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単行本

漱石のたくらみ 

——秘められた『明暗』の謎をとく

定価

2,420

(10%税込)
ISBN

978-4-480-82358-8

Cコード

0095

整理番号

2006/10/25

判型

四六判

ページ数

320

解説

内容紹介

平凡な市井の夫婦の「こころ」に生じた一筋の裂け目―克明な描写の陰に巧みに織り込まれた漱石文学の秘密とは。

目次

1 『明暗』の造形―漱石の愛した数字「二十八」(創作の偶然と必然
「失われた“愛”」の道標)
2 導入部(一‐四十)―漱石のたくらみ(秘された鍵の束)(『明暗』の主題―まことの愛、「純白な“こゝろ”」へ
『明暗』のブロック建築―八百五十倍の鏡の底に映ったもの ほか)
3 前半:展開部(四十一‐百十四)―対話による問題解決法(天井凝視と観劇と(四十一‐四十八)
岡本家の人々 ほか)
4 後半:「暗」から「明」へ(百十五‐二百二十八)―純白な“こゝろ”への回帰(絶筆部分まで(百十五‐百八十八)
小林の診断(百十六‐百二十二) ほか)
5 「一切を脱ぎ棄てる」小説としての『明暗』(『明暗』と小説言語の問題
作者の声介入 ほか)

著作者プロフィール

熊倉千之

( くまくら・ちゆき )

一九三六年盛岡生まれ。サンフランシスコ州立大学卒業。カリフォルニア大学(バークレー)にてPh.D.(日本文学)取得。ミシガン大学、サンフランシスコ州立大学などで日本語・日本文学を教える。一九八八年に帰国後、東京家政学院大学、金城学院大学教授を歴任。現在はフリーの研究者。著書に『日本人の表現力と個性──新しい「私」の発見』(中公新書、一九九〇)、『見つめあう日本とアメリカ──異文化の新しい交差を求めて』(共著、南雲堂、一九九五)、『漱石のたくらみ──秘められた?明暗?の謎をとく』(筑摩書房、二〇〇六)『漱石の変身──「門」から「道草」への羽ばたき』(筑摩書房、二〇〇九)など。

この本への感想

「228」を発見したテキストの丹念な読みは、文学研究の基本を提示していて、文学作品を読むということがどういうことなのかを改めて教えられた。一世紀にわたる不毛を、よくぞこれ以上の『明暗』解釈はありえないと導いてくれたと喝采するものだが、《『明暗』がすばらしいのは、…「西欧化」を目指す「近代小説」もその「一切を脱ぎ棄て」なければならない現況の、優れたメタファーになり得ている》という日本文学の根本問題を突く点に、この著者の眼目があるのだろう。 《日本語の「語る声」と文学における「客観」との問題が『明暗』のあとに残されました。日本語による言説の今後の難題です。》 言説の問題は文学の根底に関わる問題だから、実作者、翻訳家、研究者や評論家、といった所謂専門家達の立脚点を根底から突き揺さぶるものであろう。次の『道草』論が予約されているようだが、より強固な論の補強展開を期待する。新しい21世紀の風は、「二十八珊の弾丸」より、大きな衝撃となるであろう。
それにしても、これほどの本を出版しておきながら、宣伝もせず、文学会に旋風を起こす機動力になりえていない出版社は、如何なものであろうか!?

さん
update: 2007/02/15

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