loading...

筑摩選書

モダン都市の写真史 1923-1944

——写真雑誌「フォトタイムス」にみる視覚の革命

日本の写真が最も熱かった20年

関東大震災後の日本には新たな写真表現の時代が来た! その流れを牽引した写真雑誌『フォトタイムス』を通読し、新興写真の展開と終息を追うかつてない写真史。

定価

2,310

(10%税込)
ISBN

978-4-480-01854-0

Cコード

0372

整理番号

0335

2026/08/06

判型

四六判

ページ数

384

解説

内容紹介

関東大震災後に現れた新世界で
写真家たちは何を見て、どのように表現したか――

関東大震災は明治以来の東京の都市空間を一夜で崩壊させた。その後に姿を現した「モダン都市」は日本写真史の新たなページを開く。それは写真を絵画から独立させ、かつてなかった新たな対象の見方をもたらす「視覚の革命」でもあった。フォトグラムやソラリゼーションをはじめとする新たな表現、都市の相貌とそこに生きる人々を撮るリアルフォト、小型カメラによるスナップ写真……。世界の写真の動静を紹介し、活発な議論や実験の場でもあった写真雑誌「フォトタイムス」の興亡と写真表現の変容をたどる、かつてなかった一冊。

目次

第一章 関東大震災とモダン都市の出現
1 一九二三年、近代都市景観が一夜で消えた
2 「肉眼」の驚愕――「眼の位置」も「対象の位置」も選べない
3 震災バラックのスケッチ、考現学の誕生、『新版大東京案内』
4 帝都復興祭――一九三〇年の視覚のフェスティバル
5 モダン都市のスピードと、新しい世界の編成

第二章 「視覚の革命」の始まり──モホリ=ナジ『絵画・写真・映画』と独逸国際移動写真展 
1 福原信三がパリで諦めた絵筆、ロンドンで購入したカメラ
2 モホリ=ナジ『絵画・写真・映画』と『フォトタイムス』の「モダーンフォトセクション」
3 バウハウスで学んだ日本人――仲田定之助・山脇道子・山脇巌
4 芸術写真から新興写真へ――『フォトタイムス』をどう編集するか
5 新興写真の形式と問題系――一九三〇年代初頭の『新興写真研究』
6 独逸国際移動写真展――シュトゥットガルトから東京へ
7 パリでマン・レイを訪ねる――木村専一の欧米視察(1)
8 モホリ=ナジは毎月、本誌を手にしている――木村専一の欧米視察(2)
9 保守的なイギリス、商業美術のアメリカ――木村専一の欧米視察(3)

第三章 新興写真の新形式──フォトグラム・フォトモンタージュ・タイポフォト
1 金丸重嶺『新興写真の作り方』――新興写真の水先案内書
2 モホリ=ナジのフォトグラム、マン・レイのレイヨグラフ
3 ダダイスムからフォトモンタージュへ
4 商業写真におけるフォトモンタージュの流行
5 ジャーナリズムはタイポフォトに向かっている
6 詩と写真のモンタージュ――五城康雄・阿部芳文・廣江ミチ子
7 グラフモンタージュ(1)――堀野正雄の「一人舞台」
8 グラフモンタージュ(2)――大宅壮一・北川冬彦・武田麟太郎の視線

第四章 モダン都市空間とリアルフォトの模索
1 都市美協会編『建築の東京』と大東京建築祭・東京市道路祭
2 モダン東京の建築――日本銀行と丸ビル、東京朝日新聞社と白木屋
3 夜の都市景観――ネオンサイン・建築化照明・投光照明
4 機械美とリアルフォト――ル・コルビュジエから板垣鷹穂へ
5 機械的建造物=「優秀船」・橋梁・移動起重機・瓦斯タンク・機関庫
6 堀野正雄『カメラ・眼×鉄・構成 1930―1931』のリアルフォト
7 肖像写真――性格や表情を捉える板垣鷹穂の実験
8 消費生活の撮影――渡邊義雄の「CAMERA WORK」

第五章 ライカの流行とスナップ写真時代の到来
1 一九三〇年代前半の『光画』と伊奈信男「写真に帰れ」
2 オスカー・バルナックがライカを開発する――『月刊ライカ』(1)
3 劇場でも、雑踏でも、機中でも――『月刊ライカ』(2)
4 大宅壮一はライカを「理想的な万年筆カメラ」と考えていた
5 モダン都市の撮影スポット――交通・建築・盛り場・スポーツ
6 スナップ写真術――靴紐を直すふり、風呂敷でカムフラージュ
7 海辺の表情、夜の表情
8 芦屋カメラクラブからアシヤ写真サロンへ

第六章 ノイエザハリヒカイトと高速度撮影、万国博覧会の写真壁画
1 タイポフォトの系譜――西村皎三『遺書』、恩地孝四郎『飛行官能』
2 ベルリンオリンピック大会とパウル・ヴォルフ、レニ・リーフェンシュタール
3 村野四郎『体操詩集』――高速度写真が変えた言語表現
4 高速度撮影が更新していく「瞬間」の世界
5 写真壁画の登場――中山岩太・山本三郎・高橋錦吉
6 一九三七年のパリ万国博覧会と、原弘が構成した「観光日本」
7 博覧会とプロパガンダ――シカゴ・ニューヨーク・サンフランシスコ

第七章 シュルレアリスムの夢、前衛写真の展開
1 シュルレアリスムの模索――詩画集・写真詩・オブジェ
2 前衛写真とはどのような写真なのか
3 前衛写真協会から写真造型研究会へ
4 浪華写真倶楽部とソシエテ・イルフ
5 ナゴヤ・フォトアバンガルドと下郷羊雄『メセム属』
6 シカゴのニューバウハウスと瀧口修造の交流
7 ソラリゼーション――小石清『撮影・作画の新技法』
8 モード写真――エドワード・スタイケン、セシル・ビートンの遠い背中を追いかけて

第八章 対外宣伝誌──欧米各国との報道写真の競争
1 日中戦争の勃発、国策に沿う写真とは何か
2 報道写真という言葉の誕生、対外宣伝写真の虚実
3 報道写真に何を求めるか
4 ヨーロッパの対外宣伝誌――ドイツ・ソビエト・イタリア
5 名取洋之助が日本工房から『NIPPON』を創刊する
6 満洲の開拓地に入った渡邊勉、『フォトタイムス』の「大陸特輯号」
7 満洲のエミグラント――阿部芳文の報道写真の「主題」
8 ナチスドイツの報道中隊と写真界の新体制
9 七・七禁令、日本報道写真家協会、『フォトタイムス』の終刊

第九章 「大東亜戦争」下の写真の到達点──視界から読者が消えた
1 国策雑誌『報道写真』の創刊、東南アジアに向けられる視線
2 ヨーロッパの第二次世界大戦と、プロパガンダの戦い
3 写真は「大東亜戦争」で「思想戦」を要請された
4 東方社の『FRONT』と日本報道写真協会の結成
5 対外宣伝工作、「東亜共栄圏」、大日本写真報国会
6 写真の「日本的性格」と、資材の全面的統制

関連年表
主要参考文献
あとがき
人名索引

著作者プロフィール

和田博文

( わだ・ひろふみ )

和田 博文(わだ・ひろふみ):1954年、横浜市生まれ。東洋大学名誉教授。東京女子大学副学長・比較文化研究所長・丸山眞男記念比較思想研究センター長を歴任。ロンドン大学SOAS、パリ第七大学、復旦大学大学院の客員研究員や客員教授を務めた。著書に『シベリア鉄道紀行史――アジアとヨーロッパを結ぶ旅』(交通図書賞受賞)『三越 誕生!――帝国のデパートと近代化の夢』『漫画家が見た百年前の西洋――近藤浩一路『異国膝栗毛』の洋行』(以上筑摩選書)、『資生堂という文化装置 1872―1945』(岩波書店)、『飛行の夢 1983―1945』(藤原書店)、『モード誌と戦争――宇野千代が『スタイル』で描いた夢』『日本人美術家のパリ 1878―1942』(以上、平凡社)などの著書がある。編著に『猫の文学館』Ⅰ・Ⅱ、『月の文学館』『星の文学館』『森の文学館』(以上、ちくま文庫)、『パリと日本人 近代文学セレクション』(平凡社ライブラリー)などがある。

シリーズ・関連本

「筑摩選書」でいま人気の本

【幻想・ホラー・怪談……】涼しくなれる本