上林暁
( かんばやし・あかつき )上林暁(かんばやし・あかつき):1902年、高知県生まれ。東京大学英文科卒業後、改造社に入社。初の短編集『薔薇盗人』を刊行後、作家生活へ入る。妻の病、戦争による生活環境の悪化をくぐりぬけ作品を発表し続ける。主な著作に「聖ヨハネ病院にて」「野」「春の坂」「星を撒いた街」などがある。「白い屋形船」で読売文学賞、「ブロンズの首」で川端康成文学賞を受賞。1980年逝去。
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「私は酒がやめられないのである」
「だらしない話である。恥かしい話である」
しかし不思議と憎めず愛しい、戦後・昭和の人間模様――。
「小生、この度感ずるところあって、酒を止めることにしました。断然止めたいと思います。」「酒を飲むから、仕事が出来ぬ。仕事が出来ぬから、金があんまり入らない。」(「禁酒宣言」)止せばいいのに今日も今日とてふつか酔い、後悔してももう遅い。確かな筆致で人間の生活を描き続けた私小説作家・上林暁の世界から坪内祐三が選りすぐる、ユニークな酒場小説集。
解説 青柳いづみこ
カバー画・題字 風間勇人
カバーデザイン 小川恵子(瀬戸内デザイン)
女の懸命
暮夜
禁酒宣言
いさかい
春寂寥
魔の夜
お竹さんのこと
愉しき昼食
酔態三昧
春浅き宵
女の甲斐性
たばこ
蹣跚
編者解説 坪内祐三
上林暁の小説における「飲み屋」という「宇宙」 スタンレー鈴木
新版解説 青柳いづみこ