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ちくま文庫

方丈記私記

中世の酷薄な世相を覚めた眼で見続けた鴨長明。その人間像を自己の戦争体験に照らして語りつつ現代日本文化の深層をつく。 【解説: 巻末対談 五木寛之 】

定価

814

(10%税込)
ISBN

978-4-480-02263-9

Cコード

0195

整理番号

-1-2

1988/09/27

判型

文庫判

ページ数

272

解説

内容紹介

1945年3月、東京大空襲のただなかにあって、著者は「方丈記」を痛切に再発見した。無常感という舌に甘い言葉とともに想起されがちな鴨長明像はくずれ去り、言語に絶する大乱世を、酷薄なまでにリアリスティックに見すえて生きぬいた一人の男が見えてくる。著者自身の戦中体験を長明のそれに重ね、「方丈記」の世界をあざやかに浮彫りにするとともに、今日なお私たちをその深部で把えて放さぬ伝統主義的日本文化を鋭く批判する名著。毎日出版文化賞受賞。

目次

1 その中の人、現し心あらむや
2 世の乱るゝ瑞相とか
3 羽なければ、空をも飛ぶべからず
4 古京はすでに荒れて、新都はいまだ成らず
5 風のけしきにつひにまけぬる
6 あはれ無益の事かな
7 世にしたがへば、身くるし
8 世中にある人と栖と
9 夫、三界は只心ひとつなり
10 阿弥陀仏、両三遍申してやみぬ

著作者プロフィール

堀田善衞

( ほった・よしえ )

1918年、富山県高岡市に生まれる。慶応大学文学部フランス文学科 を卒業。1952年、「広場の孤独」その他の作品により芥川賞を受賞。主な作品に『海鳴りの底から』、『若き日の詩人たちの肖像』、『方丈記私記』、『ゴヤ』、『スペイン断章』、『定家明月記私抄』、『ミシェル 城館の人』などがある。50年に及ぶ文業は、『堀田善衞全集・全16巻』(筑摩書房)に集成されている。1998年没。

寄せられたコメント

堀田善衞の『方丈記私記』のアニメーション化、それも商業映画としてつくること、いや、つくれるか。この途方もなく常識はずれで、成算も何もないと判っている思いつきを、空想の中で転がしている。いくら日本のアニメーション業界というものが、見境も身の程もわきまえずに、何でもかんでもフィルムにしてしまう所でも、『方丈記私記』の映画化は非常識をはるかに跳びこえている。だからこそ、空想で転がす分には良い気分になれるのだが、時折は真剣に組立てを考えたりするのだ。とたん、自分の教養のなさ、宗教を避けて来たための浅さ、映像の元になる材料のストックの不足につき当り、なにより今までの文法では不可能だと思いしらされる。しかし、諦めたわけではなくて、釣糸はたらしつづけている。中世の絵巻の復刻本を眺めている内に、何かが釣針にかかったような気がして、ひと晩興奮したりする。途は遠い。でも、この楽しみを手離す気にはなれない。 (堀田善衞全集・内容見本 一九九三年三月発行より)
──

宮﨑駿

さん

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