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ちくまプリマー新書

ケアしケアされ、生きていく

ケアは「弱者のための特別な営み」ではない。あなたが今生きているのは赤ん坊の時から膨大な「お世話」=ケアを受けたから。身の回りのそこかしこにケアがある。

定価

946

(10%税込)
ISBN

978-4-480-68463-9

Cコード

0236

整理番号

438

2023/10/04

判型

新書判

ページ数

208

解説

内容紹介

ケアは「弱者のための特別な営み」ではない。あなたが今生きているのは赤ん坊の時から膨大な「お世話」=ケアを受けたから。身の回りのそこかしこにケアがある。

他人に迷惑をかけていい!!
ケアは弱者のための特別な営みではない。社会の抑圧や呪縛から抜けだして、自分のありのままを大切にするような、お互いがケアしケアされるそんな社会を目指そう!
 
<著者からひと言>
この本は、ケアから逃げてきた私が、ケアと出会い直すことによって見えてきた世界を、みなさんにも馴染みがある3つの視点から考えてきた本です。

1つめは20歳の大学生の世界です。私は大学生を20年近く定点観測してきました。その上で、今の学生が「他人に迷惑をかけてはいけない憲法」に縛られて、生きづらさを抱えているように思えます。それは一体どういうことなのか、を考えてみました。

2つめは6歳の子どもの世界です。私の娘は今、6歳なのですが、「迷惑をかけまくって」楽しく生きています。安心して迷惑をかけられる環境で、のびのび生きています。でも、ちゃんとしなさい、と叱り続けると、そのうち親や教師を忖度する大学生になるのではないか、と心配しています。

なぜ、のびのびした子どもが、その十数年後には「他人に迷惑をかけてはいけない」と縮こまる大学生になるのか?

その背景を考えるうえで、3つめの世界、「昭和98年的世界」を生きる48歳の私の世界を考えています。昭和が終わって30年以上経っても、日本社会の基本的なOSは昭和時代のままです。理不尽な労働環境でもがまんする、抑圧的環境に「どうせ」「しゃあない」と諦める。それが、女性の管理職や政治家比率が低く、イノベーションが生まれにくい「失われた30年」の背景にあると私は考えています。そして、この世界は「ケアレス」な世界です。

この閉塞感をこえるためには、日本社会がケア中心の社会に変われるか、が問われています。能力主義や男性中心主義の呪縛の外にある世界です。それは、共に思い合う関係性が重視されるし、そのためには自分自身の「唯一無二性」とも出会い直す必要があります。そんなの無理だよ!と理性の悲観主義に陥らず、ではどうやったらケア中心世界は可能なのか、について、できる一つの可能性を模索したのが、本書です。

中高生にも読んでもらえるよう、わかりやすい文体を目指しました。よかったら、読んでモヤモヤしてくださると、嬉しいです。
竹端寛

目次

第1章 ケア?自分には関係ないよ!(「迷惑をかけるな憲法」
しんどいと言えない
自分自身を取り戻す
面倒な中に豊かさがある)
第2章 ケアって何だろう?(確かに面倒なのだけれど
自分へのケアと他人へのケア
他者へのケアの前に
互いが気にかけあう)
第3章 ケアが奪われている世界(ケアのないわたし
「昭和九八年」的世界
標準化・規格化の「大成功」の陰で
ケアの自己責任化を超えて)
第4章 生産性至上主義の社会からケア中心の社会へ(生産性とケア
責任の共有化で楽になる
共に思い合う関係性
ケア中心の社会へ)

著作者プロフィール

竹端寛

( たけばた・ひろし )

1975年京都市生まれ。兵庫県立大学環境人間学部准教授。専門は福祉社会学、社会福祉学。主著は『「当たり前」をひっくり返す―バザーリア・ニィリエ・フレイレが奏でた「革命」』、『権利擁護が支援を変える―セルフアドボカシーから虐待防止まで』(共に現代書館)、『枠組み外しの旅―「個性化」が変える福祉社会』(青灯社)、『家族は他人、じゃあどうする?―子育ては親の育ち直し』(現代書館)など。

この本への感想

私にも6歳の娘がいます。仕事は精神疾患などがある方々の支援員をしています。タイトルに惹かれて読みはじめました。読んだ感想としては、子どもとのやりとりで面倒くさいことがあることがどれだけ大切なのかということに気付かされたような気がします。娘は自分と違う存在であり、面倒くさい=手間をかけてお互いが対話していくことで、娘の存在を受け入れる最大級のメッセージを送れると思うと同時に、自分自身が面倒くさいと思う理由を深堀りしていったら自己理解が深まり生きやすくなるのではと感じました。また、仕事上で支援員として、苦しみに耳を傾けていますが、その苦しみとは著者の言葉を借りると「人に迷惑かけるな憲法」や周りの人に「忖度」したり、「生産性至上主義」「社会の規格」から外れるなど社会構造の中で一人ひとりがそれぞれの感じてきたものだったのではと思いました。これから、私たちはどんな社会を生きて生きたいか改めて考えさせられると共に、今の社会構造の中で苦しみを感じている人やその周囲の人に、この本の中にある、著者の沢山の気づきに触れてもらえたら良いなと感じました。

A.N

さん
update: 2023/11/08

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