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ちくま新書

炎上で世論はつくられる

——民主主義を揺るがすメカニズム

なぜ「あの人」に熱狂してしまうのか?

炎上・誹謗中傷・フェイク情報――少数の過激な声が政治的分断を加速する。急速に進むネットと政治の融合は、民主主義をどう変えたのか? 第一人者が問い直す!

定価

990

(10%税込)
ISBN

978-4-480-07723-3

Cコード

0231

整理番号

1894

2026/01/06

判型

新書判

ページ数

208

解説

内容紹介

炎上・フェイク・陰謀論──
「ネットの問題」がリアルな政治を脅かし始めた
いま最も必要な知識を、第一人者が伝授する
なぜ「あの人」に
熱狂してしまうのか?

* 与党を叩けばフォロワーが増えるのはなぜか?
*「 政策の中身」<「言葉の強さ」という本末転倒
*「 炎上」には熱狂する少数しかいない
* 日本は「ディープフェイク」に騙されやすい
*「 表現の自由」と「ネット規制」のジレンマ
* 怒りや憎悪は、他の感情よりも広まりやすい
* 政治や社会への不信が拡散され「陰謀論」が生まれる
* インターネットの情報化時代は200年続く
ネット社会を生き延びるための知識が満載!

刹那的な感情を煽る「ネット炎上」、真偽不明の「フェイク情報/陰謀論」の拡散は以前から問題視されてきたが、今や政治の世界を覆い、選挙結果を左右するまでになった。米大統領選から参院選まで、注目を集めることに最適化した極端な主張を持つ候補者が支持を得た。既存の政治を破壊するネットの論理とメカニズムとは何か。今後ますますスタンダードになるであろうSNSの暴力と、私たちはいかに対峙すべきか。近年、急激に進む政治とネットの融合を、若き第一人者が問い直す。

目次

はじめに──SNSが選挙を動かす時代 

第1章 SNSが選挙を変えた年──2024年の衝撃
1 2024年──SNSと選挙の転換点
「石丸現象」という名の地殻変動/ナラティブが選挙を動かした兵庫県知事選/SNSと社会が乖離した2020年都知事選で/利用するが信頼はしていない
2 2025年参院選──加速したSNSの影響
ネットが生み出す熱量/SNSが争点を決めるのか?/既存メディアはネットに負けたの
か?/自民党を叩けばフォロワーが増える?/外国の影が忍び込むとき
3 SNS×選挙が人々にもたらしたもの
SNSは候補者をどう変えたか/情報が専門家から一般市民のものに/「偶然の出会い」が投票を後押しする
4 「注目されたもの勝ち」の経済原理は民主主義に何をもたらすか?
政策よりも言葉の強さが求められる時代/「言えば叩かれる」社会/瞬間的な人気が勝ち負けを決める/SNS選挙時代に問われる有権者の行動

第2章 炎上のメカニズム──「言葉の刃」としてのSNS
1 「言葉の刃」が人を萎縮させる
言葉が人を傷つけるとき/誹謗中傷が民主主義を破壊する/知らぬ間に刺さる言葉、気づかぬ痛み
2 炎上する民主主義
怒りの連鎖が議論を消すとき/炎上は熱狂する〝少数?から始まる/極端な声が多く見えるのはなぜか?/怒りはネットで拡散しやすい
3 炎上が広がるメカニズムとは?
炎上は加速し、拡散し、そして持続する/メディアとSNSがつくる炎上の連鎖/注目が暴力を生むアテンション・エコノミー
4 誰が炎上に参加しているのか?
世帯年収が高いほど炎上に関わる/誰が炎上を呼び寄せるのか?/その「正義」は本当に必要なのか?/過剰な萎縮という罠

第3章 フェイク──民主主義を揺るがす誤情報
1 フェイク情報が選挙結果を左右する
真偽不明情報が蝕む選挙空間/「フェイク情報元年」には何が起こったのか?/フェイク情報はいつの時代も存在した/日本でも広がるフェイク情報の現実/日本は国際的に見てもフェイクに弱い/陰謀論が政治を揺さぶる
2 実証研究が示す「人はこうして騙される」
フェイク情報に多くの人が騙される/自信がある人ほど騙されるという逆説/陰謀論は誰にでも忍び寄る/フェイク情報が持つ「広まりやすさ」の仕掛け/フェイク情報が民主主義を揺るがすとき
3 生成AIによる「with フェイク2・0時代」の到来
生成AIの光と影/ディープフェイクはすでに社会を歪めている/あなたも見抜けない偽物があふれる社会/誰もがディープフェイクを作れる時代に/誰も「真実」を信じない/AIが虚構の世論を作り出す/「お金」と「政治」のためのフェイク情報

第4章 規制で解決できるのか?──情報流通の社会的枠組みを問い直す
1 法的規制の光と影
法律でフェイクや誹謗中傷に立ち向かう/規制強化のジレンマ/「スリッパリー・スロープ」の危うさ/選挙期間中のマネタイズを規制する/ディープフェイクへの対処
2 民主主義を守るための情報社会設計とは何か?
ファクトチェックは情報環境を変えられるか/ファクトチェックで人々を誤情報から守れるのか?/プラットフォーム事業者に求められる責任/メディア情報リテラシー教育を社会に根付かせるために/技術による対抗の必要性/「怒り」を利用してきた既存メディア/「深さ」でも「わかりやすさ」でも勝てない/揺らぐ既存メディアの優位性/出遅れた日本のフェイク対策

第5章 人類総メディア時代をどう生きるか?──未来への提言
1 人類総メディア時代の生き方
「誰もが発信者」の光と影/フェイク情報の拡散に加担しないためにできること/①拡散前にひと呼吸/②感情に流されない/③「自分だけは騙されない」と過信しない/①情報源を確認する/②「語り手」が専門家かどうかを見極める/③複数の情報を突き合わせる/④画像や動画の真偽を疑う/家族が陰謀論にはまったら/誹謗中傷の加害者にも被害者にもならないために/①「加害者にならない」ために必要な視点/②「被害者になったとき」の最優先課題
2 歴史から「今」を見る
軍事が最も重視された18世紀まで/「いかに富を築くか」を競った産業社会/情報社会の始まり
3 「表現の自由」を軸とした社会的進化
情報社会の発展期に差し掛かった現在/豊かな情報社会への進化

あとがきにかえて──情報社会の未来を生きる私たちへ
参考文献

著作者プロフィール

山口真一

( やまぐち・しんいち )

山口 真一(やまぐち・しんいち):国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。1986年東京生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。専門は計量経済学、社会情報学、情報経済論。NHKや日本経済新聞をはじめとして、メディアにも多数出演・掲載。KDDI Foundation Award 貢献賞をはじめ受賞多数。主な著作に『スマホを持たせる前に親子で読む本』(時事通信社)、『ソーシャルメディア解体全書』(勁草書房)、『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社新書)、『なぜ、それは儲かるのか』(草思社)、『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版)などがある。また、内閣府「AI戦略会議」「人工知能戦略専門調査会」をはじめ、総務省、厚生労働省、文部科学省、公正取引委員会などの様々な政府有識者会議委員を務める。

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