ちくま学芸文庫
悪文の構造
─機能的な文章とは
千早耿一郎
著
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時は15世紀前半、党派対立とイギリス王家の支配にゆれるフランス、パリの町の様子をひとりの男が伝え残した。多くの人の手を経て、現在ヴァチカン法王庁図書館に収まる『パリ一市民の日記』は、中世パリの日常生活をつぶさに今に伝えてくれる。さあ、この日記を片手に中世パリを歩いてみよう。小麦の不足で混ぜものをしたパン、セーヌ川の氾濫、例年以上に冷え込む冬、高騰する薪の値、「むすめ」と呼ばれるジャンヌ・ダルクの噂…、現場を見た克明な記載から大文字の歴史が記しえない庶民の歴史を読み取る。
一冊の本
その後、十日か十二日ほどして
雪と氷、そうして薪
かねがないなら、くるみパンを喰えばよいのよ
いちじくもなつめ椰子の実も喰わぬ
だいたいが、一個二ドニエもしないパンなんて
雨のサンマルタン門外
むかつく麦酒は新酒のぶどう酒
まっとうの飲料
日記の筆者を狩り出す
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