加藤尚武
( かとう・ひさたけ )1936年、神奈川県生まれ。東京大学助教授、同教授、桜美林大学教授を経て、現在は東京大学名誉教授。カントの研究で知られる。2002年、紫綬褒章受章。著書に『鏡の中の日本語』(筑摩書房)、『坂部恵集 全5巻』(岩波書店)、『ロールズ 哲学史講義』(みすず書房)、『カント』(講談社)など。
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九・一一以後、世界は戦争に向かって地滑りを起こしているのかもしれない。こうした状況にあって、ともすると人は、戦争が生み出す悲惨な現実に慣れてしまい、正気を失ってしまう。まやかしの議論に乗せられないためには、戦争に関する最低限の議論を知っておかなくてはならない。本書は、そうした重要論点を整理し、戦争抑止への道を探る戦争倫理学の試みだ。同時多発テロに端を発する米国の軍事行動、ロールズの原爆投下批判、憲法九条問題などが取り上げられており、いま、戦争について冷静に考え、実りある議論をするための、重要な手がかりを与えてくれる。
戦争に関する正気とは何か
戦争の二種類のルール―戦争目的規制(jus ad bellum)と戦闘経過規制(jus in bello)
連続テロに対する報復戦争は正当か―私の第一の反戦メイル
国家という猫には誰も鈴をつけられない―トーマス・モアの処刑とグローティウスの戦争論
アメリカの良心は「ヒロシマ」に「ノー」と言った―ロールズの原爆投下批判
ゲルニカを忘れないで―私の第二の反戦メイル
鉛の兵隊さんはどうして美しい制服を着ているのか―傭兵軍から国民軍への転換
カントの「永久平和論」
人は共和国のために命を捧げる―ヘーゲルの考えた国家と戦争の関係
戦争をした日本は有罪か―「東京裁判史観」と東京裁判の問題点〔ほか〕
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