オペラの終焉』(ちくま学芸文庫)、『西洋音楽史』(放送大学教材)、『リヒャルト・シュトラウス』(音楽之友社)、『クラシック音楽とは何か』(小学館)など多数。

岡田暁生(おかだ・あけお)

よみがえる天才3 モーツァルト

完璧なる優美、子どもの無垢、美の残酷と壊れたような狂気、楽しさと同居する寂しさ――モーツァルトとはいったい何者だったのか? 天才の真実を解き明かす。

ちくまプリマ―新書358/定価:1012円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68383-0

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モーツァルト よみがえる天才3

レオナルド・ダ・ヴィンチ よみがえる天才2 書影
レオナルド・ダ・ヴィンチ よみがえる天才2 池上英洋<span>(いけがみ・ひでひろ)</span>
名画をのこし、近代の夢を描いた青年はコンプレックスまみれの青年だった―

はじめにより

ではなぜこれほど未完成だらけ、計画倒ればかりの芸術家が、西洋の美術史を代表する人として知られているのでしょう。〈ラ・ジョコンダ〉や〈最後の晩餐〉ほど広く世に知られた作品は他になく、レオナルドほど誰もが知っている芸術家の名前もたしかに無いのです。(中略)本書では、そうした理由をひとつひとつ追いながら、この不思議を一緒に解き明かしていきます。レオナルド・ダ・ヴィンチを称して「万能の天才」とはよく言われることですが、その「万能の天才」というレッテルでは単純に片付けることのできない、波乱に富んだ一生をおくった、重層的で複雑で、不運と失敗だらけの「偉大なる普通の人」としてのレオナルドの姿が浮かび上がってくるはずです。
最後の晩餐
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目次

はじめに ― 「未完成作」ばかりの芸術家

第1章

ルネサンスと共に誕生した人

どのような家庭に生まれたか/五人の母と一六人の弟妹/芸術家という道/花の都フィレンツェ/ルネサンスという特殊な社会とメディチ家

第2章

若き日のレオナルド

師匠との共作/工房での教育とアカデミア/工房内協働と工学的素養/風景素描と単独デビュー作/〈ブノワの聖母〉が持つ「醜さ」の重要性/未完癖と挫折

第3章

万能性の開花

自薦状/レオナルドの先生たち/パチョーリとの対話/演出家としての成功/画家としての活動/長い法廷闘争/姿を現した壁画/史上最大の挑戦/絶頂と暗転

第4章

その暮らしと人となり

当時の年収とレオナルドの稼ぎ/レオナルデスキたち/愛と友情/レオナルドの顔

第5章

作品を読み解く① 〈最後の晩餐〉 ― レオナルドの試行錯誤を辿る

構図上の試行錯誤/観相学による性格描写/聖数三と波紋/技法上の苦悩/作品の受難の歴史

第6章

放浪の日々

風雲急を告げる半島情勢/転戦の日々/世紀の対決

第7章

科学と思想

飛翔実験に見る近代性/科学的事実と聖書/知識共有のための工夫

第8章

作品を読み解く② 〈ラ・ジョコンダ(モナ・リザ) 〉 ― レオナルドが辿り着いた世界観

証言者たち/現ルーヴル作品はリザ夫人の肖像画か?/状態と様式/アナロギア/描かれた世界観

第9章

晩年 ― 旅の終わり

ローマでの不遇/あったかもしれない二度目の「世紀の対決」/フランスでの穏やかな死
おわりに ― 最初の近代人から学ぶこと
巻末資料① ― 絵画作品リストと解説
巻末資料② ― 年表
池上英洋<span>(いけがみ・ひでひろ)</span>

池上英洋(いけがみ・ひでひろ)

美術史家・東京造形大学教授。1967年広島生まれ。東京藝術大学卒業、同大学大学院修士課程修了。専門はイタリアを中心とする西洋美術史・文化史。著書に『西洋美術史入門』『西洋美術史入門〈実践編〉』(ちくまプリマー新書)、『官能美術史』『残酷美術史』、共著で『美少年美術史』『美少女美術史』(ちくま学芸文庫)、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 生涯と芸術のすべて』(筑摩書房)、『恋する西洋美術史』『イタリア 24の都市の物語』(光文社新書)、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 西洋絵画の巨匠8』(小学館)など多数。日本文藝家協会会員。

池上英洋(いけがみ・ひでひろ)

よみがえる天才2 レオナルド・ダ・ヴィンチ

家族にも教育の機会にも恵まれず、コンプレックスだらけだった500年前の一人の青年が、なぜ名画を遺し、近代文明の夢を描く「天才」と呼ばれるに至ったか。

ちくまプリマ―新書350/定価:1078円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68377-9

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レオナルド・ダ・ヴィンチ よみがえる天才2

伊藤若冲 よみがえる天才1 書影
伊藤若冲 よみがえる天才1 辻惟雄<span>(つじ・のぶお)</span>
私は理解されるまでに 千年のときを待つ──  驚異の超精細画をカラーで満載

第2章より

《雪中錦鶏図》も、お化けがたくさん出てくる絵の一つです。
杉の枝葉に積もった雪が不自然にドロドロと垂れ下がっていますが、画面のそこここで、雪が丸い目、大きな口の生き物のような形になっているのが見えませんか。雪も枝がないところにまでトロ〜ンと伸びていて、どこか生き物めいています。おそらく若冲の目には、私たちとまったく違う世界が見えていたのではないでしょうか。
人と同じものを見ても、どうしてもふつうとは違う形に見えてしまう。若冲はそんな特殊な視覚をもった画家だったのだと思います。
雪中錦鶏図
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目次

はじめに ──謎と不思議の天才絵師、伊藤若冲

第1章

生い立ち──画家としての出発

若冲が生きた時代の空気感/画家たちの個性が花開いた時代/「芸術」がなかった時代の「芸術家」/奇想の芸術/青物問屋の後継ぎとして誕生/孤独癖と、仏教と/絵画への熱中/明清画からのインスピレーション/長崎派の別のくくり/南蘋画風を若冲の世界へ本歌取り/仏教と花鳥画への熱中/初々しさのなかの若冲らしさ/写生は生気まで写し取ること

第2章

《動植綵絵》制作──画家としての名声確立

若冲花鳥画の真骨頂《動植綵絵》/それはどのように生まれたのか?/仏を荘厳する絵画/五〇歳で自分の墓を建立/なぜ花鳥画だったのか/天与の色彩感覚/色彩効果の最大化のために/どこまでも濃密な画面/生きとし生けるものすべてを慈しんだ/〈貝甲図〉に現れたアニミズム感覚/〈雪中錦鶏図〉の不可思議な雪/「神技」の超細密描写

コラム1

若冲は人物画が苦手?

若冲花鳥画の真骨頂《動植綵絵》/それはどのように生まれたのか?/仏を荘厳する絵画/五〇歳で自分の墓を建立/なぜ花鳥画だったのか/天与の色彩感覚/色彩効果の最大化のために/どこまでも濃密な画面/生きとし生けるものすべてを慈しんだ/〈貝甲図〉に現れたアニミズム感覚/〈雪中錦鶏図〉の不可思議な雪/「神技」の超細密描写

第3章

若冲画の世界──その多様さ、おもしろさ

現実に始まり、現実を超えていく目/写実とデザイン感覚の融合/若冲はトランプを知っていた?/赤いハートの謎/ユーモア感覚と、独特の形態感覚/「墜落」という不思議なモチーフ/表現の冒険と幾何形態/水墨画の冒険──鹿苑寺大書院襖絵

コラム2

《動植綵絵》は隠し絵の宝庫?

若冲の謎に迫る科学者たち/画中に隠される相似形/〈芍薬群蝶図〉のなかの隠し絵/新発見の絵にも隠し絵が

第4章

画業の空白期と、新たな若冲像

二〇年の空白期/モノクロームの版画で新境地を開く/若冲はたんなる絵画オタクではなかった!/中国の高僧に、宗教心をアピール/石仏群で描いた釈迦の一代記/若冲が「発明」したモザイク画/升目画のヒントは西陣織?

コラム3

作品にひそむ科学の視点──フラクタルと進化論

描かれたフラクタル/北斎やダリも知っていた?/表現された突然変異

第5章

激変した生活──最後まで画家であり続けた晩年

大火事で家もアトリエも失った/私と若冲との最初の出会い──西福寺襖絵/金一色に主題だけのシンプルな画面/アメリカ人コレクター、プライスさん/米一斗の画家/工房制作への切り替え/奇想天外なモザイク屏風/若冲の「四の字嫌い」/老いてなお、ほとばしる生命力/大胆奇抜な〈象と鯨図屏風〉/最後まで画家であり続けた

コラム4

精神医学からみる若冲の絵画表現

計画性と細部へのこだわりが同居/モザイク屛風は写経と同じ?/ASが多重視点を生んだ/若冲の性格もASに合致
あとがき/若冲年表/参照文献
辻惟雄<span>(つじ・のぶお)</span>

辻惟雄(つじ・のぶお)

1932年生まれ。美術史研究家。若冲復活の立役者として名高い。千葉市美術館館長、多摩美術大学学長、MIHO MUSEUM館長などを歴任し、現在東京大学名誉教授、多摩美術大学名誉教授。2017年、朝日賞受賞、文化功労者に選出される。2018年瑞宝重光章受章。著書に『奇想の系譜』(美術出版社 1970年、ちくま学芸文庫 2004年)、『若冲』(美術出版社 1974年、講談社学術文庫 2015年)、『奇想の図譜』(平凡社 1989年、ちくま学芸文庫 2005年)、『日本美術の歴史』(東京大学出版会 2005年)、『岩佐又兵衛――浮世絵をつくった男の謎』(文春新書 2008年)、『辻惟雄集』(全6巻、岩波書店 2013-14年)など多数。

辻惟雄(つじ・のぶお)

よみがえる天才1 伊藤若冲

私は理解されるまでに1000年の時を待つ──
江戸の鬼才が遺したこの言葉はどのような謎を秘めているのか?
天才絵師の情熱の裏側に迫る。最新の研究と色鮮やかなカラー図版満載。

ちくまプリマー新書349/定価:1100円(10%税込)/ISBN:978-4-480-68374-8

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伊藤若冲 よみがえる天才1

今後の刊行予定

以下、不定期刊行予定

長谷川眞理子
『ダーウィン』