梅田望夫インタビュー「ネットは書籍出版を変えるか」梅田望夫

――「本屋大賞」も、そのようなものの一つと考えていいのでしょうか。本屋大賞とは、全国の書店人が、インターネットを使って投票するもので、それで選ばれた作品が、ここ2年続けてベストセラーになっています。ある意味、芥川賞、直木賞ぐらいの力、あるいはそれ以上の力を持っている。(本屋大賞http://www.hontai.jp/

 それですよ。そういう感じ。本屋さんの店員さん一人ひとりの力を結びつけるようなことが、インターネットによって、さらに一気にひらかれていると考えればいいだろうと思います。

 結局、ベストセラーが出れば、出版社は(書店も)もうかるわけです。リアルでみんな本を買っているからベストセラーになるわけで、ベストセラーが生まれるプロセスがネットによって変わっているだけで、金儲けの最後のところは全然かわらない。むしろそのプロセスをきちんと研究すれば、もっともっとベストセラーが出るのかもしれないし、もっともっと面白い本が出せるのかもしれない。結局、出版社が経営努力をきちんとする、ということだと思います。

 出版業へのネットの利用というのは、もっと研究されていいと思います。出版社が、この人が著者として書く資格ありと認めている人が書く本が、必ずしも面白くて売れる、というわけではないですよね。

 この本のネット上の書評でも、ときどき、すごいのがあります。鋭くて、深くて、長くて。ブログのなかにも、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のミクシィのなかにも。ブログの書き手は500万人を超えていますし、ミクシィの登録者数は300万人を超えていますから、あわせると、まもなく1000万人ぐらいの人が、文章を書いて出していく、ということになる。それだけの数があると、中にすごく面白いものがあって当然です。

■出版社のホームページと個人のブログ

――私たちのような出版社のつくっているHPと、個人の人気ブログが、ページビューで10倍、100倍というような、圧倒的な差がついてしまっている一番の原因は。

 大組織が開放性ということについて怖がるからだと思います。この本のなかでも、「Web 1.0」と「Web 2.0」は何がちがうのか、という議論をしたのですが、出版社のウェブサイトというのは「1.0」なんですよ。「1.0」のウェブサイトとは何かというと、「作り手が発信します」というだけなんです。作り手がいて、発信をします、そのメディアがインターネットだ、というのが、95年くらいから変わっていないウェブサイトの作り方なのです。「2.0」というのはすごくオープンになっていて、誰でも書き込むことができる。

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