はじめに
トランプ圧勝の第一報を受けて/「底」に堕ちていくアメリカ/本書のアプローチ
第1章 世界がアメリカに引導を渡す
画期としての二〇二三年秋/E・H・カー『危機の二十年』は描く/アメリカ包囲網は何を意味するか/覇権の終焉を説く従来の議論との比較/バイデンはネタニヤフに何を語ったか/ウクライナ戦争をめぐる主要国のスタンス/指導者が迷走する時/アメリカの衰退と変容をどう見るか/軍事大国としてのアメリカ/覇権国の帰趨を決める二つの主題/派兵をめぐる賛否両論/ドル覇権も永遠ではない/中国とインドの行方/「国連無用論」が高まる中で
第2章 脇役の暴走が、世界の構図を書き換える
あるウクライナ人の思い出/ウクライナ開戦をめぐる二つの視点/プーチンの狙いは何か/「ハマスvsイスラエル」を生み出した国際関係/権力者の動機を探る/皇帝プーチンを生み出す政治力学/ネタニヤフ政権は何を演出してきたか/ネタニヤフのナラティブを解読する/プーチンは「西」の物語にこだわる/独裁者は「敵」を理解していたか/独裁者は「時代の変化」を理解していたか/指導者のリーダーシップ、そして民主主義/「大覇権国家ロシアの復活」という夢/イスラエルとアメリカの今後を占う/ネタニヤフのリーダーシップ、その背景とは何か
第3章 アメリカが失ったものの大きさを知るとき
世界を主導する意思をアメリカが失う/アメリカの変貌と衰退をどう見るか/「ひとり覇権」を維持する/金融覇権の追求で社会の分断は拡大/二つの戦争がアメリカを変えた/寛大さを失う社会/自由と平等と民主主義との緊張関係/トランプ再選と社会の分裂/土俵際に立たされている現在
第4章 中国の夢──単なる強大国か、真の覇権国家か
悲観論が強まる現在/ハイテク化で「悲観論」を克服する/軍事力の現段階/アメリカは中国を誤解したのか/ウクライナ戦争と中国/中国は世界を動かせたか/習近平の民主主義観/習近平は過去の指導者に何を学んでいるか/ソ連崩壊から得た教訓/ナショナリズムと「戦狼外交」に至る道/習近平が暴走する可能性
第5章 グローバル・サウスは従来の世界秩序に挑戦する
急速な台頭の背景とは/グローバル・サウスの定義/歴史的背景を探る/「民主主義の呪縛」から解放されて/多様性とエネルギー/中国とシンガポールを見習って/躍動するインド/グローバル・サウスをGとHで読み解く/インド民主主義を解明する/インドと中国の関係性
第6章 我々は民主主義を捨てられるのか
日本の選択肢とは/アメリカに逆らえない国から脱皮する/日米関係の未来を洞察する/「『自由と民主主義』という宇宙船」/地政学と歴史の交差点で/「自由で開かれたインド太平洋」/海洋国家としての歴史をふまえて/アメリカは日本の民主主義をどう見たか/日米同盟も民主主義も再考するとき/かつてない世界で日本の立ち位置を見つける
終章 ヨーロッパが「新たな世界」に向けて持つ意味
「厳しい時期」を迎えつつあるヨーロッパ/ロシアのエネルギー資源をめぐるドイツ・アメリカの駆け引き/「戦争を知りすぎた大陸」──戦後ドイツが歩んだ道/アメリカの「ひとり覇権」を牽制するドイツ・フランス/「沈黙」のヨーロッパに未来はあるのか/「アメリカを失った」ヨーロッパの解放感と高揚感/薄れつつあるドイツへの警戒感/EUの「弱さ」は「勁さ」である/「危機」こそが我々自身を勁くする/「大実験」のリーダーとしての強い自負/トランプ再選の伏線としての「心ざわつくアメリカ」/社会の分断とともに失われていく「アメリカらしさ」/それでもなお「共通善」を模索する/「大実験」の成果としての「狭くなった世界」
あとがき