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Yahoo!ニュース|本屋大賞2021ノンフィクション本大賞/沖縄書店大賞沖縄部門大賞(第七回)/〔池田晶子記念〕わたくし、つまりNobody賞(第一四回)

定価

1,760

(10%税込)
ISBN

978-4-480-81558-3

Cコード

0095

整理番号

2020/10/27

判型

四六判

ページ数

256

解説

【ブックデザイン】鈴木成一デザイン室 【装画・挿画】椎木彩子

内容紹介

『裸足で逃げる』の著者・上間陽子による初めてのエッセイ集。
海と子どもをテーマに、沖縄での生活を丹念に描く。

目次

美味しいごはん
ふたりの花泥棒
きれいな水
ひとりで生きる
波の音やら海の音
優しいひと
三月の子ども
私の花
何も響かない
空を駆ける
アリエルの王国
海をあげる
調査記録

著作者プロフィール

上間陽子

( うえま・ようこ )

1972年、沖縄県生まれ。琉球大学教育学研究科教授。生活指導の観点から主に非行少年少女の問題を研究。著作に『海をあげる』(筑摩書房)、『裸足で逃げる』(太田出版)、共著に『地元を生きる』(ナカニシヤ出版)など。

お詫びと訂正

2020年10月29日発売の『海をあげる』第1刷に誤りがありました。

228ページ 9行目
【誤】「いつもは静止されるスピーチ」
【正】「いつもは制止されるスピーチ」

お詫びして、訂正いたします。

スペシャルコンテンツ

 

ねえ、風花。海のなかの王妃や姫君が、あの海にいる魚やカメを、どこか遠くに連れ出してくれたらいいのにね。赤くにごったあの海を、もう一度青の王国にしてくれたらいいのにね。

でもね、風花。大人たちはみんな知っている。護岸に囲まれたあの海で、魚やサンゴはゆっくり死に絶えていくしかないことを。卵を孕んだウミガメが、擁壁に阻まれて砂浜にたどりつけずに海のなかを漂うようになることを。私たちがなんど祈っても、どこからも王妃や姫君が現れてくれなかったことを。だから私たちはひととおり泣いたら、手にしているものはほんのわずかだと思い知らされるあの海に、何度もひとりで立たなくてはならないことを。そこには同じような思いのひとが今日もいて、もしかしたらそれはやっぱり、地上の王国であるのかもしれないことを。

だから、風花。風花もいつか、王国を探して遠くに行くよ。海の向こう、空の彼方、風花の王国がどこかにあるよ。光る海から来た輝くあなた、どこかでだれかが王妃の到着を待っているよ。(「アリエルの王国」より)

 

寄せられたコメント

青い糸を受け取った気持ちです。 糸を手繰ると1945年の沖縄戦の海にも辺野古にも 子供の心の海原にも沢山の海につづいています。
──

小説家

朝吹真理子

さん
心が洗われるようなみずみずしさと、胸を引き裂かれるような苦しさが、同時に迫ってくる。
──

美学者

伊藤亜紗

さん
ひとつひとつの文章は静かで優しいのに、そのなかに書かれているひとつひとつの言葉が何かを叫んでいる。
──

社会学者、小説家

岸政彦

さん
何も言わずに読んでほしい。ここにある言葉を、ただただ、読んでほしい。
──

小説家

柴崎友香

さん
一編目から涙が止まらないが、「泣ける」「感動」などという生やさしい本ではない。自分の中の「言葉にならないもの」を爆破されるような感覚。震え上がった。
──

「ダ・ヴィンチ」編集長

関口靖彦

さん
人間を信頼するとはこういうことなのかと知った。
──

ライター

武田砂鉄

さん

この本への感想

著者の正直であたたかく飾らない人柄がじかに心にしみてくるような本でした。困難を抱えた若い女性たちへの支援には本当に頭がさがります。わからないことはわからないままに、けっして断定的な口調にならないところに共感できます。詩のようになめらかな美しい文章はこの方でなければ書けないものだとも思いました。


お子さんの育て方にもとても感心しました。とうに子育てを終えた身にも教わることがたくさんあり、子育て真っ最中の娘たちに勧めたい本です。娘たちには同時に沖縄のことも知ってもらいたいと思っています。

私も辺野古や高江に何回か足を運んだり、地元の仲間と集会を開いたりしてきましたが、それで十分と思ったことはなく、常に悶々とした気持ちを抱いてきました。この本を読み終えて、さらに大きな荷物を手渡されたような気がしています。この気持ちを忘れないようにして次にやるべきことを考えます。

麻生修子

さん
update: 2020/12/02

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