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筑摩選書

日本政治思想史講義

——『丸山眞男講義録 第四冊』を精読する

日本思想の古層を解明する

古代天皇制の形成から、鎌倉新仏教による変革までの中に日本の思想的伝統を探るという丸山眞男の研究を引き継ぎ、さらに掘り下げた政治思想史家による名講義。

定価

2,310

(10%税込)
ISBN

978-4-480-01841-0

Cコード

0331

整理番号

0324

2026/02/16

判型

四六判

ページ数

368

解説

内容紹介

一九六四年の『丸山眞男講義録』をサブテキストにした法政大学法学部における本講義は、日本神話や古代天皇のあり方に日本の思想的伝統の「原型」を探る丸山の講義をわかりやすく精読。とくに丸山が力点を置いていた鎌倉新仏教の革新性について、その中にヨーロッパの宗教改革に匹敵する世俗化・脱宗教化の動きを見つつ、呪術的な心性も残り続けていくという特徴と、日本独自の政治思想の展開を見る。丸山の直接の教えを受け、その研究を引き継ぎ掘り下げた碩学による名講義。

目次

はじめに

第1講 日本とは何か
「日本」の成り立ちと天皇/邪馬台国論争/日本における古代国家の出現/文化接触により浮かび上がる「日本的なるもの」/仏教の日本化/朝鮮との比較から見えてくること/地理的条件による「余裕」

第2講 日本思想における「古層」
修正・変容により幾重にも重なる層/「なりゆき」と「いきほひ」/日本的古層の普遍性(?)/政治神話としての『古事記』/国家の枠組みを強化するために/「政治的につくられた神話」における人類学的普遍/縄文的古層と弥生的古層/日本的古層のルーツとしての東アジア

第3講 天皇制神話の形成とその諸相
日本神話における三層構造と神勅/日本神話における国の成り立ち/死と再生の儀式としての大嘗祭/他界観における水平軸と垂直軸/「大王」から「天皇」へ/古層の重層性──オナリ神信仰と斎宮制/天皇制はなぜ残り続けたのか/疑似宗教的なものとしての天皇制/天皇主権から国民主権へ

第4講 伝統とは何か
「伝統」の多義性──日本における三つの伝統概念/P伝統・C伝統・I伝統の関係/丸山眞男の「伝統という名の三つの伝統」/画期がないがゆえの「伝統」の曖昧さ/ロマン主義化された「武士道」としての「葉隠」思想/「忠君愛国」はいつから「伝統」となったのか/日本におけるnationalism のねじれ

第5講 日本における古代国家成立と日本神話
日本における「古代国家」が成立するまで/シャーマン的「女王」と「男弟」による支配という伝統/古代国家形成における四つの型──百済・高句麗・新羅・日本/政治的・外交的事情による記紀神話の独特な構造/日本神話における三つの範疇──ウム・ナル・ツクル/イザナギ・イザナミによる国産みと神産み/現世と他界の境としての黄泉比良坂/三貴子の登場─高天原神話の始まり

第6講 日本神話における道徳意識──「心情の純粋性」と「集団的エゴイズム」の結合
善心と邪心──道徳意識の芽生え/無私と集団エゴイズム/「心情倫理」と「責任倫理」/アマテラスとスサノヲのウケヒ/スサノヲの傍若無人な振る舞いが意味するもの/太陽エネルギー・生命の復活としての天石屋戸神話

第7講 記紀神話における出雲神話の位置
政治神話としての記紀神話/出雲神話の人類史的・普遍的側面/国引き神話──山陰地方と新羅の関係/ニライカナイとオボツカグラ──「三姓穴」神話と「檀君」神話/水平軸の海上他界と垂直軸の天上他界──ケルト神話とゲルマン神話/文化英雄(culture hero)について── medicine king としてのオホナムヂ/オホナムヂの試練/続くオホナムヂの根の国での試練/成年式の通過儀礼/オホナムヂは農業王として誕生する/階級分化の発生を意味したスサノヲのヲロチ退治──英雄時代/トリックスター──季節祭・聖婚と王の誕生

第8講 天皇制の正統性
大国主命による国造りの完成と天若日子の死/建御雷之男神の派遣/「うしはく」と「しらす」/国譲りまでの経緯/番能邇邇芸命による天孫降臨/真床覆衾に象徴される「新しい命」/日向三代から神武天皇へ

第9講 国体とは何か
「国体」概念の発生と福澤諭吉の国体論/「一身独立して一国独立す」──国体における政統の重要性/支配における三つの類型と二つのカリスマ(マックス・ウェーバー)/「伝統的支配」から「合法的支配」へ/「忠君愛国」と愛国心の違い/「古代王制のイデオロギー的形成」における五つの類型/「呪術的祭祀者」としての天皇という「伝統」/神の代わりの存在としての天皇(アラヒトガミとアキツカミ)/ほとんどの人民は天皇の存在さえ知らなかった(幕末)

第10講 カリスマ的支配の諸相
「軍事的指導者としてのカリスマ」/日本に「英雄時代」はあったのか──ヤマトタケルの武勇伝/「祭祀的支配」の優位性/日神アマテラスに由来するカリスマ/日本神話の特異性──神代から人の代への接続/血統カリスマ(「万世一系」の天皇)/「禅譲放伐」が起こらない日本の天皇制

第11講 血縁共同体の擬制
血のつながりがあるというフィクション/神話の中に位置づけられた祖神/天皇支配における親子的情愛/古代天皇制にみられる合議制/血縁共同体が持つ危うさと合議の「伝統」/仏教はなぜ政治に影響を与えたのか

第12講 日本政治思想における仏教思想の萌芽
皇位継承におけるさまざまなケース/放伐思想の政治改革への影響と「神々への誓い」/「十七条憲法」における仏教思想の影響/普遍的真理の優越性/「和」とは何か/自然的な人間関係と公的組織との区別/晩年の聖徳太子が達した境地

第13講 鎮護国家のための仏教
外来宗教に対する抵抗/仏教受容における三つの段階/死者への儀礼と呪術的効果/「鎮護国家」と仏教の「習合」/仏教の中核をなす「否定の論理」(家永三郎)

第14講 平安仏教がもたらしたもの
大衆仏教への転換点としての天台宗/教権と俗権の対立から癒着へ/仏教信仰の内面化/「無常」の観念と日本人の美意識/「因果応報」思想と「宿世」/「他界観」の習合

第15講 末法思想と慈円の歴史哲学
浄土信仰の広まり/貴族層におけるペシミズムと罪業意識/世紀末意識としての末法思想/末法意識に伴う人々の主体性の目覚め/『愚管抄』における七つの時代区分/歴史における極限状況とその必要性

第16講 プレリュードとしての「隠遁」の思想
古代と中世の狭間で/歴史における必然性と自由の関係/「法爾自然」と実践的自由/慈円の歴史哲学の限界とその歴史的意味/隠遁の思想──〝脱政治化〟した知識人たち/遁世的生活における二つの型──親鸞と一遍の〝原型〟/西行・鴨長明に見る隠遁の思想/「罪深き自己」の自覚と救済

第17講 親鸞の思想の革新性
地獄こそが自分のすみかである/親鸞の師・法然の理論──「聖道門」と「浄土門」/個人往生から「万人往生」へ/「悪人正機説」──己の罪深さの自覚/「非僧非俗」という立場と「在家仏教」の誕生/ウェーバーの宗教社会学から見る「在家仏教」/セクト的な共同体(「ゼクテ」)を目指して/人間存在への深くやさしいまなざし

第18講 親鸞の思想と政治
「ブレイク・スルー」としての鎌倉仏教/政治権力との対立を機縁として/「非僧非俗」の「愚禿」──最下層の民衆の生活を見つめて/門徒たちの動きと親鸞の懸念/政治的関係についての明晰な視点/「道場」・「講」から「一向一揆」へ

第19講 孤高の哲学者・道元
人はなぜ「修行」を続けねばならないのか/禅の教え、そして生涯の師・如浄との出会い/修行とはすなわち悟りである/「永平寺」開基と聖俗の厳しい分離/「精神的貴族主義」と平等主義/道元と親鸞の思想における三つの共通点/世俗権力からの完全な自立

第20講 闘う宗教改革者・日蓮
浄土経への闘争宣言/度重なる弾圧・法難を経て/新たな「鎮護国家」思想と「法国冥合」論/日蓮の思想における「宗教改革」的性格/親鸞・道元との共通点/新たな「王法・仏法の相依」関係/理想と現実の拮抗による思想的ダイナミズム

第21講 鎌倉新仏教のその後──屈折と挫折の諸相
呪術的傾向の復活/教義上のシンクレティズム/教団におけるヒエラルヒーの生成/世俗的な権威付けと本来の「信仰の自由」の喪失/王法(俗権)との結びつきの強化/「わび」「さび」「幽玄」と「道」/「悪所」における芸術と世俗化

第22講 あらためて「日本」とは何か
「日本」と「天皇」のおこり/「日本」という意識の高まり/身分秩序・道徳の根拠としての朱子学/日本における朱子学のその後の展開/「漢意」に対する「大和心」/文化変容と層別化の果てに

あとがき
人名・神名索引

著作者プロフィール

飯田泰三

( いいだ・たいぞう )

飯田 泰三(いいだ・たいぞう):1943年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士論文は「大正知識人の成立と政治思想」。法政大学名誉教授、島根県立大学名誉教授。日本政治思想史専攻。著書に『批判精神の航跡』(筑摩書房、1997年)、『戦後精神の光芒』(みすず書房、2006年)、『近代日本思想史大概』(法政大学出版局、2024年)、共編書に『長谷川如是閑集』(岩波書店、1989-90年)、『吉野作造選集』(同、1995-97年)、『丸山眞男集』(同、1995-97年)、『福澤諭吉書簡集』(同、2001-03年)、『藤田省三著作集』(みすず書房、1997-98年)、『丸山眞男講義録』(東京大学出版会、1998-2000年)ほか。

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