村上靖彦
( むらかみ・やすひこ )村上 靖彦(むらかみ・やすひこ):1970年、東京都生まれ。基礎精神病理学・精神分析学博士(パリ第七大学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授・感染症総合教育研究拠点CiDER兼任教員。専門は現象学的な質的研究。著書に『ケアとは何か』(中公新書)、『子どもたちのつくる町』(世界思想社)、『在宅無限大』(医学書院)、『交わらないリズム』(青土社)などがある。
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「それはあなたの主観ですか?」。こういった言葉を聞いたことがあるひとは多いだろう。なにかを発信する際、それが主観的な意見なのか、客観的な意見なのか、を明確にすることが求められる。よく作文と論文の違いを説明する際にも、作文は主観的なことを書いていいが、論文では客観的なことを書く必要がある、と言われている。そういった教育のせいか、客観的なことが正しくて、主観的なことは正しくない、もしくは、あなたが思っているだけでしょ、と非難されることが多い。では、そういった客観的なものが優勢になっていくなかで、主観的な感覚は捨てられてしまってよいものだろうか? 著者の村上氏はそうは考えない。それは、数値が優位にたって世界においては、1人ひとりが持つはずの経験のリアリティが失われがちであるからだ。統計を過信し、経験が数値に置き換えられてしまうとそこにはディテールが失われてしまうだろう。その経験のリアリティをみつけることが主観的に考えることだといえるだろう。自分の体をもち、それがなにかと出会い、出来事が体験し、それを語ることでリアリティをつかまえる手段となるのだ。
第1章 客観性が真理となった時代
第2章 社会と心の客観化
第3章 数字が支配する世界
第4章 社会の役に立つことを強制される
第5章 経験を言葉にする
第6章 偶然とリズム―経験の時間について
第7章 生き生きとした経験をつかまえる哲学
第8章 競争から脱却したときに見えてくる風景
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