長山靖生
( ながやま・やすお )長山靖生(ながやま・やすお):1962年生まれ。評論家。鶴見大学歯学部卒業。歯学博士。開業医のかたわら、世相や風俗、サブカルチャーから歴史、思想に至るまで、幅広い著述活動を展開する。著書『日本SF精神史』(河出書房新社、日本SF大賞・星雲賞・日本推理作家協会賞)、『偽史冒険世界』(筑摩書房、大衆文学研究賞)、『帝国化する日本』(ちくま新書)、『日本回帰と文化人』(筑摩選書)、『萩尾望都がいる』(光文社新書)など多数。
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西洋への憧憬・劣等感と立身出世という自主自立のイデオロギーを基盤に文化を培ってきた近代日本は、昭和期に入ると急速に日本回帰へと突き進む。個人の自由を縛り、国民を一つの方向へと駆り立てていくうねりのなかで、日本を代表する文学者や思想家たちもまた、ときに自ら進んでこうした運動の先導者となっていった。和辻哲郎や阿部次郎らによる日本古典美の称揚、多くの若者たちを魅了した保田与重郎らの「日本浪曼派」、北原白秋、三好達治、斎藤茂吉、高村光太郎らによる戦争詩歌、そして三木清の東亜協同体論や京都学派の「世界史の哲学」――。戦後タブー視されることもあったこれらの作品を、当時の国民感情や作家・学者のおかれていた時代状況など、その内的論理に注目しつつ読み解いていく。「日本的なもの」とはそもそも何であり、それらと「世界的」「東亜的」なものとの逆説的な結びつきがなぜ生じえたのか。近代日本の文学・思想の暗部を直視し、人びとを絶望的な戦争へと駆り立てた原動力をえぐり出す画期的な試み。
第1章 西洋憧憬と日本への思慕
第2章 文学者たちの「日本回帰」
第3章 戦意高揚する詩人たち
第4章 日本文化観の模索
第5章 日本精神と変質する科学主義
第6章 大東亜戦争は王道楽土の夢を見るか
終章 それぞれの戦後
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