寄稿

2012/10/01

特集 ちくま学芸文庫創刊20周年 図書館での、ちくま学芸文庫
ちくまの文庫や新書の特設展示をして、ブックガイドまで作って下さった図書館があると知りびっくり仰天。企画を担当された「さいたま市立東浦和図書館」の青山遼主事に、ちくま学芸文庫編集部がお話をうかがってまいりました。

――なんでまたウチの本だけにスポットライトをあてたブックガイドを、貴館で作って下さったんですか
青山 東浦和図書館では各職員がテーマを決めて、特集コーナーを作っているんです。一昨年でしたがちょうど筑摩書房が七十周年を迎えるというのでいいタイミングだと思いまして。実は最初は学芸文庫だけでやろうと考えていたんです。「学芸文庫を読みこなそう!」という感じで。難易度別に☆をつけたら利用者の方も読破する達成感があって面白いだろうなと。だけれど☆が五つつくような本はほんとに読みごたえがありますから、あらためて読んでブックガイドを作るとなると大変なことで(笑)。
――このガイドでは、学芸文庫ど真ん中というよりも、『世界の奇妙な博物館』『トイレの文化史』『とりあえず分かる!世界の紛争地図』『日本伝説集』などユニークなものを選んでくださっていますね。
青山 現代音楽が好きなので、『ジョン・ケージ著作選』『高橋悠治対談選』『ブーレーズ作曲家論選』も入れました。中でも、二〇〇九年に出たジョン・ケージは最高です! 実は最初に読んだ学芸文庫がこの本なんですよ。
――そうだったんですか? ずいぶん前から学芸文庫に親しんでこられたのだと思っていました。
青山 もともと本は好きだったんですが、この職場に入ってから先輩のすすめで学芸文庫を手に取るようになったんです。私が好きな現代音楽や現代美術のものが充実しているということで。『デュシャンは語る』もいい本ですね。この職に就けたのはほんとうに運命的でした。もちろん、学芸文庫というシリーズがあるのは知っていたんですよ。学生時代に古本屋でアルバイトをしていまして、やけに厚いし、古本なのに高くて、この本はいったい誰が買ってくれるのかなと(笑)。
――恐縮です(笑)。先日中西進先生の『万葉の秀歌』を学芸文庫で刊行したのですが、この「万葉集を読み解く」というブックガイドも充実してますね。利用者の反応はいかがですか?
青山 ブックガイドもほとんど残りませんし、特集した本も借り出されていますので、手ごたえは感じています。新着リストや、文学賞・文化賞の受賞作などの冊子も作ってるんですよ。
――すごい情報発信量ですね。こんなにたくさんの冊子をお作りだと、読書の量もものすごいのだと思いますが、他に学芸文庫でお勧めのものはありますか?
青山 『フーコー・コレクション』などのコレクションものはいいですよね。フーコーだと『わたしは花火師です』もよかったです。入門書の『ビギナーズフーコー』、あと『現代思想の教科書』もよかったですね。でも途中で挫折してしまう本もあるんですよ。一度読んでわからなくて、そのモヤモヤを消したくてもう一度読んでまただめで、自分にはあわないな、という本もあります。哲学なんかは、もともとわかりやすいものではないですから、「ああ、ちょっとわからなかった」というくらいで正解なのだと思いますが。
――再度チャレンジしてよかったというものはありますか?
青山 『ニーチェ全集』の『ツァラトゥストラ』ですね。私はあまり話題のものは読まないのですが、ニーチェの人気が出てきたので、確認のためにもう一度読んでおこうと。単行本で読んだ学生の時よりは、わかるようになったと思います。わりと新しく出た『ワーグナーとニーチェ』もよかったです。
──本はお仕事のあとに読まれるのですか。
青山 はい。家で音楽をかけながら読むのが好きです。本の中身と音楽がうまく融合すると、楽しみが倍増する感じですね。
──学芸文庫だとどんな音楽があいますか?
青山 ピアノ曲がいいですね。サティ、ラベル、ドビュッシー、あとはキース・ジャレットもよかったです。
――さっそく試してみます。本日はありがとうございました。これからも読みごたえのある本を出し続けてまいります。
青山 楽しみにしております。誰が読まなくても、私が読みますので(笑)。
(さいたま市立東浦和図書館にて)

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