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ちくま文庫

エッフェル塔の潜水夫

定価

812

(10%税込)
ISBN

978-4-480-02459-6

Cコード

0197

整理番号

-10-1

1990/08/28

判型

文庫判

ページ数

448

解説

内容紹介

セーヌの川底からお化け潜水夫に水死体が運び去られた。それを目撃したヴァランタン・ムーフラールも水死体となって、所もあろうにエッフェル塔の上に現われ、おまけに幽霊船『飛び行くオランダ人』号船長の契約書までも添えてあった。血の気の多いパリっ子を巻き込んで次々おこる怪事件、登場する怪人物、深まる謎…。エッフェル塔の構造の秘密という奇抜な着想から繰り出される奇想天外な物語。

この本への感想

 何度も読み返しています。

 作者のおしゃれでお茶目な想像力は一度読んだらもうヤミツキです。個性的で愛すべき登場人物たち、思いもよらぬ展開でワクワクする事件の数々。・・・月明りの空地に置いた衣裳箪笥の中に一晩泊まったり、魚の骨をグサリと刺して殺人を企てようとしたり、水とは縁がなさそうに思えるエッフェル塔の階上に潜水服姿の怪人物が現れたり・・・。今まで読んできた他のどんな小説とも違う独特な世界がここにはある。

 学研M文庫から出ている三島由紀夫の『黒蜥蜴』という本に、三島、江戸川乱歩、芥川比呂志などといった豪華な顔触れによる座談会の模様が収録されていて、たった10行ばかりだけれども、このピエール・カミのことが話題に上っている。三島は「カミの『エッフェル塔』、あれは好きですね」と言い、乱歩は「ほかに類がない」と大絶賛(?)している。カミが大好きな私としては諸手を挙げてバンザイしたくなるような輝かしい10行だ。

 とは言うものの、いかんせんピエール・カミは日本では超が付くほどのマイナーな作家。現に私も「カミが大好き」とか言っておきながら所蔵しているのはこの『エッフェル塔の潜水夫』一冊きり。古本屋さんへ行く度に、カミの本は無いかと目を皿にして探すけれども、見付からない。新刊も出る気配が無さそうですし、まったくもってトホホなありさま。「カミの本をもっと読みたい。手に入れたい」こんなことを思っているのは変わり者の私だけなのか・・・。
 カミのような素敵で軽やかな小説を書く作家はもっと世間に注目されてもいいと思うんだけどなァ。カミを読まずにいるなんて絶対みんな損してる。・・・なんて、この楽しい小説を読みながら、ふとそんなことをひとり寂しく思ってしまったのでありました。

義翁

さん
update: 2010/01/12

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