山村修
( やまむら・おさむ )1950年生れ。慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業。青山学院大学図書館司書の傍ら、〈狐〉のペンネームで1981年2月から2003年7月まで1188本の書評を日刊ゲンダイに発表。主な著書に『狐の書評』(本の雑誌社)、『野蛮な図書目録』『狐の読書快然』(洋泉社)、『水曜日は狐の書評』『もっと、狐の書評』『増補 遅読のすすめ』(ちくま文庫)、『禁煙の愉しみ』(洋泉社/朝日文庫)、『気晴らしの発見』(大和書房)などがある。2006年逝去。
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著者のいう「入門書」とは、原典を理解するための補助をめざして書かれた本のことではない。著者はそれを「手引書」と呼んで、区別する。ある分野やことがらを対象に、一般の読者向けに、平明な文章で書かれているというのは無論のことだが、「入門書」はその書物自体が一個の作品となっていなければならない。それは思いがけない発見にみち、読書の歓びを与えてくれるだろう。各分野の厳選された入門書を紹介する画期的な読書案内。
第1章 言葉の居ずまい(国語辞典に「黄金」を掘りあてる―武藤康史『国語辞典の名語釈』
敬語は日本語の肝どころ―菊地康人『敬語』
奈良の都に交わされる声を探る―橋本進吉『古代国語の音韻に就いて』
人生への問いと文章の書き方―里見弴『文章の話』
切れば血とユーモアの噴き出る文章術―堺利彦『文章速達法』)
第2章 古典文芸の道しるべ(社会人に語りかける古典入門―藤井貞和『古典の読み方』
古歌を読む分析的知性の強力さ―萩原朔太郎選評『恋愛名歌集』
現代詩をめぐる「楽しい遍歴」―三好達治『詩を読む人のために』
読むことのうれしさにみちた近代小説案内―窪田空穂『現代文の鑑賞と批評』)
第3章 歴史への着地(歴史への抑えに抑えた怒り―エルンスト・H.ゴンブリッチ『若い読者のための世界史』
歴史的想像力の剣さばき―岡田英弘『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』
ブルジョワの二面性を鮮明に照らす―遅塚忠躬『フランス革命―歴史における劇薬』
「記者魂」の躍如としたジャパノロジー―内藤湖南『日本文化史研究』
歴史の直接的な肌ざわり―中村稔『私の昭和史』)
第4章 思想史の組み立て(世相の向こうに「近代」の醜怪をあばく―金子光晴『絶望の精神史』
考えるべきことを考えよという指針―田川建三『キリスト教思想への招待』
思想史からの伝言―岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』
本の「断片」を読みふかめる―内田義彦『社会認識の歩み』
アラビア語とイスラームとの切っても切れぬ関係―井筒俊彦『イスラーム生誕』)
第5章 美術のインパルス(たっぷりとゆたかな「小著」―武者小路穣『改訂増補日本美術史』
江戸絵画の見かたをかえる異色の水先案内―辻惟雄『奇想の系譜』
画家の身にひそむ思想の筋力―菊畑茂久馬『絵かきが語る近代美術』
「名画」という価値から解放された絵の見かた―若桑みどり『イメージを読む』
二十世紀絵画に「感覚の実現」を読む―前田秀樹『絵画の二十世紀』)
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