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ちくま学芸文庫

甘美な人生

柄谷、春樹…密度の高い文学批評集

なんという誇大な空しさ 酸鼻と放蕩のなかにのみ現れる文学の可能性を浮きぼりにする

定価

1,320

(10%税込)
ISBN

978-4-480-08572-6

Cコード

0195

整理番号

-15-1

2000/08/09

判型

文庫判

ページ数

240

解説

内容紹介

この世の如何なる酸鼻であろうと許容し、愚劣で、無意味な生存を肯定する。此岸を「彼方」として生きる明確な意志さえあれば、人生は「甘美」な奇跡で満ち溢れる。柄谷行人の「営みとしての批評」を炙り出し、破壊的な衝動と理不尽な力を村上春樹の小説に読みとる。芥川の「憎悪と笑い」、谷崎の「虚無的な決意」、日本の弱き神の脆き夢としての『万葉集』…、さまざまな文学を巡りながら、およそ倫理や社会道徳に迎合することなく、世俗の最も愛情こまやかな絆からさえ逃れ出る、耽美への意志が穿つ現世の真実。平林たい子賞受賞の挑戦的な評論集。

目次

批評私観―石組みの下の哄笑
柄谷行人氏と日本の批評
ソフトボールのような死の固まりをメスで切り開くこと―村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』第一部、第二部
放蕩小説試論
芥川龍之介の「笑い」―憎悪の様式としてのディレッタンティスム
精神の散文―佐藤春夫論
水無瀬の宮から―『蘆刈』を巡って・谷崎潤一郎論
木蓮の白、山吹の黄
斑鳩への急使―万葉集論
ほむら、たわぶれ―和泉式部論
さすらいたまふ神々―生きている折口信夫
日本という問い
生活の露呈―河井寛次郎論
甘美な人生

解説 妖刀伝説(久世光彦)

著作者プロフィール

福田和也

( ふくだ・かずや )

1960-2024年、東京生まれ。文芸評論家。慶應義塾大学大学院修士課程修了。慶應義塾大学名誉教授。1992年『日本の家郷』で第4回三島由紀夫賞を受賞。『甘美な人生』で平林たい子賞を受賞。著書に『奇妙な廃墟――フランスにおける反近代主義の系譜とコラボラトゥール』『日本人の目玉』『地ひらく──石原莞爾と昭和の夢』『山下奉文──昭和の悲劇』『乃木希典』『作家の値うち』『イデオロギーズ』『ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法』『贅沢な読書』『俗ニ生キ俗ニ死スベシ 俗生歳時記』『「内なる近代」の超克』、編著に『江藤淳コレクション』(全4巻)などがある。

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