プロローグ
人間性が斬り結ぶ室町大名の世界/"御恩と奉公"の完成形を追究した人間の幕府?/大人の装いから垣間見える野獣の本性/室町サファリパーク――野生の大名を囲い込め/猛獣の家畜化を試みた園長の末路/足利尊氏・直義兄弟が室町幕府に仕掛けた罠/"室町大名"という造語などについて
第一部 足利直義の呪縛と罠
第1章 足利直義政権としての室町幕府
最大の判断ミス――両立しない"頼朝的将軍"と執権政治/室町幕府成立――積極的な直義が消極的な尊氏を押し切る/尊氏の引退と「天下執権」直義/重なる判断ミス――執事高師直の処遇と戦時の執権政治/真面目な善意で最初から詰んだ室町幕府
第2章 観応の擾乱――憎悪と謙譲が織り成す混沌
足利直義の圧迫と高師直の暴発/観応の擾乱――直義と師直兄弟の戦争開始/直義派の柱石・細川顕氏の四国掌握/打出浜の合戦――直義の勝利と師直一家謀殺/決戦後も謙譲し合う尊氏と直義/完璧な落とし所を破壊する憎悪の連鎖/再度の決裂と義詮の暴発/偽りの赤松・京極討伐と直義の京都出/直義の逃避経路は自派勢力圏/和睦を願う尊氏と決断できない直義/直義の鎌倉掌握
第3章 直義の自殺と負の遺産
乱の終結――最後の和睦と直義の死/直義毒殺説は『太平記』の誤読/武士の暗殺で毒殺は皆無/直義の死は基氏の元服とセット/『太平記』の作り話が証明する直義の服毒死/直義は服毒自殺した/直義の引責自殺/擾乱が残した負債――南朝の復活と直義派残党
第4章 反骨の鎌倉府――直義派の巣窟
幕府の京都御分国と鎌倉府の関東分国/義詮の鎌倉駐在と直義の建武鎌倉府/直義の本拠鎌倉と直義派の鎌倉御所基氏/尊氏の"鎌倉幕府バージョン2"構想と挫折/"入間川府"として始まった関東府/南軍新田義興・上杉憲顕の抵抗/入間川の基氏と鎌倉の畠山国清に亀裂/上杉憲顕の復帰と斯波高経の幕政掌握/出仕依頼状の約一年前から憲顕は基氏に帰順/基氏の憲顕復帰事業が中央に旧直義派の復帰を促す/国清の畿内出陣は基氏・憲顕の謀略/鎌倉府の確立――基氏の鎌倉転居/「鎌倉殿」基氏――直義の構想の勝利/直義を原点とする「鎌倉左兵衛督」一家/直義派としての鎌倉府
第5章 世論で成り立つ室町幕府――尊氏と直義の罠
応永の乱と今川了俊の『難太平記』/了俊の証言――尊氏・直義兄弟の真意/将軍自ら仕込んだ将軍家の足枷/初代将軍が未来の将軍に世論への配慮を強制/世論の支持が必須――強制的に初心に返らせる/大名の反抗は幕府の設計仕様――批判的精神の確保/死せる直義、生ける義詮を走らす/源氏長者と南朝吸収でルールを変える義満
第6章 管領の正体――執事を?み込む直義の亡霊
「管領」と「執事」の相克――観応の擾乱の後始末/執事は事務執行者、管領は支配者/鎌倉・室町幕府機関の「管領」/「関東管領」する鎌倉公方と関東執事/〈探題=管領〉の等式と「武家探題」/細川清氏が「武家管領」する執事に/斯波高経の幕政掌握を促す基氏と憲顕/「七条殿」高経――「三条殿」直義の再来/執事を操る「管領」の登場/管領(政府行政)に純化した細川頼之の「執事」/将軍権力を丸ごと代行する「管領」の確立/斯波さえ執事に任命してしまう「室町殿」権力/斯波が就任する時のみ「管領」が正式名称に
第二部 室町大名の野性と死闘
第7章 守護大名と守護在京――研究者が見落としたもの
"守護大名"という術語/"守護大名"はまだ葬れない/守護在京と東アジア前近代の普遍的主従制/日本の近侍義務原則の伝統/中世幕府の近侍義務原則――無断下国・無断出家は反逆/守護在京は普遍的な近侍義務原則の具現化/武士社会を貫徹する近侍義務原則/在京の負担と政治的メリット
第8章 守護と大名――相互依存のスパイラル
「大名」は"大物"/「大名」を何と発音するか/タイメイと発音する史料/発音はタイメイだけか/タイメイと共存するダイミョウ/『雲井の御法』のダイミョウ/『金言和歌集』のダイミョウ/「大名」は"特定グループ内の最有力層"/明徳の乱に見る「諸大名」と守護の関係/室町「大名」は"守護就任に値する実績ある大物"/大名ゆえに守護となり、守護ゆえに大名らしさを高める
第9章 死闘で切り取る実効支配――守護大名の本質
守護大名の真骨頂――力づくの分国私物化/平時を前提とする鎌倉幕府の守護/戦争のために生まれた室町幕府の守護/軍勢の列島横断が生む同時多発的な戦線/室町幕府で守護になる各パターン/守護の仕事――軍勢催促と合戦で分国を切り従える/守護大名の条件①――守護職の私物化・家産化/守護大名の条件②――自力の戦争で勝ち取る分国支配
第10章 実効支配を世襲する――三管領の世襲分国
細川の四国経略と世襲分国化/細川家内部の主流交替と若狭/細川家の四国掌握/細川家の山陽~畿内近国掌握/京都に隣接する細川の唯一無二の広域分国群/畠山国清の活躍と没落/畠山の世襲分国・越中の獲得/畿内(河内・紀伊)と北陸(越中・能登)に分国群が分離/将軍家が育成する直轄軍的大名の成功例/斯波の世襲分国――土岐分国の尾張を義満から拝領/斯波の本国越前――新田義貞との激闘と勝利/直義・直冬に与して強気の交渉をする斯波高経/斯波高経の管領就任・失脚と分国の完全喪失/斯波分国の越中を畠山分国の越前と交換/守護大名には個別の個性がある
第11章 大名と世襲分国の多様性
九州探題一色範氏と最古の守護大名大友・少弐の確執/一色の世襲分国――若狭・三河・丹後/直義派を代表する反逆児・山名時氏/肥大化する山名家――「六分一殿」/山名の世襲分国の再構成と明徳の乱/赤松家の勃興――仏教界から出た異色の大名/赤松が将軍家一筋で獲得した山陽・山陰の広域分国群/六角と京極――近江守護と佐々木一族/京極の隠岐・出雲・飛騨/今川の駿河と遠江/富樫の加賀/斯波の加賀奪取と富樫の奪回/大内の周防・長門・石見――不法占拠から幕府の守護に/大内義弘の活躍――南北朝講和・準足利一門/応永の乱と大内盛見の反抗
第12章 守護職獲得の方法――自力・恩賞・恣意的配分
恩賞給付権の威力と尊氏の白紙委任状/強気の交渉としての戦争を断罪しない社会/自助努力で得た実効支配の強さ/鎌倉幕府は守護大名を生まない――継続的な地方戦争の欠如/自力獲得から恩賞へ――分国の再分配と「御一家」/政変で没収・再分配される"弱い世襲分国"/守護大名成立パターンの各段階――将軍の恣意的再分配へ
第三部 解答としての宿老大名と満済
第13章 将軍家の斯波家吸収計画――大名統御の試行錯誤
従順な室町大名の貴族制へ/室町殿義教―大名の総意で与えられた君主権/斯波義淳の暴走①――無断下国未遂と管領就任固辞/斯波義淳の暴走②――鎌倉府処遇問題で義教の意向を無視/将軍職に最も近い大名・斯波家と「管領」/"義満の子"斯波義重と"将軍家直臣"甲斐家/将軍候補者としての斯波義淳/旨みがなく負担だけ大きい管領/三管領のババ抜き――ジョーカーと化した管領職
第14章 宿老大名という解答――直義的地位と大名の融合
宿老と衛府督/斯波義将の右衛門督就任と従三位固辞/斯波義重の正式な右兵衛督就任と従三位扱い/「左衛門督」畠山満家と「右衛門督」山名時氏/「宿老」と大名衆議――直義と野生の大名の回収
第15章 満済という解答――唯一無二の調整型補佐役
大名衆議と希有の補佐役・三宝院満済/満済登場の文脈――三宝院賢俊・日野家・二条良基/唯一無二の調整型補佐役・三宝院満済/足利満詮――権力から逃げ切った模範的な将軍連枝/"室町政権の父"満詮――義持のアドバイザーか/満済の原型――ロールモデル満詮と直義の影/満済は直義政権に始まる幕府の正統な完成形
エピローグ 野生の大自然への回帰
属人的な"信頼と人間の幕府"の宿命的崩壊/バグではなく仕様――初期設定通りに壊れる室町幕府