打越正行
( うちこし・まさゆき )打越正行(うちこし・まさゆき):1979年生まれ。社会学者。首都大学東京人文科学研究科にて博士号(社会学)を取得。現在、和光大学現代人間学部専任講師、特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所研究員。本書の他に、共著として『〈生活?文脈〉理解のすすめ──他者と生きる日常生活に向けて』(北大路書房、2024年)、『地元を生きる──沖縄的共同性の社会学』(ナカニシヤ出版、2020年)、『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版、2016年)などがある。
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路地裏で、基地のネオンの道の片隅で、暗いコンビニの駐車場で、
バイクを止めて、彼らの言葉を拾う。
それは暴力以前にあったお話、掟を生きる前の傷みの話でもある。
掟がなぜ作られたのか、掟の外部はあるのか、
夜の街で拾われた言葉から考えたい。
――上間陽子(社会学者)
バイクのうなり、工事現場の音、キャバクラの笑い、深夜のコンビニ前のささやき。
本書を満たす音をどう聞き取るのが「正しい」のかは、まだ決まっていない。
――千葉雅也(哲学者)
暴走族のパシリから始まった沖縄のフィールドワーク、10年超の記録。
第6回沖縄書店大賞沖縄部門大賞受賞、各紙書評で絶賛の話題書、待望の増補文庫化!
解説 岸政彦
生まれ故郷が嫌いだと吐き捨てるように言った、一人の若者。その出会いを原点に、沖縄の若者たちをめぐる調査は始まった。暴走族のパシリとなり、建設現場で一緒に働き、キャバクラに行く。建設業や性風俗業、ヤミ仕事で働く若者たちの話を聞き、ときに聞いてもらう。彼らとつき合う10年超の調査から、苛酷な社会の姿が見えてくる──。補論を付した、増補文庫版。
「沖縄で出会ったヤンキーの拓哉は、「仕事ないし、沖縄嫌い、人も嫌い」と、吐き捨てるように言った。沖縄の若者が生まれ故郷を嫌いだとはっきり言うのを初めて聞いたので、私は驚いた。彼が嫌いな沖縄とはなんなのか。そもそも、彼はどんな仕事をし、どんな毎日を過ごしているのか。そうしたことを理解したいと私は思った。10年以上にわたる沖縄での調査の原点は、そこにあった。」(「はじめに」より)
はじめに
第一章 暴走族少年らとの出会い
1 広島から沖縄へ
2 拓哉との出会い
3 警官とやり合う
第二章 地元の建設会社
1 裕太たちとの出会い
2 沖組という建設会社
3 沖組での仕事
4 週末の過ごし方
5 沖組を辞めていった若者たち
6 沖組という場所と、しーじゃとうっとぅ
第三章 性風俗店を経営する
1 セクキャバ「ルアン」と真奈
2 「何してでも、自分で稼げよ」 ―― 洋介の生活史
3 風俗業の世界へ
4 「足元を見る」ということ
5 風俗経営をぬける
6 性風俗店の経営と地元つながり
第四章 地元を見切る
1 地元を見切って内地へ ―― 勝也の生活史
2 鳶になる
3 和香との結婚、そして別れ
4 キャバクラ通い
5 地元のしーじゃとうっとぅ
6 キセツとヤミ仕事
7 鳶を辞め、内地へ
第五章 アジトの仲間、そして家族
1 家出からアジトへ ―― 良夫の生活史
2 「自分、親いないんっすよ」 ―― 良哉の生活史
3 夜から昼へ ―― サキとエミの生活史
おわりに
あとがき
補論 パシリとしての生きざまに学ぶ ―― その後の『ヤンキーと地元』
1 パシリとして生きる
2 パシリとしての参与観察
3 フィールドへ
解説 打越正行という希望 岸政彦