古藤日子
( ことう・あきこ )古藤 日子(ことう・あきこ):2010年、東京大学大学院薬学系研究科統合薬学専攻博士課程修了。2011年から2013年にかけて、日本学術振興会海外特別研究員(ローザンヌ大学)。2017年より、国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員。アリの社会性研究を行う。
loading...
すみっこはよくない。
孤立したアリは、なぜ早死にするのか? 分子生物学で、その謎を解く!
集団をつくり、他者との関わりをもって生きていこうとする性質である「社会性」……本書では、昆虫が苦手だった筆者がすっかり魅了され、10年以上にわたって見つめてきた、アリの不思議な世界をご紹介します。
はじめに
「にせもの」という感覚/社会性の研究へ/ショウジョウバエからアリへ/アリの分子生物学
第1章 なぜアリを研究するのか?
1 モデル生物
タバコと癌の関わりから/モデル生物の意義/遺伝子機能を操作する/ショウジョウバエとアルツハイマー病の研究/遺伝学的スクリーニング
2 アリとヒトを比べる
アリへの注目/家族を守るアリ/治療するアリ/感染予防するアリ/アリはいいモデル
第2章 アリの生活史
1 クロオオアリのコロニー
アリの労働分業/栄養交換で食べ物をシェア/メジャーとマイナー
2 アリの社会のはじまり
女王アリはどこからやってくるのか/結婚飛行/アリコロニーの繁栄/アリの子育て/アリの社会もいろいろ
3 ゲノム編集
アリで遺伝子を操作する/アリの「真社会性」は進化に有利?
第3章 孤立アリは早死にする
1 1944年の論文
自死する細胞/アリの行動を観察する/孤立アリはやっぱり短命
2 ウロウロする孤立アリ
お年寄りほど孤立ストレスに弱い/仕事があると孤立を感じにくい?/グループアリの新しい社会/ウロウロする孤立アリ
3 トランスクリプトーム解析
お腹の調子がわるい孤立アリ/ストレスと消化の関係/遺伝子の情報をまとめてしらべる/アリ研究はどんどん進む
第4章 鍵はすみっこ行動
1 原因は酸化ストレス
アリをすりつぶす/894もの遺伝子が候補に/活性酸素と酸化ストレス/ウロウロする個体ほど活性酸素が作られる
2 舞台は脂肪体
孤立アリの活性酸素はどこにたまるか/トロフォサイトとエノサイト/齢とともに変わる脂肪の量/脂肪の役割/行動の変化が先か、生理機能の変化が先か/女王アリやオスアリの脂肪量/エ
ノサイトの変化が大きい/加齢や疾患の発症
3 昆虫進化のひみつ
昆虫の体表/乾燥への耐性/昆虫にもあるオキシトシン/孤立と体表炭化水素
4 鍵はすみっこ行動
たいへんな実験/すみっこにいるほど酸化ストレスが強い/すみっこ行動と孤立環境/活性酸素のダメージは大きい/薬を使った実験のむずかしさ/本当に抗酸化作用のおかげ?
5 寿命はなぜ縮むのか
遺伝子発現を操作する/技術のアップデート/すみっこ行動の治療
第5章 アリから学ぶ社会と健康
1 アリの生きる意味
仕組みの理解を遺伝子に、細胞に落とし込む
2 アリからのヒント
アリの弱点
おわりに
注
図版出典
索引