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ちくま新書

「東大卒」の研究

——データからみる学歴エリート

頂点に凝縮する格差社会のリアル

中高一貫男子校出身がこんなに多い! 親の学歴はどう影響する? 職業や年収は? 東大女性は結婚できない? 独自調査から学歴エリートと格差社会の現実に迫る。

定価

1,012

(10%税込)
ISBN

978-4-480-07678-6

Cコード

0237

整理番号

0

2025/04/08

判型

新書判

ページ数

272

解説

内容紹介

頂点に凝縮する格差社会のリアル

学力格差や体験格差が深刻化する日本の教育。そんな中、入試難易度や威信という点においてトップに君臨しつづける東京大学に進学するのはどんな人たちなのか。学歴エリートはどこからきてどこへ行くのか。中高一貫男子校出身者の多さや地方女性の少なさの実態、親の学歴、家庭環境や文化経験、卒業後の職業・年収・役職、結婚や子育て、そして社会意識や価値観まで。東大卒業生を対象に行われた大規模な独自調査のデータから明かされる、学歴エリートの生態と格差社会のリアル。

【独自調査から徹底検証! データから読みとく学歴エリートの実態】
こんなに多い!中高一貫男子校出身者/幼少時の読書や文化経験は?/地方女性という困難/親の学歴はどう影響している?/就職・年収・役職/「東大女性は結婚できない」は本当?/学歴エリートの偏った社会意識……

目次

序章 「東大卒」は日本社会の何を映しているのか(本田由紀)
重なり合う象徴としての東京大学/知的優秀さの象徴としての東大/東大卒業生の社会的地位/東大の研究力は高いのか/東大に凝縮される「教育格差」/東大におけるジェンダーギャップ/闘争・運動・抵抗の宿る場としての東大/日本社会の現状と「学歴エリート」としての東大/東京大学を対象としたこれまでの調査など/東京大学卒業生に対する調査の概要/本書の構成

統計用語の解説

第一章 「地方出身東大女性」という困難――出身地格差とジェンダー格差(久保京子)
東大生の地域・性別の偏り/なぜ「地方女性」に着目するのか/東京大学の地方女性を調査することの困難/分析に用いる方法/親学歴における地方と東京圏の格差/フルタイム率が高い地方女性の母親と無就業率が高い東京圏女性の母親/文化的資源の豊かな東京圏女性とそれを追いかける地方女性/地方女性の親子関係/読書量の多い地方女性、海外経験がダントツに多い東京圏女性/友だちは多くないが交際経験のある地方女性/誰に東大進学を勧められたか/地方女性の特徴/地方女性の困難/女性が少ないことや地方学生が少ないことへの問題意識/まとめと提言

第二章 東大生の学生生活――「大学第一世代」であるとはどういうことか(近藤千洋)
大学進学は教育格差の終わりか?/見過ごされたマイノリティとしての大学第一世代/大学第一世代の東大生は「男性」「地方出身」「共学出身」に多い/「東大に入学した理由」に見る大学第一世代の不利/大学第一世代は「実利志向」が強い?/東大に馴染めたのは誰か/ハラスメントや差別を受けやすいのは誰か/学業にはどう取り組んでいるか/課外活動にはどう取り組んでいるか/誰が・どんな人脈を形成しているか/学生生活の「大きな分断」/“不器用”な大学第一世代は就職活動でも不利?/まとめと提言

第三章 東大卒のキャリア形成――学歴資本は職業的地位にどうつながるか(本田由紀)
「学歴エリート」の職業キャリアとは/就労状態と雇用形態――働き方の分布はどうなっているか/職種――どんな仕事をしているか/役職――どのくらい「偉く」なっているのか/勤務先の規模――大企業に就職しやすいのか/転職経験――内部労働市場にとどまっているのか/収入――高い報酬を得ているのか/仕事の性質――どのように感じながら働いているのか/仕事における自身の性別の有利・不利/学歴資本は有効か/まとめと提言

第四章 東大卒の家族形成――だれと結婚し、どんな家庭をつくるか(中野円佳)
3つの問い/東大卒の女性は結婚できないというのは本当か?/女性の東大卒業生の結婚相手は半数程度が東大卒/東大卒業生の出会い/東大卒業生が結婚相手選びで重視したこと/東大卒業生の子どもの数/仕事と子育てを両立してきた女性の卒業生たち/東大卒業生の子育て、階層は再生産されているか/東大卒業生を親にもつ子どもは受験をしているか/まとめと提言

第五章 東大卒は社会をどう見ているか――自己責任論、再分配支持、社会運動への関心からジェンダーギャップ認識まで(九鬼成美)
なぜ東大卒の社会意識を分析するのか/なぜ格差や不平等に関する社会意識の分析が必要か/東大卒業生を育む学び、学び方、課外活動/東大卒業生はどのような社会意識をもつか/「自己責任意識」はどのように育まれたか/「再分配支持」はどのように育まれたか/「社会運動への関心」はどのように育まれたか/「ジェンダーギャップ認識」はどのように育まれたか/東京大学の学びや生活以外の社会意識への影響/専攻と学び方で育まれる社会意識は異なるか/まとめと提言

おわりにかえて――座談会 「東大卒」を考える

著作者プロフィール

本田由紀

( ほんだ・ゆき )

本田 由紀(ほんだ・ゆき):1964年生まれ。東京大学大学院教育学研究科教授。著書に『「日本」ってどんな国?』(ちくまプリマー新書)、『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)など。

久保京子

( くぼ・きょうこ )

久保京子(くぼ・きょうこ):東京大学多様性包摂共創センタージェンダー・エクイティ推進オフィス特任研究員。主要論文に「自然科学系大学院生の研究時間と満足度に長時間研究文化が及ぼす影響――性差に着目して」(『高等教育研究』第24集)など。

近藤千洋

( こんどう・ちひろ)

近藤千洋(こんどう・ちひろ):1996年香川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士後期課程。JST次世代研究者挑戦的研究プログラム・東京大学「グリーントランスフォーメーション(GX)を先導する高度人材育成(SPRING GX)」プロジェクト生。

中野円佳

( なかの・まどか)

中野 円佳(なかの・まどか):1984年東京都生まれ。東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社入社。大企業の財務や経営、厚生労働政策を取材。育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科入学。同研究科に提出の修士論文を基に、2014年『「育休世代」のジレンマ――女性活用はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)を出版。15年よりフリージャーナリスト、23年東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。現在、東京大学多様性包摂共創センターDEI共創推進戦略室准教授。キッズライン報道でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞、第2回調査報道大賞デジタル部門優秀賞受賞。他の著書に『上司の「いじり」が許せない』(講談社現代新書)、『なぜ共働きも専業もしんどいのか――主婦がいないと回らない構造』(PHP新書)、『教育大国シンガポール――日本は何を学べるか』(光文社新書)など。

九鬼成美

( くき・なるみ)

九鬼成美(くき・なるみ):1998年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士後期課程。主要論文に「キャリア教育とキャリアと仕事への不安の関係に関する計量的分析――ジェンダーの観点から」(『東京大学大学院教育学研究科紀要』第62巻)など。

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