当世大学入試現代文事情

第1回 大学入試現代文が高校国語教科書をリードする

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① 国語教科書の現在

 現場で使用される検定教科書は、当たり前のことですが、学習指導要領に基づいて編集されています。他の教科では、学習指導要領がかなり厳密に規定されていて、必ず入れなければならない特定の事項や項目があります。しかし、国語の場合は、古典と近代以降の文章の割合などを除いて、細かく限定されていないのが特徴です。芥川龍之介・夏目漱石・森鷗外の作品を必ず掲載することなどという規定は特にありません(ただし、昭和30年に告示された「高等学校学習指導要領国語科編」では、古典の作品例が提示されていたこともありました)。

 にもかかわらず、芥川龍之介の『羅生門』は、2009年に発行されたすべての「国語総合」の教科書23種類に掲載されています(関口安義「『羅生門』の誕生」翰林書房2009年5月刊参照)。各社が内容を競い合うというよりも、暗黙の了解のような有様です(察するに、高校の現場の要望ということなのでしょう。「『羅生門』を載せないと飢え死にをするじゃて仕方なく……」という声がどこからか聞こえてくるようです)。中島敦の『山月記』や夏目漱石の『こころ』なども、現在では欠かすことのできない教材になっています。

 では、各教科書の差異は何かということになります。「国語総合」の場合、古典の教材も似たり寄ったりという現状には変わりはありません。詩歌の単元も各社個性を強調するというほどではありません。

 そうすると、残る違いは、現代評論や随想の作品、それに筆者の顔ぶれということになります。

 もちろん、現代評論や随想においても定番教材は存在します。山崎正和の『水の東西』を筆頭に、丸山真男『「である」ことと「する」こと』、岩井克人『広告の形而上学』などを挙げることができます。筑摩書房でも掲載している黒崎政男の『インターネットは何を変えたのか』(『精選国語総合 改訂版 現代文編』)や、西垣通の『共生システム』(『精選現代文 改訂版』)は、他社の教科書では、別の題名で掲載されていますが、中身は同じという例もあります。

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