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ちくま学芸文庫

赤紙と徴兵

——105歳、最後の兵事係の証言から

その一枚の紙が、すべてを変えた──

赤紙は若者をいかにして戦地へ駆り立てたか。焼却命令に反し秘匿されてきた貴重資料や証言をもとに、草の根の視点からその実態に迫る。解説 吉田裕

定価

1,540

(10%税込)
ISBN

978-4-480-51278-9

Cコード

0121

整理番号

-21-1

2024/12/10

判型

文庫判

ページ数

368

解説

吉田裕

内容紹介

戦時下の不穏な空気のなか、ある日突然、兵事係が来訪し、「赤紙」が手渡される──アジア・太平洋戦争を舞台とするドラマなどでおなじみの場面だ。しかし、その人の召集がどこで決定され、いかにして伝達されたのか。そうした動員のプロセスや制度の末端を担った兵事係の役割については、関連資料がことごとく処分されたこともあり、意外なほど知られていない。本書では、滋賀県大郷村(現・長浜市)で兵事関係の業務を行っていた人物が命令に反して長年秘匿してきた貴重資料や証言に基づき、若者を戦地に送り出しつづけたその苦悩や悔恨に寄り添いつつ、草の根の視点から徴兵システムの実態に迫る。解説 吉田裕

目次

第一章 密かに残した兵事書類  
焼却命令に背いて/徴兵適齢届とは/戦争を知るための証として/徴兵検査への道/「皇国民タルノ自覚」/徹底した選別/所在不明者を捜せ/徴兵忌避と失踪/巨大な鉄の箍/現役兵、入営す

第二章 ある現役兵の戦場体験  
昭和一七年の現役兵に告ぐ/出征の日/中国大陸の戦地で/現地で食糧を奪いながら/住民を捕まえて「苦力」に/命だけあったらいいと

第三章 赤紙を配る、赤紙が来る  
兵隊に取られる/召集と動員/召集の仕組み/真夜中に来る赤紙/動員の克明な記録/赤紙を配る使者/上海事変での召集/「召集令状受領証」に残された文字/ある少尉の自刃/捕虜になった身を自ら責めて/美化された軍人の自決/一枚の赤紙が運命を左右した

第四章 出征した兄弟たちの戦記
来るべきものが来た/「事変忘備録」の言葉/大曠野の行軍/「南京大虐殺はありました」/戦争そして帰還/弟たちの出征/フィリピン戦線へ/上陸作戦中に戦死す/生と死の狭間/バターン半島の死闘/マラリアに倒れて

第五章 誰をどのように召集したのか  
「赤紙が来たんかねー」/出征する兄を見送って/兄が戦地から帰ってきた日/「村内巡視心得書」/赤紙が届いた家に目を光らせる/秘密だった召集の仕組み/在郷軍人の個人情報を収集/「在郷軍人所在不明者」の捜索/「在郷軍人身上申告票」/在郷軍人の職業・特有技能を把握/兵士の「身材」/各兵種に必要な特有技能/動員のための膨大な準備/戦時召集猶予者/陸軍動員計画令と召集猶予/国家総動員体制

第六章 兵事係と銃後
国防献金/銃後の護り/非常時の協力一致/出動部隊の歓送/地域ぐるみの行事/武運長久祈願祭/「満蒙ハ我ガ国防ノ生命線」/国民の戦争支持の熱意/戦地と銃後を結ぶ慰問袋/軍事援護事業/銃後奉公会と挙国一致/派遣軍人の家庭状況調査/防諜というスパイ対策/「スパイは汽車に井戸端に」/戦没者の村葬と戦死の現実/慰霊祭と靖国神社合祀/草の根の戦争支持

第七章 海軍志願兵
「海軍は君等を待っている」/志願兵募集に力を注ぐ/志願者数の割当/いかに志願兵を増やすか/割当員数を確保せよ/つくられた海軍志願兵/海軍と志願兵への憧れ/志願兵合格の日/辞世の歌を書いて/軍艦「長良」乗組員に/太平洋上の戦闘/「お母さーん、お母さーん」という声が/「巡洋艦長良交戦記録」/偽りの「大本営発表」/生き延びたことへの引け目/戦死した同級生たち

第八章 死者たちとともに
戦死の告知/「また仁平さんが来はった!」/兄弟それぞれの道/次々と赤紙が/「国民兵役編入者職業健康程度調査」/兵力の膨張/戦死の知らせ/赤紙配達の青年も戦場へ/戦地からの手紙/故郷と家族への思い/兄の戦死を信じられない/村の戦没者名簿
あとがきに代えて――白骨街道と赤紙/文庫版あとがき/解説(吉田裕)/主要参考資料

著作者プロフィール

吉田敏浩

( よしだ・としひろ )

吉田 敏浩(よしだ・としひろ):1957年、大分県生まれ。ジャーナリスト。ビルマ(ミャンマー)北部のカチン人など少数民族の自治権闘争と生活と文化を長期取材した記録『森の回廊』で、第27回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『赤紙と徴兵』(彩流社)で第2回いける本大賞を、『「日米合同委員会」の研究』(創元社)で第60回JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。『横田空域』(角川新書)、『追跡! 謎の日米合同委員会』『昭和史からの警鐘』(ともに毎日新聞出版)など著書多数。

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