市川拓司
( いちかわ・たくじ )市川 拓司(いちかわ・たくじ):1962(昭和37)年東京生まれ。2002(平成14)年に『Separation』でデビュー。2003年発表の『いま、会いにゆきます』が映画化・テレビドラマ化され、大ベストセラーとなる。著作に『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『こんなにも優しい、世界の終わりかた』など。16年6月に『ぼくが発達障害だからできたこと』を刊行、以後は発達障害(ASD/ADHD)当事者として、様々なメディアで発信を続けている。
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世界中に『いま、会いにゆきます』を始め、自分の作品が広まっていく、その伝播力の源はどこにある? 植物群で埋め尽くされた理想の自宅に優雅に引きこもり、眩暈と幻覚に揺蕩いつつ、屋内を黙々と走り続ける…。アジア各国からハリウッドまで、世界と直接繋がる作家が綴る、静かな非日常的日常。
カバーフォト提供 市川拓司
カバーデザイン 泉沢光雄
世界中に自分の小説が広まっていく、その伝播力の源はどこにある?
ぼくには「苦しみは幸運のクーポン券」という標語があるので、つらいときこそ、いまがそのとき! とばかりに祈る。
ほんとにこの映画の原作者は自分なのか? 日々のつましい引き籠もり生活とのあまりの距離感に目眩を覚える。自分があの物語を描かなければ、これらすべてはなかったはずなのに、そのことがどうしても信じられない。
濁りがないと言うより濁りが怖い。でも、愛するひとの隣にいれば安心。憩い、安らぎ、癒
やされる。緑の家は、その中心に愛するひとがいればこそ。そうでなければ、ただの入
れ物でしかない。(本文より)
まえがき
1 発達障害と診断されて
自閉スペクトラム症 /恥ずかしくない /謙遜することが出来ない /妬みもない
2 「ぼくの職業は愛妻家です」
職業「愛妻家」 /十五で出会い /引き寄せられる /ADHD的ハイテンション /地獄に仏 /彼女はぼくの好意に気づいていた /ディケンズ的数奇な人生 /サイン帳インシデント /結びのペン /25億番目の男 /ペアリングモード発動 /膨らし粉体質 /ごっこ遊び /ケシザル的さくらんぼ少年たちの実際
3 緑の中で優雅にひきこもる
ぼくの理想の風景を作り上げた /つくり、育てる人間 /疑似的な帰郷 /あるがままを愛したい /忙しない逍遥学派 /ランニング専用スリッパが欲しい /無限の猿定理 /ゲダッ感覚
4 眩暈と幻覚の日々
甘味な狂気 /寝入りばなの幻覚 /寝起きの幻覚 /脳内世界はゴージャス /夢はバロメーター /長い夜 /所与の条件 /興奮がデフォルト
5 ぼくが世界と繋がるまで
「バーバーいちかわ」 /道標 /韓国版「いま、会いにゆきます」 /出来ないものは出来ない /世界に優しさを流行らせてぇ! /ハリウッドからのオファーふたたび /優しさのインフレーション的膨張 /ビッグボム /Red Circle Authors /向こうから会いにきてくれる外国 /「私小説」 /撮影現場
6 自分の肉体にまつわる仮説
心身一如 /外胚葉 /ケシザルは芸能界向き? / ちょくちょくチビってる /理想は全裸 /百年の恋もさめる /害虫だったりキツネだったり /グルテンフリー /不安定感ばつぐんの男 /ナッツ王子
世界一ゴージャスなひきこもり――あとがきにかえて
絶滅危惧種を保護育成 /記憶玉 /ちょっとSMぽい /レアな症例 /愛とは生きて欲しいと強く願うこと
解説 品川裕香